早春とは名ばかりの寒中真っ只中の2月は、陽光につられて小鳥たちが愛の「ささやき」を交わし始める頃だ。
 年始のあわただしかった売場から解き放され、ひと息をつきたいところだが、新旧商品の混在する売り場は、すでに春夏商戦の種まきがスタートしている。
 この頃、第5期目となったフィッティングアドバイザー制度の「2級指定講座…昨秋に実施」を受講された方たちが、「資格取得」に向けて認定審査に臨んでいよう。
 先月の下旬に東京会場(1月24日~27日)からスタートし、大阪会場(1月31日~2月6日)、札幌会場(2月7日)、福岡会場(2月10日)の順に実施されていく。
 受験者が、個々の持てる力量をあますところなく発揮して、多くの方が合格されることを願っている。
 回を重ねるごとに、モチベーションの高まりが伝わってくるようだが、百貨店によっては、対象者以外のスタッフでも、「2級指定講座」を受講できる日を心待ちにしているケースがある。
 
 ◇ キーワードとの伴走
 
 情報が溢れかえっている昨今は、いずれのセクションで職務をこなしていても、「時代のキーワード」をキャッチしないと、取り残されそうな気持ちになるほど落ち着かない時代となってきた。
 物を「作る人」、「仕入れる人」「売る人」「魅せる人」…とりわけ「バイヤー」と「お客さま接点のFA」は、バイイングと販売には欠くことのできない、旬のキーワードに強くなって欲しい!
 例えば、最新のキーワードである「ロハス」(Lifestyles Of Health And Sustainabilityの頭文字をつないだ造語)、すなわち、健康と地球環境への意識が高いライフスタイル…「米国の社会学者ポール・レイ氏と心理学者シェリー・アンダーソン氏が提唱」は、とてもおしゃれなネーミングである。が、90年前後に取りざたされたキーワード「エコロジー…自然回帰」への発想と、ずーっとつながっているような感がしないでもない。
 その後、「いやし・なごみ」関連グッズの開発に拍車がかかり、やがて、「スローフードな暮らし」が着目されたと思ったら、「ロハス」に たどりついた。
 時代受けする用語なのでしばらくは続くであろう。と言うより、どんなに文明が発達して便利になっても、人々は自然との共生によって息づいているからだ。
 「心身に効く」自然環境に優しい関連グッズは、今までも愛され続けてきた。こういった「うねり」を事あるごとに受け止めながら、「ライフスタイル」全般のコーディネーターという「意気ごみ」で臨みたいものだ。
 
 ◇ 快適ライフのキューピット
 
 ライフスタイルが多様化し、マスでくくりにくくなった近年は、衣服以外のことにも応えられる必要がある。
 このところ、友人・知人を自宅に招いて行う「ホームパーティ」が、再びブームとなっているせいか、「テーブル・コーディネイト」に関心のあるお客さまが欧米並みに増えてきた。
 グローバルな「情報とおしゃれ」の洗礼を受けてきた世代とそのジュニアは、男女を問わず、テーブルクロスをはじめ、器、キャンドル、装花など…と、プロも顔負けなほどこだわる傾向がある。
 その昔は、お隣やご近所が家々から持ち寄った、手作りの総菜や串団子、和菓子などで、ワイワイ言いながら茶や酒類を楽しんだ。
 近頃は、器一つ取り上げても、「お茶漬け」のときはこれ、「ワイン」はこちらのグラス…というふうにムードメーカーが増えている。
 「正式な晩餐会の、テーブルクロスの色は?」
 「フランスのカントリー風な、ホームパーティを演出したいのですが…?」
 「バレンタインデーに、二人だけでワインパーティをするには…?」
 こういった相談にも、フィッティングアドバイザーはたじろいではいられない!
 百貨店のスタッフなら、どの売場にいてもご提案できてこそプロというもの…。
 いろいろな引き出しと、TPO、服飾知識とを連動させることで、お客さまの「満足度」は高くなる。
 「人・モノ・器・サービス」の同質化を防ぐには、行き着くところは、暮らしの「ゼネラルスタイリスト」か?
 今年も、姿・形をかえた「資格」や「称号」が誕生していこう。…プロ商人としての基本知識を全員が持ち合わせた上で、初めて、それぞれの「資格と称号」が輝くことになると思う。
 
 ◇ バレンタインの集い
 
 かつての8月と同様、端境期だった2月も、14日の「バレンタインデー」と「ネクタイデー」を筆頭に、「ニットの日」「ふとんの日」(2月10日という語呂合わせの記念日)ができた結果、集客が可能になった。
 記念日には、プレゼントがつきもの…。欧米では一年を通して、「ショコラ・シャンぺン・フラワー」がギフトの定番である。
 多少の増減はさておき、2月は年間の総売上げが4000億円強という「チョコレート」から目が離せない!
 日本チョコレート・ココア協会が、「2月14日」をチョコレートの日と制定。
 ローマ聖人バレンチノが殉教した「その日」欧米では恋人同士以外も、「カード」や「花束」「菓子類」を贈り合う。
 14日は、女性が「愛を告白する日」として、チョコレートを贈る慣わしを定着させた粋な「仕掛け人」は、わが国の「メリーチョコレートカムパニー」の原邦生社長(本誌上では、お目にかかっていますが…)である。
 「欧州のような、チョコレート文化が芽生える兆し」を、卓越した商売センスでキャッチされ、昭和33年(1958年)に、「バレンタインデーには、チョコレートを!」のキャンペーンをスタートさせた。
 いずれにしても、恋の味は「甘くてほろ苦い」からチョコのイメージとピッタリだ。…そこに、ネクタイのメーカーが便乗して、「10月1日」(日本でネクタイが初めて製造された日)以外のこの日も「ネクタイデー」とした。
 ネクタイは昨年の「クールビズ」で辛酸をなめたから、「あなたに首ったけ」というニュアンスのそれは、チョコとジョイントさせると、客単価も上がるし「シャレ」にもなろう。
 「本命チョコ」「義理チョコ」の他、ブランデーを片手に「一人チョコ」をかじるのも技アリか?
 メンズ服・レディス服も、その日におめかしをするための「スタイリング提案」を忘れずに!
 また、お得意さまをカップルでご招待しての、ゴージャスな「チョコレートパーティ」もいけそうだ。
 
 ◇ 芽を見つける目
 
 一流企業に就職できた若い人で、甘やかされて育ってきた者が、FA職としての教育を受けた場合、表層上の「エチケットやマナー」、「笑顔」や「接客スキル」「販売テクニック」ばかりを吹き込まれると、自らが「考える力」や、臨機応変に「対応できる力」がついてこないことがある。
 心底からお客さまに「共感できる」姿勢、「相手を思いやった」行動といった心を育むコーチングは、今後の重点課題の一つ…。
 精神面が伴わない状態での接客は、感情をモロに出してしまう、もしくは、表情筋のみで笑うFAや、フットワークやチームワークがぎこちないケースを生み出してしまうことがある。
 応用力に関しては、営業マンが、上司の指示(視察ポイントや項目を詳しく教えずに)で、市場やターゲットをリサーチしに行ったとする。
 すると、提出された報告書は各人各様で、「的を射たポイント」をチェックした後、自らの「感想」と「職務」にどう生かしていくか、もしくはいきたいかまでを記述しているものがあったり、「着眼点」は良いが、自らの意見がないものだったり、主旨とは異なる箇所に着眼しているものの、前向きなヒントだったりと、中身はいろいろだ。
 そのようなケースは、百貨店プロセールス資格制度の「2級指定講座」でもしかりで、同じ日時に同じ内容を受講しても、「理解力と応用力」は、各人の資質によって極端な差がでてくることがある。
 したがって、対象者のいろんな「芽」を見つけ、才能を開花させてあげる「目」もコーチングする側の課題になってこよう。
 ところで今春、銀座にある老舗のメンズ服注文店「銀座テーラー」が、「テーラーの技術者」を養成する学校を設立する。
 注文服は、「採寸・型紙づくり・地直し・裁断・仮縫い時のシルエットの描き方・縫製プレス」…と、すべてがプロのキメ細かい作業だ。
 クチュール店での修業と、婦人服イージーオーダーの補正師(百貨店にて)とに関わってきた私は、今思えばとてもラッキーだった。
 双方の違いを理解した上での、注文服から学んだ「フィッティング技術」は、既製服(メンズ)を販売していたときにも大いに役立ち、お客さまに喜んでいただけた。
 今年も「注文服」「既製服」を問わず「本物のフィッター」が、沢山の方々から支持と信頼を頂戴できることを願っている。
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