第4期の「フィッティングアドバイザー」2級講座は、去る6月末に全コース(レディス・メンズのすべて)が終了した。
 本誌(8月号)が発売される頃には、資格取得の認定審査が、札幌会場(7月27日)から、東京(8月2~5日)、大阪(8月9~11日)、福岡(8月17日)へと、順に実施される。
 今夏も、受験される方の力量が、あますところなく充分に発揮されることを願っている。
 
 ◇ 端境期のカンどころ

 かつての8月商戦は、ニッパチ(2月・8月)と呼ばれるほど閑散とした端境期だった。昨今は店舗の多くが、それなりに想定された予算組みから、そうブレることのないよう、ライフスタイルの変化や多様化に順応した「創意工夫」や催しなどの努力をしている。
 とはいえ、少しでも気を緩めたり、人員配備やシフト編成などの不備が重なると、コケてしまうこともしばしば起きてしまう。
 このシーズンは、売場担当やフィッティングアドバイザーの「カラーコントロール力」がモノを言い、色の打ち出し方いかんで、業績に大差がついてしまうことが多々ある。
 マークダウン品(春夏物)と、晩夏対策用品、秋の「新作品」が混在している売場は、明暗の差が著しい色味が点在している。人の目には、「軽い色」、「サマーダークな色」、重みのある「秋色」、そして、POP類(ショーカード、プライス他)の色などと、様々な売場と商品の「色」が飛び込んでくる。
 売場の鮮度を保つコツは、マークダウン商品を「夏物の秋色提案」にする。
 頭を悩ますことが多い秋物のイントロデュース期は、こうすることで、明度差が緩和され、値下品とプロパー価格品の双方が共倒れをすることなくお買い上げにつながる確率も高くなる。
 また、バーゲン期は「新規客との出会い」のチャンス月でもある!
 百貨店で、プロパーを買えない方でも、年に2度のビッグセールを心待ちにして、お越しくださるケースが沢山ある。
 バーゲン期にめぐり会えた新規のお客様が、後に一年中、その時に担当してくれたFAの上顧客となった事例は後を絶たない。
 バーゲン客も大切なお得意様として、おもてなしすることがラッキーチャンスにつながろう。

 ◇ 人も鉄も熱いうちに打つ!

 シーズンのはじめは、見せ(魅せ)筋商品や、トータル展開できるアイテムが揃っているから、労せずしても、そこそこのスタイリング提案(接客時・VP展開)をすることができる。
 しかし、本当のスタイリング力は、品揃えが乏しい、アイテムや色がバラバラになった時にこそ発揮されよう。…つまり、「手持ち在庫で、いかにステキなスタイリング提案ができるか?」という技能力は必須課題である。願わくば、全スタッフが兼ね備えていると、商品を売りきるための底力になる。
 そうなれるには、商品に対するシャープな感性と分析力を身につけることが効果的である。いずれのライフスタイルにも応えられるようになるには、自らも体得してみることが、応用力の向上につながろう。
 プロセールスの資格取得者でも、努力しなければ、イコール着こなし術(スタイリング力)のスペシャリストというふうにはいかない。
 また、業態や規模の大小を問わず、衣服を扱うスタッフなら「そこそこのセンスがあろう」と、お客さまの多くは期待されている。
 「お客さまの数だけ、スタイリングの引き出しはある」という心構えで臨むことは、リピート率向上にもつながる。
 近年、「商品の同質化傾向」と、「売り逃しという機会ロス」が、以前にも増しているからこそ、そうしたソフト部分がピンチ脱出のヘルパーになろう。
 美的な物にふれる機会を増やし、自らの着こなしに責任を持てるようになると、スタイリングのセンスが磨かれていく。
 つい最近、「商い人」ではないが、そんな思いをあらためて強くした。
 服飾専門学校で、専攻コースが異なる「ストアープロデュース科」「セレクトバイヤー科」「スタイリスト科」の、いずれも2年目の生徒たち約150人を対象に、「VMD」の授業を担当した時のことだ。1年目の基礎科で「何を学んだか?」によって、VP作品の出来ばえには雲泥の差がでた。
 また、服飾と小売業に対する意識が、VP作品(ボディを3体使った構成によるディスプレイ)の完成度に現れているような結果が出た。
 商売には、「マネジメント力」と、ライフスタイルごとの「エッセンスをかぎわける力」の2大資質が欠かせない!
 1年目に、後者をみっちりと学んだスタイリスト科の生徒たちは、他の科を圧倒していた。
 しかも、教材用の衣服は、各自がめいめい持ち寄ったバラバラの「トップスとインナー、ボトム」…。
 それらを、グループごとにかき集めると、「色・柄・素材・シルエット・テイスト」は、実際の売り場で言うなら、まるで総合衣料品店でのバーゲン期さながら、もしくはそれ以上に一貫性がない服ばかりという状況だった。
そこで私が出した指示は、。孱唯弔離董璽泙魴茲瓩襦´⊃Г鮃覆蠅海燹´什器(ボディ)の構図を考える と梁ゥ帖璽襪旅夫と配置 ス愼?劼離拭璽殴奪箸犯梁イ料世い鯡棲里砲垢襦△箸いΓ気弔旅猝棔
 授業は、
 「希望通りの商品が調達できなかった場合、どのようにステージや、ウィンドウのメインコーナーを展開する
  か?」
 「シーズンオフの商品に、愛の息を吹きかけて、いかによみがえらせるか?」
 「商品の美点を、どう展開すれば観(み)る側へ魅力的に伝えられるか?」
 という主旨のトレーニングであることも付け加えた。
 時差はあるものの、完成したVP作品を前に、先の 銑イ砲弔い討糧表をさせた。
 各々についてのコメントをした後、5分程で手直し(構図や、脚と腕のフォーミング、色のバランスとカラーコントロール、小物雑貨の補足など)をしてあげた。
 クタクタになっていた服が元気になった推移を見た、生徒たちの瞳に輝きを感じた。
 「これは、お客さまの目をごまかすことではないのよッ! 作り手のこだわりと魂を、余すところなく伝える手段
  なのよッ」
 すでに就職が内定している、もしくは就職活動中の生徒は、うなづきながら真剣にメモっていた。
 こういった体験学習は、売り場を想定して行うのが前提。
 「今月、今週、今日」、お客さまの目につきやすいコーナーに、「何を、何色を、どう展開するか?」は、立派な戦術である。
 接客応対が「言語表現」なら、視覚訴求は、サイレントな「非言語表現」であるから、スタイリングの腕は、常に磨く必要がある。
 したがって、現場スタッフ全員が、「おしゃれの コンシェルジェに!」という意識は、端境期ばかりではなく、年中持ち合わせていたい。

 ◇ フィッティング技術を、戦術に!

 プロセールス資格制度の発足以来、「フィッティングアドバイザー」を、インターネットなどで、外に向かってアピールしてきた百貨店は多い。
 それが「集客数」「売り上げ」、もしくは「リピート率」という数値で把握できている、店舗や売り場はいかほどであろうか?
 例えば、この制度に着眼し、金・銀バッチの取得者とは別に、ベテランのコンシェルジェが、ハイテクを駆使して、「服のお見立て」をしている百貨店もある。
 フィッティング&スタイリング技能力を、パソコン上で活かすには、それなりの「専門知識と技術」「感性」を体得しているスタッフの確保が、軌道に乗せるための前提条件。
 実践していく中で、2級の指定講座枠では、事足りないケースにも遭遇する。こうした「トータルコーディネーター」的な力量は、キャリアにプラスアルファの積み重ねが期待される。
 それらの構想がスタートラインにたった頃、「フィッティングコンシェルジェ」という仮称で、「スタッフの育成研修」をお手伝いさせていただいた。
 こういった実践例はまだほんの一握りだが、プロセールス資格取得者の技能力をさらに高めることによって、好実績に結びつけられる戦略・戦術がいくらでも見つかろう。
 例えば、現状の資格認定審査から、ボディサイズ(=実寸=ヌードサイズ)の「採寸情報」が、あまり伝わってこないので残念に思っている。
 「プロセールス資格審査」に、エキスパートとしての真価が問われる、難易度の高い「採寸実技」が組み込まれていないのは惜しい限りだ。
 「実寸を承る技能力があるパーソンは、総じて既製服のフィッティング術にも長けている」からだ。
 的確な採寸を承ることができると、精度の高い「サイズカルテ」が作成できる。
 的確な実寸値が記入された「カルテ」は、消化率の良い「サイズMD」の構築へと貢献できる。
 いずれにせよ、「フィッティングアドバイザー」制度を、さらなる店頭活性化につなげる策は、沢山残されている。
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