100分de名著
ブルデュー 『ディスタンクシオン』
岸政彦
「私」の根拠を開示する
安直な幻想に逃げず、現実を直視するための社会学。
ピエール・ブルデューPierre bourdieu (1930-2002)
フランスの農村に生まれたブルデューは、同国で最も権威ある高等教育研究機関コレージュ・ド・フランスの社会学教授にまで上り詰め、社会の権力関係と不平等の構造、その背景にある思考と行動パターンを明らかにした。主著『ディスタンクシオン』では、人々の趣味と階層の


不可分性を「ハビトゥス」「界」「文化資本」などの概念を使って分析した。
1955年、アルジェリアに出征したブルデューは、アルジェリア市民がなぜフランスからの独立に立ち上がったのか、その背景を知るためにフィールド調査を始め、社会学への一歩を踏み出した。ブルデューの分析はときに冷酷とも評されるが、


アルジェリア在留時に彼が撮った写真には温かいまなざしがみてとれる。
ブルデュー社会学の原点とも言えるフィールド調査の直筆メモ。


個人の生活をつぶさに観察し、理論的な調査をおこなったブルデューは、幻想に逃げることなく社会を直視し続けた。アルジェリア在留時の資料はカメラ・オーストリアが所蔵し、公開している。