1月(睦月)は、旬の色をイメージしてみると「想紅…おもいくれない」という、古来から伝えられてきた風情が浮かんでくる。
 それは、真っ白な雪の中に、ぽっかりと浮かんだ、真っ赤な椿の色みといったところか?…いずれにしても正月といえば、松竹梅という縁起の良い「枝物」に、「紅白の水引き」の組み合わせが、暮らしにも商いにも、パワフルなアクセントツールになろう。
 2007年は亥年で、十二支の巡りの中でも、子で始まる12年のオオトリといわれるほど、良いことも悪いことも一気に吹き出す年だそうだ!
 確か、フィレンツェにあった「イノシシ」のオブジェには、その鼻をなでたり、さすると幸せになるという伝説があった。それを模したかのようなイノシシ像が、なんと東京駅の八重洲地下街のSCにもある。近くにお立ち寄りになった際は、「イノシシ詣」などいかがだろうか?
 さて、今年の商戦も「ベクトルを、いかに定めたら良いのか?」と、いずこの業態も多くの方々が深耕されておられよう。
 「突進型」で進むのか、「マイペース」でいくのかうんぬんと、企業や業態の「規模、風土、理念」によって、年初に様々な「スローガン」が揚げられているが、「サービス」と「商品」が同質化している昨今は、二番煎じの「物づくり」と「コト起こし」では、もはや、効能も威力もないだろう。
 そこで願わくば、「アイデアや閃き」を創造してくれる人材が、「自由の女神」のように羽ばたけるバックヤードを期待したい。
 
◇ 夢を売るには鬼と化す
 
 「フィッティングアドバイザー2級」の資格を、せっかく取得できた社員が、人事移動で他のセクションに配属になってしまったというケースを伝え聞くことがよくある。
 2級講座を受講、もしくは資格審査を切望している予備軍も、予想外にいることに昨年ふれた。
 また、服飾の知識に長けて頭脳はシャープだが、それらが「販売力」につながっていないというスタッフもいつものことだが存在している。「接遇力」はあってもメンタル面で欠けている要素がある。
 後者は、「売れない理由」を商品のせいにしたがることが多い。
 かつては、売場に「コワイ」上司がいて、「ここにある品を売るのも、給料の一部だぞッ」と、部下に檄を飛ばす光景が頻繁に見られた。
 近頃は、そんな上司は疎まれる。友達感覚で接してくれる上司が好かれる傾向がある。…叱られることに慣れていない若手スタッフは、「逆ギレ」してはぶてる場合が多いから、もてる才能や資質を開花させてあげるには、リーダーたちの体力は必要以上に消耗しよう。
 だが、そんなマイナーな「循環」を断ち切らないことには、手持ち在庫が山となる。また、大型店をはじめとしたすべての業態が、同時発信の情報やノウハウを同時にキャッチして策を練るから、気になることを後手に回すと、「仁義ある(?)戦い」に、参戦すらできないことになろう。
 百貨店かSCで、ファッションを扱っていると一見、「華やか」に見えがちだ。が、多くの場合、華やかであこがれる部門ほど、厳しい現実をくぐりぬけて、人々に夢をお届けできていることが多い。
 そこで、お客さま接点を守る全スタッフ(特に衣服を担当の方)に、ごらんいただきたい映画がある。
 昨年末に観た『プラダを着た悪魔』というアメリカ映画である。…2003年の発売と同時に、大ベストセラーとなった「小説のタイトル」そのままの映画(ローレン・ワイズバーガー作)だ。
 タイトルをかみくだくと、つまり「プラダのような高級ブランドを身にまとった、悪魔のような女性編集長」という意味合いになる。
 物語は完璧に仕事をこなす女編集長の下で、主人公であるアシスタントは振り回され、プライベートタイムまで浸食されるほどの悪戦苦闘の日々を過ごすのだが、そこでしごかれたことは、やがて自らの血や肉になり、彼女は、次のステップへと大きく羽ばたけるようになるのである。
 一流のファッション誌を編集する企業に憧れる人は多い。
 同じようにファッションを扱う売り場や、「広報・販促」部門に就きたい若者も後を絶たない!
 だが、国内外を問わず、読者やお客さまに支持されるには、上司やリーダーは、いつの世も心を「鬼」にしなくてはならないときがある!
 
◇ 街・町と大型店
 
 今年は、百貨店にとってさらにやりがいがある年になろう。
 大型店は、98年11月に「都市計画法」が、98年7月には「中心市街地活性化法」が、2000年6月には、「大規模小売店舗立地法」が施行され、出店の面的な規制や、活性化手段としての誘致の考慮、そして再び規制への流れともまれてきた。そういった流れの一環か、各地の商店街への支援は熱を帯びてきている。
 例えば、都内の商店街では、道路の拡張や広場を設置することは困難だが、欧州型の広場「ロンドン・ブレーメン(ドイツ)」などのような、街と広場が隣接した空間を、国内の各地に設置しようという動きが活発化し、国をあげての「まちづくり推進」への支援が盛んになってきている。
 つまり「歩いて、滞る」空間づくりである。…店舗に必要なエレメントでもある!
 昔から京都市には、大きな公園と広い通りの区画整備がされていたが、近年は青森市の「パサージュ広場」が、欧米のような成功例の一つとして視察者が盛んに訪れている。
 駅前の「アウガ」というSCを支柱に広場があり、商店街との相乗効果を生み出している。
 他には、イタリアの「ジェンツァーノ」を見習った、路面に花々をモザイクした通りなどが、神戸市や長野市にできている。
 その昔は、商店街が百貨店を見習ってがんばっていたが、これからは百貨店が、「街と町」以上の「ロマンチック空間」を目ざすことが、最重点課題になりえる現実が迫ってきていまいか?
 
◇ もっと自由な商いを!
 
 「サービス」と「商品」が業態の際を越えて同質化しようとも、百貨店の強みは、「ワンストップショッピング」と、「アフターフォロー」にある。
 プロセールスの「資格取得」は、自らへのエールであり励みになる。だが、これで良しということは永遠にない。
 時代の流れにしなやかに対応できる「引き出し」から、常に新しい「コト」を創造できる「知恵のレシピ」をいくつも取り出し、お客さまにお届けする必要があろう。
 昨今は、やたらと「資格」ばやりの傾向があるが、ドイツの「マイスター制度」は頷けるところもあるものの、このままでは、「商人」は資格を持っていないと、わが国では「肩身が狭くて、伸びのびと商売をできなくなるんではないか?」…なんていう「弱気の声」もないわけではない。
 商いの原点は、いつの世も「メイ・アイ・ヘルプユー」だから、今年は雑音を気にせず「人間力」をモットーに、猪突猛進ならぬ、FAたちを自由に羽ばたかせてみよう!
 すると、顧客の欲しい物が、もっと見えてくるようになろう。
 
◇ アンテナを研ぎ澄ます
 
 業績を上げている店舗や売場のスタッフは「物知り」で、情報の「分析力」があり、「コト起こし」もすばやいことが多い。
 新年早々に、東京ビッグサイトでIFF「インターナショナル・ファッション・フェア」が開催される。(1月17・18・19日、主催・繊研新聞社)。
 約700社が出展し、国内外のバイヤーと商談の火花を散らす。
 昨春、プロデュースさせていただいた(財)西播地域地場産業振興センターから、今回も4つのブースで4つの工房(姫路白なめし・グラフィック皮革・セラピー靴・まとい工房など)が出展する。
 IFFの売り物は、衣服・ファッション小物雑貨類、新人クリエーターのコレクションだが、今年は“ニッポン技あり”コーナーが、3つ目の注目ゾーンとして展開される。
 すでに公的機関(独・中小企業基盤整備機構)が昨年度より、地域ブランドの確立を指導・支援している流れの一環でもある。
 いずれの出展者・企業も、新しい「出会い・巡り会い」を望まれているから、逸品を探されるには、絶好のチャンスと言えよう。
 来場されるのは、バイヤーの方々の他、クリエーター、MD担当、ショップスタッフをはじめとした、新しい「物・コト・創造」に意欲的な人たちが多いから刺激的だ。
 商いの「ヒント・閃き」が欲しい方は是非、会場へ!
 次なる刺激情報は、バックナンバーだが、昨秋の11月7日に開催された「第2回東京商店街グランプリ」の授賞式。
 東京都と中小企業振興公社が主催したそのイベントは、「東京の商業、再生への大いなる挑戦~新たな魅力創出をめざして~」をテーマにした、中小小売商業活性化フォーラムの一環である。
 都内におよそ2800ある商店街から「イベント部門」の事業に41件、「活性化部門」に19件の事業という合計60件のエントリーがあった。
 中野で育った「沖縄のエイサー」を地域資源として生かし、工夫をこらした催しを続けてきた「中野チャンプルーフェスタ」(中野北口昭和新道商店街)が、イベント部門でグランプリを獲得。
 また、活性化部門では、「板橋区交流都市のアンテナショップ運営事業(通称・とりたて村)」(ハッピーロード大山商店街振興組合)が、グランプリを受賞した。
 それら以外の準グランプリと優秀賞のいずれの商店街にも共通していた要素は、「行ってみたい・見てみたい」という気持ちになる事業を展開していることだ。
 今年も百貨店・SC・商店街とのジョイントが、さらに活発になるだろう。
 情報の波に飲まれることなく、波に乗りながら、いずれのセクションも、お客さまの心を“はやら”せる「努力」をしていきたいものだ。
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