中学校のころ、
土曜日の深夜に、TVでよく映画を放映していた。
当時は、レンタルビデオ屋でしか見れないようなマイナーな映画を
普通にテレビで流していた。

期末試験でいい成績をとって
親に買ってもらった14インチのブラウン管テレビ。
これを部屋で見ながら、夜中に宿題をしていた。
その頃は、まだ週休二日制ではなく、土曜日も学校があったのだ。

中国時代劇風の鬘をかぶったジャッキー・チェンが画面に登場した。
そしてカンフー映画特有の、拳を振るう度に響くブォッ、ブォッっという効果音。

僕は小さいころからジャッキー・チェンが好きだった。
母親が好きだったという記録がある。
いや、そもそも僕が好きだから付き合ってくれてたのか・・・
生まれた初めて見た映画もジャッキー・チェンだった。
スパルタンXだったような気がする。
年齢的に合わなければ、多分勘違いだ。

で、ジャッキー・チェン目的でその映画を見始めたのだが、
その映画のストーリーがハチャメチャだった。
なんか物語展開。登場人物。アクション。全てがマンガ的で、少年心をくすぐった。
印象的なのが、
人の皮をはぐことを生業とする義賊の、ミステリアスな登場シーン。
悪党なのに、イケメンで、かつ爽やかな、学者風の男が登場するシーン。

実際映画では浅いキャラ描写で終わったが、
そういうバックボーンやこれからの奥行きを感じさせるキャラ描写がすごく魅力的だった。

ジャッキーファンはもう何の作品かわかっただろう。
そうです。
『飛渡捲雲山』こと『ジャッキー・チェンの飛龍神拳』である。
当時は途中のシーンから見たため、タイトルが分からず、
またネット環境などもなかったから、
記憶を頼りにレンタルビデオ屋で探すしかなかった。
だが、DVDが存在していないその時代、
レンタルビデオ屋に、そんな古いマイナー映画が置いていることなど珍しいことであった。
ましてや中学生。行動範囲に限界がある。

そこで、僕は中国の時代劇と思われるビデオを借りまくって観た。
結果、この作品には大学生になるまで出会えなかったのだが、
僕の中で、中国の歴史に対する興味がどんどん膨らんでいった。

※『ジャッキー・チェンの飛龍神拳』の紹介、レビューについてはまた後日。

ちょうどそのころ、僕の幼馴染の友人が、
僕が中国モノにハマっているということを聞いて、
『三国志』とかは知っているのか?と教えてくれた。
友人の兄が持っていた、横山光輝先生の『三国志』を借りて読んだ。
確か、なぜか51巻からだったと思う。

なんだこれは?

登場人物がおじさんばかりじゃないか。
カンフーや必殺技はどうした。
そもそも主人公は誰なんだ?

少年や青年が主人公の物語しかしらない当時の僕は、
歴史群像劇ともいえる三国志の世界観に衝撃を受けた。

友人に尋ねると、主人公は3人だと言う。
しかもそれぞれは敵同士。
加えて、僕や読んでる巻では、既に主役は死んでいるというではないか。

主役が死んでも続いている物語とはいったいなんなのだ!?

そういった衝撃が、僕を三国志の虜へと変えていった。



三国志との出会いは人によっていろいろだろう。
光栄の歴史シミュレーションゲーム。
三国無双シリーズ。
蒼天航路。
少年の中には、SDガンダムきっかけで出会ったという人もいるだろう。
中には映画『レッドクリフ』で知ったと言う人もいるかもしれない。

では三国志の魅力は何か?

それは同時に人間の魅力であるとも言える。
三国志には多くの魅力的な人物が登場する。

義の人、劉備。
法家の化物、曹操。
名将の末裔、孫権。
天才軍師、諸葛亮孔明。
美しき悲劇の軍師、周瑜。
孤高なる義侠の髯将軍、関羽雲長。
荒ぶる豪傑、張飛益徳。
高潔なる豪胆、趙雲子龍。

ざっと有名どころを上げただけでもずらっと出てくる。
さらにメジャーな人物は多く、
かつマイナーな人物も掘り下げていくと魅力的な人物が多い。

もちろんこれは三国志という時代に限った訳ではないが、
日本では比較的三国志に関する書籍、資料は手に入りやすいため、
簡単に目にすることができる。

三国志を楽しむのであれば、
一つの書籍、作品だけを読んではいけない。
三国志は「歴史」であり、「物語」である。

一人の人間のエピソードは、表裏の面を持っている。
善と悪にきれいに別つことなどできない。
国や組織が違えば、それそれ目指すもの、尊重するものも変わる。
正義、理想はおのずと一つにはならない。

面白いのは、さらに活字の記録であるエピソードに
現代人の感覚を交えた、記録の背景にある人間ドラマを想像することにある。

『蒼天航路』はその好例だろう。
これまで悪役として表現されてきた曹操に、これまでとは違う新しい見方を与えた。
作中では董卓も新しい評価をされている。

これを契機に、
三国志を学術的に研究している人以外にも、正史三国志の重要性を広げた。
加えて、横光三国志、
またそのバックボーンでもある吉川三国志のイメージを覆す、
いろいろな形の三国志がコミックの世界を中心に生まれ始めた。

三国志を愛好していくと、
知る楽しみ以上に想像(創造)する楽しみが多いことに気付くであろう。


それでは三国志に親しむにはどうしたらよいのか。

まず基本は、定番の原作を読む。
〇平凡社 立間祥介訳 三国志演義

そして日本人好みに作られた作品を読む。
〇講談社 吉川英治訳 三国志

人物をフューチャーした三国志を読んでみる。
〇文春文庫 陳舜臣 秘本三国志

コミックで三国志を読んでみる。
〇講談社 横山光輝作 三国志

正史を読んでみる。
〇ちくま文庫 三国志正史

正史を元に新解釈した曹操版三国志を読んでみる。
〇蒼天航路

海外版三国志コミック(完全オリジナルストーリー)を読んでみる。
〇火鳳燎原

とりあえず以上は僕的おすすめ作品です。
では次回は映像作品について紹介いたします。


                                             こうご期待