秋たけなわの10月(神無月)は、「神在月」の別称も併せ持つ…。
 その昔、全国の神々が各地をいっせいに留守にし、出雲大社で酒造りや縁結びの相談をしたという言い伝えがある。
 今頃の季節になると、出雲では、“神在祭”の神事が盛んに行われたことが由来らしい。
 行事・記念日・モチベーションが盛り沢山ある10月商戦のキーワードは、「文化・芸術・スポーツ」といったなじみの基本用語に落ち着く。 シーズンレスのおしゃれに慣れた傾向があるものの、一日の“衣替え”を皮きりに、様々なジャンルの「フィッター」たちが、持てる力をあますところなく発揮できるのも“重ね着”にふさわしいこの頃…。
 さて、フィッティングアドバイザーだが、盛夏に実施された第6回2級資格取得審査の結果は、先月の半ばに通達された。第7回目の「フィッティングアドバイザー」の2級指定講座は、ちょうど今が、各指定校での研鑽もピークにさしかかっていよう。
 
◇ 3年目の検証
 
 熱い期待を受けてスタートした、プロセールス資格制度の第一弾である「フィッティングアドバイザー」制度は、今秋で3年目に入った。
 昨秋にスタートした「ギフトアドバイザー」制度も順調に推移しているようだ。
 後者は、いずれの商品を扱うスタッフでも参加しやすいことや、「知識と技術」が日々の暮らしに直結すること、2日間で終了することもあってか、人気は上々とのことだ。
 「フィッティングアドバイザー」制度については、2級資格のバッジ取得後に、自主編成売場の社員を核として飛躍的な活躍をしている好事例がいっぱいある。一方、後方業務に追われたり人事移動などで、現時点では充分に活用しきれていないといった、消化不良気味なケースも結構あるようだ。
 また、各々の指定校が2級バッジ取得のための予備校化に傾いていては、もったいないという声も伝わってくる。
 そういった感触は、私自身もなんとなく抱いていた。
 そこで、お客さまが期待される「フィッティングアドバイザー」と、2級講座を受講する社員やお取り引き先のスタッフが、「ゴールイメージ」としている「フィッティングアドバイザー」のあるべき姿と、「資格取得」の審査時に重視されている項目とが、「かみ合っているのか?」といった検証も必要か?
 また定期的に、「筆記試験」の水準、「実技試験」の評価基準、「接客ロールプレイ」の内容が、刻々と変化する現場に見合っているか? 目標に対して軌道のブレはないか? ふり返るのもよいだろう。
 フィッティングの冠があるからには、相応の「技能力」判定が重視されても良いと思う。
 スタート時に設定された項目と比較してみると、「接客対応」部分への比重が増しているようだ。
 もしかすると、SC協会の「SC接客ロールプレイングコンテスト」を意識しはじめたのだろうか?
 この制度は、主旨が別次元にあるから、重視すべき点は「技術」か「接客」か、それとも五分五分かの整備も期待されよう。
 なぜなら、服飾の「知識・技術」に自信が持てるようになると、好感度を抱かれる「接客応対」は自ずとできるようになるものだからだ。
 シナリオに沿った接客ロールプレイングは、それぞれの企業で完結できる「接客&販売サービス」の基本動作だ。
 また、フィッターの「技能力判定」に関する比重が軽いと、受験者の服装が、評価に微妙な影響を及ぼすこともあろう。そのせいばかりではあるまいが、自社のユニフォーム姿で受験させる企業もあるという。
 プロを判定する場であるから、服装を自由にさせて、本人の「着こなしセンス」も評価基準に加えたらどうだろう?
 スタイリングをアドバイスしてくれるプロに対して、お客さまは感性豊かなコーディネイト力を期待しているはずだからだ!
 今のところ、ファッションセンスの「優劣」に関する評価はないが、そういった視点があっても良いだろう。
 
◇ ジャストサイズ服とグッドサイズ服とのいずれもアドバイス
 
 服は、色・柄・デザインをはじめ、シルエットも、メンズ・レディス共に欧米の数々のコレクションからのインスピレーションによって、毎年少しづつ変化していく。
 それらの流行に刺激されて、多くのアパレルメーカーは、ブランドの味を残しつつ型紙の修正を行い、最先端の自信作を打ち出し、取り引き先の売り場で展開をくり広げる。
 かたや、お客さまのお好みは、トレンド物を着たい方と、そうでない自分流のパターンにこだわる方に分かれる。…「着心地」に関しても、ゆとりの少ないピタピタルックが好きな方、ごく普通のノーマルなゆとりを好む方、ゆったり目が心地よい方などと人それぞれである。
 トレンドがどうあれ、要はバランスの問題だから、いずれの方にも柔軟に対応できるよう、「服と身体とのグッドバランス」に強くなることをおすすめする。
 すると、どんな「体形・体型・体格」のお客さまに対しても、たじろがずに「着心地満足服」をお届けできるようになれる。
 つまり現場では、身体寸法の各部位の値から素直に判断したサイズの「ジャストサイズ服」が、その方にとっての「グッドサイズ服」ではなかったり、プロポーションを美しく際立たせてくれる服ではなかったというケースが頻繁にある。
 例えば、近ごろの主流である細身のシルエット(メンズ・レディス共に)には、すっかり慣れた方も多いだろうが、顔や頭の大きい人に不向きである。
 「サイズの詰め出し」はできるが、各パーツ・パーツに施された「適正量」のゆとり(ゆるみ)を学びたいのは、キメ細かい対応が期待される百貨店のスタッフばかりではない。
 先日も、ピタピタのセクシーカジュアルを扱う企業のFAたちから、お客さまが「9号か11号か?」で悩まれているときに、「どちらのサイズをおすすめしたらいいか?…その判断基準を教えてください」という問い合わせがあった。
 また、適正量のゆとり(ゆるみ)は、素材の特性・物性や、裏地の特徴、施されている「キセ」の分量によっても変化する。
 例えば、ニットやストレッチ素材の混じった製品と、布帛とでは、各々に必要な適正量のゆとり加減は異なる。
 布帛製品そのものも、「梳毛と紡毛」では柔軟性と着心地が違う。
 そういった諸々のエレメントをふまえた上での「ユア・グッドサイズ服」のスタイリングや、「サイズ調整&補正」ができるパーソンがエキスパートなのである。
 いずれにしても、あらかじめ美しく作られた既製服は、“いじくりまわさない”ことが鉄則だ!
 服を知り、「ジャストサイズ服」と「グッドサイズ服」との違いを身体と五感で覚えると、3ヶ所のお直しが2ヶ所で、2ヶ所が1ヶ所のお直しで済むようになる。また、1ヶ所のお直しは、ご納得のいくスタイリング提案をすることで直さずに済んだ実例が沢山ある。
 ちなみに、私が担当する既製服の「フィッター研修」では、過去と現在の服を皮革展示しながら、シルエットの変遷を理解していただき、「適正量のゆとり」が把握できるようカリキュラムに組みこんでいる。
 
◇ 体形・体型・体格と袖丈事情
 
 先日、銀座にある「クリスチャン・ディオール」のウィンドーで、ブルーデニムのワンピースを見た。
 インポート服だから、袖丈が長いのも当然だ。
 しかしそれは、わが国の、トールサイズ服に比べて、極端に袖丈が長い感じがした。目測をしてみると、65㎝はゆうに越えていた。(JISサイズで9号の身体寸法は、手首のくるぶしまでの値が54㎝前後、トールサイズの既製服は袖丈が58㎝前後の仕上がり)
 かつて「ルイ・ヴィトン」が、国内で衣服の展開をする直前に、バッグ類を販売していたFAと他社から採用されたスタッフの方々を対象に、「ボディフィッター研修」を務めさせていただいたことがある。サンプルをチェックすると、かの有名なモデル「ナオミ・キャンベル」が着ても、袖丈は親指の付け根が隠れるほどの長さだった
 また数年前には、「シャネル」のコーディネーター・バイヤー・インストラクター・FA(全店から選ばれた代表スタッフ)の方々に研修をさせていただいた。が、やはり袖丈は日本の成人男子のL判のジャケット(袖丈が約60㎝強)より長かった。
 いずれのブランドも、ウェストをシェイプアップした、欧米人のプロポーションに合わせた美しいシルエットの作品ばかりだった。
 近ごろは、日本人のプロポーションも、欧米人に負けないほど良くなってきたが、依然としてまだSサイズの成人女性のニーズも高い。
 かつて在籍した企業(二社)もインポート服の系列だったが、それら以外にも数々のインポート服との出会いがあったおかげで、インポート物と国内製品との「比較・分析」応用への時間が持てた。
 食生活やライフスタイルの変化につれて、欧米人と肩を並べるプロポーションのお客さまはさらに増えそうだ。
 多種多様なお客さまのハートを射止めるには、自らの感性とセンスをブラッシュアップするのが一番か?
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