市場を取り巻く環境が、様々な動きの展開を見せた2006年も、いよいよラストスパート!
 行政のまち(街・町)づくりに関する支援が、さらに活発化した今年は、百貨店が情熱を注いで臨んだ以上に、SCや他業態の動きが目立ったような一年で、メンタル面でも支援が必要な感が強かった。
 しかし、商戦はあと30日もある。…「ギフト商戦」は前提として、年末の一日いち日を、「いかに打って出るか?」によって、イヴの夜”福の女神“と”エンジェル“が微笑んでくれることを期待できる。
 また、「ウィンターギフト」商戦は、お歳暮やクリスマスギフト以外の引き出しがいっぱいある。
 その気になれば、一年中「ギフト」需要はあるが、12月は、ハイセンスな「コトおこし」によって、平月以上の需要拡大ができる。
 例えば、オランダの子供たちは、12月5日(聖ニコラウスの祝日である12月6日の前夜)と「クリスマスイヴ」の日に、二回もプレゼントをもらえる慣わしがある。
 そういったことを、商いに反映させ、ソフト面でのサービス情報として、お客さまにお届けしながら気持ちを引きつけてみてはどうだろうか?
 
◇ プロセールスの真価
 
 百貨店をはじめ、いずれの業態であっても「お客さま接点」にいるスタッフ(アルバイトも)の全員に対して、プロのセールスマンとしての「自覚」や、お客さまのご要望に応えられる、最低限の「職務能力」が期待されていよう。
 本来なら「フィッティングアドバイザー(2級)」の資格取得者は、そういった諸々の条件(カンと経験から職務をこなしていた)を、すでにクリアしていた人材から、各社ごとの規定で選抜され、体系だった講義を受講できたラッキーなメンバーであろう。
 しかし現場には、「フィッティングアドバイザー」と同水準の技能力、もしくはそれ以上の実力を持っているスタッフ(メーカーからの出向社員も含)などが、資格取得の順番待ちや研修に参加したいと切望しているケースが沢山ある。
 イヤーエンドにあたり、資格取得者をはじめとした全メンバーが、今年を振り返り、「持てる力を充分に発揮できたであろうか?」…と自らを省みてみよう! 納得がいかなくとも、実力を試すには、時間は、まだ残されている…。
 ところで、「フィッティングアドバイザー制度2級」のスタートライン時に提起された、「資格取得者イメージ…(審査項目から見た)」には4つの項目がある。
 以下の
 ●商品知識、お直し技術、サービスマインド、接客は正確であり、物販等のハード面は万能なレベルにある…は、それらの一項目である。
 それらの中でも、とりわけ「サービスマインド」ほど胸が痛むエレメントはないだろう。…売る側も「人間」だからである。
 また、「接客」が正確…とは、シナリオから逸脱しないロールプレイを指しているのだろうか?
 年末は、平月とはお顔ぶれの違う様々な「購買動機・目的」の方々もお越しになるから、フィッティングアドバイザーにとっては、いかなる場合にも対応できるかどうかの「腕だめし」のチャンスだ。
 また、「新規客との出会いが、何人あったか?」という、「自己課題を作ってみるのも良いだろう。
 
◇ 狙い目は超ラッピング
 
 「年末・年始の贈答品」は、承りカウンターをはじめ、いずれの売り場にもある品々のすべてが、「ギフト需要」の対象品になれる…という意識で臨んでみたい!
 かつて、メンズの「特撰品売り場」でFA職だった頃、法人需要だったが、5~6万円のブルゾンやジャケットなども、お歳暮用にお買い上げいただけた(サイズや色のお取り替え券を添えて)。…かつての仲間や後輩に聞くと、昨今でも贈答用に、2万円前後のカジュアルシャツを10枚購入、といったケースは珍しくないという。
 景気に関係なく、お金のあるところにはあるわけであり、また売る側からの「アイデアの提案」によって功を奏すようだ。
 またこのシーズンは、各店の「ギフトアドバイザー」や「ラッピングコーディネーター」の方々、そして物を「包む・くるむ・おおう」分野の達人たちは出番が多くなる。
 近頃は、「簡易包装」などの包装資材が簡素化された、エコラッピングが広まる一方で、送り手と頂く側の心がはやる・おどる、中身が何倍にも楽しくふくらむ、アーティカルなラッピングの人気もエスカレートしている。
 「ラッピング」スキルは、とかく表層上のテクニックに思われがちだが、ファンづくりや、集客には欠かせない重要な「ソフトサービス」の一環ともなれる。
 例えば、各地の地場産業振興センターで、「VMD」「接客」「販売計画と実践策」などの研修を担当させていただいた流れの一環で、「サイレントメッセージ」の一環で、ラッピングの技術指導も手がけた。
 当初は、「観光客を相手に忙しいから、用意された袋や包装で充分…余り役に立たないッ!」といった声が多かった。
 しかし、講習を受けた市の職員や納品業者の方々が作った「アーティカル」な作品を、「ラッピングパーティ」と銘打って、店頭に展開したところ、狙いは当たり、地元のSCや量販店で購入されていたお客さまのお目にとまった結果、アプローチのチャンスが増え商品まで動くようになったケースが続出したのである。
 店頭の作品をごらんになったお客さまとの「会話」が増えて親近感が増し、その後も売り上げ増につながっている。
 サクセス例につながった地場産では、受講者(職員)の中から講師を買って出てくれた人が、今度はお客さま向けに「ラッピング教室」を開催し、集客とリピート客づくりに現在も励んでいる。
 私的には、89年頃から業界の各誌や単行本、横浜ルミネの会報(リニューアル時の創刊号)などに、身近な材料を使ったラッピングやTPOごとの作品を、販促に活かしたり暮らしで楽しむことを掲載してきた。
 また、「デパートニューズ/(㈱ストアーズ社」紙上には、2004年3月17・24日の合併号で、潜在需要を呼び覚ます「ギフトVP」について書かせていただいた。
 以下は、当時に記載させていただいた私流の区分けである。
 ① お待たせしない購入時の「キャラメル・斜め包み」
 ② VMDテーマにふさわしい「ギフトVP」
 ③ ご要望に合わせた「アイデアのラッピング」
 ④ ノベルティ・プレミアム用向け「サンクスラッピング」
 ⑤ お客さま向け「包み方の講習会」
 ⑥ FA(販売スタッフ)自らが楽しむラッピング…など他
 人手不足で忙しいこの時期だからこそ、こういったソフト部分でのサービスを実践することが、お客さまのハートを射止められるだろう。
 
◇ 「街・町」にいるプロを超える人
 
 先月の11月7日(火)に、「東京商店街グランプリ」…(主催東京都産業労働局・東京都中小企業振興公社)が開催され、先進的な取り組みを行っている、都内にある商店街の「グランプリ・準グランプリ・優秀賞」が選出された。…(詳細は新年号に記載予定)
 ノミネートされた、いくつかの商店街にある個店への支援(パワーアップ作戦)に、微力ながら関与させていただいているが、9、10月には、都内に散在する各種の店舗へ、リテールサポートに伺ったその数は、10月だけでも20件になる。
 東京都中小企業振興公社が、各店舗を支援する「パワーアップ作戦」は、それぞれの店舗(商店街振興組合の加盟店)の要望や業績に応じて、多様な角度からのヒアリング後、「MD・VMD・接客・販促・マネジメント」などに関して、それぞれの分野での「登録講師」がアドバイスや実地指導をお手伝いしている。
 支援に伺った先々で、「これぞ、究極のプロ!」と、感嘆させられたり脱帽することも幾度かあった。
 例えば、秋たけなわの頃に伺った、ウルトラマン商店街(メディアを賑わしている)で、路地裏に店舗を構えている靴店の女性経営者は、「シューフィッター」を超えていた!
 公社の男性指導員と私、アシストとの3人で、VMD関連の支援に伺ったときに垣間見た、お客さまへの「接客」と、彼女を「信頼」するお客さまの瞳の輝きは、本物だった。
 「シューフィッター」を超えていたわけは、かつて彼女自身が靴づくりの職人であった(銀座の著名靴店の工場で、自らが靴を作っていた)からで、「足の形態や靴と身体のメカニズム、人に及ぼすミリ単位までの影響」などを熟知していたことだ。
 何人かのお客さまを接客中、一度たりとも、シナリオ通りのような「コンサルティングセールス」は見られなかった。
 「身体と心」に優しい靴を仕入れ、個々のお客さまの「足」を見極め、カウンセリングしながら、ひたすら「履き心地の良い靴」を選ぶことに努められていた。
 また、ハイミセスの衣料を扱う老舗のSブティックでは、2人の女性スタッフ(オーナーとその兄嫁さん)から、会話の度に「お客さまに支えられている、教えていただいて…」という言葉が繰り返し出てきた(この道、何十年というベテラン2人の口から)。…その謙虚な気持ちと姿勢に頭が下がった。
 このように、接する者の多くを感動させられるプロを超える方々は、百貨店にも各地に沢山おられる。が、時には各地の商店街から学ぶことも多いから、足を運んでみるのもよいだろう。きっと、大型店ならではの「明日の商いへのヒントソース」を見つけることができよう!
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