日増しに新緑から青味を増した木々の葉が、たくましい広がりをみせている街路樹を、圧巻しているようなシーズンがやってきた。
 身も心も(売り場も)衣替えをしたい、夏を迎える今月の色を、昔の人々は、「憧葛」(あこがれかずら)という風情にたとえた。…枝いっぱいに実をつけた青梅の色や、ツタの葉ような色だろう。
 水面下では、夏商戦(ギフト需要)がスタートしている6月は、誕生花である「くちなし」の甘い香りや、白からピンク、そして青紫色へと移ろうアジサイの、幻想的な美しさにいやされることも多い。
 目前に迫っているサマーギフト商戦を待たずにも、ジューンブライドの「引き出もの」や、「父の日」用キャンペーン向けに、いずれの企業もアイデアと工夫を凝らして火花を散らしていよう。
 また衣服関連では、「ソワレの夕べ」「エスニックなパーティ」…などのニュアンスで、「ドレス」や「フォーマルウェア」をフィッティングアドバイザーが積極的に展開できるだろう。
 
◇ 資格審査の合格情報
 
 今期も各指定校の講座が、4月から開講されたが、規模拡大に伴い運営体制が見直されるという。
 私が担当させていただいた第8回「ファッションフィッター講座」…レディス2級指定講座(株式会社プロネット)は連休明けに終了した。
 ところで、今春に合格した、第7回「レディス2級」の合格者数は、192名で、再チャレンジと再々チャレンジ組も含めて、266名が審査に臨んだ。
 合格率は72.2%だったが、昨年8月に実施された「第6回目」では、合格率が81%だったから、数字だけを見ると芳しいと言える結果ではないようだ。
 他分野のテストと同様に、タイムリーな調整や検討・修正がなされることも必要だろう。
 つまり、3日間の研修を受けて、筆記試験がマークシート式で…このような結果だからである。 通常の「接客・販売」をこなしている方々が受験して、選にもれたとしたら、課題が多すぎる。
 また、試験内容が、現場にもっとも即しているか? もしくは、正解の選択が困難な設問はないだろうか?…といったことへチェックや反芻は繰り返し行われることが望ましい。
 「プロセールス資格取得者」への期待度は高いから、かなり高水準な審査内容であっても、お客さまには歓迎されるであろう。
 
◇ 服を知る
 
 インターネットで検索をかけていたところ、4月24日(火)に開催された第11回「ボディフィッター実践講座…インストラクターコース(日本繊維新聞社主催)」に関する感想が記述されたブログに出くわした。
 受講された方々の顔ぶれは、FA(販売スタッフ)・店長・インストラクター・トレーナー・販促&サービス担当者・MD&バイヤー…他と、インストラクターコースゆえに、多様な分野にわたった。いつものことだが、個人名の方が数人ほどは出席される。
 カラーアナリストや服飾関連学校の講師…などとセミナーの途中で判明する場合もあるが、最後まで職種が分からない(明かさない)ままのケースも多い。
 今回、ブログに登場の方は、どうやら「販売代行業」を営む、洋服を売るエキスパートらしい。
 ご主人やスタッフと会社を立ち上げ、最近になって「接客・販売」の技術向上を目ざした、サポート事業も展開されたようだ。
 ブログによれば、彼女はマルイシティのU店にいた頃、セールスパートナー個人の部で、売り上げが1位(2000年春)を獲得したそうだ。
 また、彼女とパートナーが運営しているマルイシティの「○○店」で、某メンズアパレルの売り上げを、6年間にわたり全国1位で維持させているとのことだから、「スゴ腕」のプロセールス集団といえよう。
 こういった方が受講していただいたことは、励みになると同時に「講師冥利(みょうり)」につきる。
 今後の「抱負や感想」の記述に目を通すと、
 ① 「とても勉強になった」
 ② 「服を知る」というフレーズが、特に印象的だった。
 ③ 「スタイリングフィッターの認定証書」に見合うよう、まだまだ学んでいかなければ…。
 と書かれていて、努力家であることも推しはかれた。
 余談だが、当日に教材の一部として配布された単行本は、彼女が十年ほど前に書店で購入した本(著者は私)の、なんと改訂版だった…とも書かれていた。
 他にも、様々な形でいくつか受講後の感想を頂戴したが、ある男性スタッフからは、セミナー後に、以下のような感想がEメールで届いた。
 彼によれば、「サイズは測るのではなく、見つけ出すもの」という意味を再考し、社内スタッフにも伝えたいという思いがこめられていた。
 彼は現在、著名な婦人服専門店の販売スタッフを統括する立場である。
 かつては、そちらの企業の支店で販売もされていたが、今は「お客さま満足と従業員満足」の向上と実現を目ざすプロジェクトの、キーマンとして店舗を飛び回っている。
 百貨店協会の「プロセールス資格制度」の指定講座や、こういった公開セミナーでも、同じ内容を「座学と実学」でレクチャーした場合、実体験が豊かなメンバーほど、課題をしっかりと整理してから出席されるため、理解力も高く応用能力を充分に発揮してくれる傾向がある。
 つまりプロほど、ひと山を越えたら、次の目標に向かって前進していこうとするケースが多い。
 一方、著名ブランドや高級ゾーンの服を販売しているスタッフで、「服を知らない」人が、予想外に多い傾向が見られるのも現実だ。
 商品の同質化と競争が激化する昨今では、「知名度や感性」に頼りきった商売では、対応できない事態も出てこよう!
 多角的に「服を知る」ことは、消化率の良いバイイングにもつながり、あまたのお客さまの「いかなるご要望」にもキメ細かく応えられるようになれるのである。
 扱い商品に対しての自信がみなぎることは、お客さまからごらんになった場合、信頼感がそれだけ増すことになる。
 また最近の傾向として、数社だが、百貨店から、レディスの2級講座に、男性社員が参加されることが増えつつあるが、好ましいことである。
 「婦人服売り場」には、とうの昔から男性社員が、バランス良く配置され、顧客もついているからだ。
 国内外の婦人服デザイナーにも、男性が活躍していることを踏まえれば、婦人服のフィッティングアドバイザー(2級)資格を、男性社員がもっと取得されて良いであろう。
 既製服の場合、以下の5つのポイントを理解していれば、レディスもメンズも基本的な「フィッティングスキル」は、そう極端に変わるものではない。
 ① レディスの前打ち合わせは、右身頃が上で、メンズは左身頃が上になる。
 ② パンツの裾仕上げは、メンズの場合、未完成な物が多く、レディスは、ジーンズやチノパンツを除いて、ほとんどが完成済みである。
 ③ レディス服は、デザインのバリエーションが豊富であり、メンズ服は、ウェストサイズのピッチが沢山ある。
 ④ 生理的なメカニズムにより、レディスのシルエットは、丸みを帯びているが、メンズはシャープで直線的なパターンが多い。
 ⑤ レディスに多用される素材は、ドレープ性のあるものから、「ハリ・コシ」のあるタイプまでと種類が多いが、メンズは、カジュアルなデザイン服以外は、従来通りの定番素材が多い。
 といったキーポイントが念頭にあれば、男女共にお客さまのご要望に対するカウンセリングで、接客応対のときに戸惑うことはない。
 
◇ 初夏の売り場おこし
 
 売り場スタッフがイベントのプランニングをして、いかに実践に持っていけるかは、企業によって現状では差異がある。
 かといって、消極的になっていては、今の時代は生き残れない。
 例えば、「バラの花」を好きでない方は、めったにおられないだろう。
 すでに先月、バラにゆかりのある百貨店では、赤いカーネーションと同時進行で、プレゼント用の「赤いローズ」を打ち出していた。
 連休中にも多くの百貨店が、創意工夫のされた「仕掛け」を新聞紙上で告知し、集客に努めていた。
 ところが、せっかくのアイデアも、各社が一同にくくられて、掲載されてしまうと、「行ってみたい仕掛け」と、「焦って行くほどのこともない仕掛け」との差がハッキリとして一目瞭然となっていた。
 ますますもって、ユーザーの心をつかむには、沢山の情報の中から、ふるいにかける能力が必要となる。そこには、時代センスの他、「ロマン」と「甘美な誘い」という「遊び心」のさじ加減も、勝負を分けるエッセンスとして問われよう。
 企業の本部にいた頃、「父の日」に、黄色いネクタイを仕掛けたことがあった。その色は目立つし勇気がいるから、当初は営業サイドが二の足を踏み腰が重かった。
 そこで、黄色が放つメッセージ(イギリスでは、大切な人を守る安全カラーと言われている)に、「父の日」のマスコットフラワーである「黄バラ」のうんちくを添え、期間限定で売り出してみた。
 現場スタッフには、由来や意図をきちんと伝え、2体構成のボディを配し(紺色で表情違いのスーツを着せた)それらの左胸ポケットからは、ネクタイで作った「黄色いバラ」をチラリと見せて、VPで訴求することを徹底させた。結果、「売る側」が、意図・狙い・ストーリーを理解した上での思いが、「買う側」にも伝わり予想以上の好成績を得られた。
 その際、レディス客には、「巻きバラ」の作り方を教えて差し上げるサービスも実施し、喜んでいただいた。
 さァ、迎え撃つ「父の日」、ドレスにつける、手づくりの「バラのコサージュ」教室を開催されてみては?
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