年を追うごとに早まっている感があるサマーギフト商戦は、すでにスタートした。
 本誌が発売の頃、指定校が受け持つ第4期「フィッティングアドバイザー」の2級講座も終盤にさしかかっている。
 今期はレディスが全7校、メンズは全5校が担当し、開催数の合計は、レディスが20講座、メンズが8講座となっている。
 新しい動きとしては、株式会社Kサポート(近鉄百貨店グループ)が指定団体として承認され、レディスで2講座を担当。…学校法人松徳学園・東京ファッション専門学校(松屋グループ)は、今期、「レディス」を休講にしている。
 3回目を経て体制が整ってきたという声がある一方、各校の講座内容に関して、「標準コードの徹底」や、プロセールスを目ざすための「適切な項目や優先順位が、網羅されているのか?」という懸念の声も、少なからず各方面から聞かれる。

 ◇プロセールス資格取得の現状

 今秋から、ギフト関連のプロセールス資格制度も立ち上がる。
 去る3月には、初の「フィッティングアドバイザー・メンズ」の(1級)資格者が、17社で29名が選ばれた。レディスはすでに、第1期、2期の合計で61名が誕生。
 また、今春の資格認定審査(第3期2級)の合格率に関しては、レディスが前回の75%よりやや低い73%、メンズも前回の77%を下回る、69%であった。
 それらの数字は、あくまで各校の平均値であるが、ベテラン(男女を問わず)でも、様々な要因で選にもれてしまったケースも少なくない。
 あらゆる視点からのバックアップやフォローと、失敗の要因分析が必要だ。
 審査状況が講師には見えないことや、実施済み試験問題の公開が皆無のため、「出題問題」や、実技試験の「着眼点」が万全か、「ロールプレイングが、今の時代に即していて、リアル感があるか?」などなど、推測をめぐらすしか術がない!

 ◇振り出しに戻った課題

 衣料業界では現在、雨後のタケノコのように、「○○フィッター」の類が乱立している。
 既製服のお直し(採寸・サイズの詰め出し・修理)は、今に始まったことではない。
 百貨店プロセールス資格制度の「フィッティングアドバイザー」は、それらと、「接客・商品知識」とをリンクさせて発足した。
 業界内で行われている研修は、単なる表層上の「サイズの詰め出し」が一人歩きしている感が強い。
 接客回数が浅く、「服のしくみ」への理解度が浅いスタッフの場合、それらの受講後、モチベーションは高まるものの、売りたいがために、服のシルエットや立体感、「工程」「ダーツの位置」「ゆとり(ゆるみ)」などにまで目を向ける能力が追いつかず、「丈や幅の詰め出し」がエスカレートし、修理費を増長させてしまう危険性が発生する。
 また、「○○フィッター」と称する中にも、ウェディング業界の「ドレスフィッター」や、老舗の専門店の「販売フィッター」、欧米のメゾンで活躍する「既製服のフィッター」などの本物もあれば、服の各パーツ・パーツに必要な「運動量・機能性・デザイン上のゆとり」にうとい、「試着・お直しの入門レベル」といった類も混在している。
 かつて百貨店で、婦人服イージーオーダーの補正師や、メンズ服の販売をしていた頃、「採寸」「サイズの詰め出し」「体形別補正」「リフォーム」の棲み分けを、明確に解き明かしてくれる文献が皆無に等しかった。
 94年に私が「パワーアップCS販売術…服のボディフィッター入門」を上梓したのは、当時の公的団体が発行した「お直しマニュアル」までが、「あれもこれも、こう直る」といった危うい内容だったから。
 そのマニュアルは、某百貨店が提携していた修理会社がリーダーシップをとり、作成した小冊子だった。それには、「注意を要するお直し」「避けたいお直し」「タブーのお直し」などの区分けがされていなかったため、それを手本にした企業の多くで、再お直しと修理費がかさみ、現場での混乱を招いていた。
 そこで、それらを改善するために、クチュール店で体得した「フィッティング技術」を、既製服に応用することによって、商品のイメージを損なわない、わかりやすい補正方法を提案できないかと考えあぐねた上でのことだった。
 それ以前の92年には、すでに「いでよクレームコンサルタント・サイズフィッター・カラーアナリスト」という見出しで、その年の9月2日に繊研新聞にも提起させていただいた。
 以来、今日まで、単なる「サイズ調整」だけでは、CS(顧客満足)にはつながらないと、自著や各種メディア(本誌含)、研修会で提案し続けてきている。
 では、百貨店協会の「フィッティングアドバイザー」制度における「補正知識&技術」についてであるが、レディスの場合、3級も2級も、一部の講座を除いては「サイズの詰め出しの域ではないか」と、辛口のコメントをさせていただく。
 いずれにしても、現状の資格取得による、モチベーションの向上に頼っていて生き残れるほど、おだやかな環境ではなくなっていこう。

 ◇ときめきのチャイム

 市場規模の拡大が見込めない時代にあって、お客さまがときめかない衣料品は、早急に手を打つ必要がある。
 すべての小売業にとって、「販売力」は昔から永遠の課題であるが、「魅力のない品」を前にしては、好感度なFAが、いくら商品の「うんちく」を語っても、徒労に終わってしまおう。
 また、お客さまは、シナリオ通りのような「ニーズチェック」をされた上に、自分にとっては「魅力のない品」を提示されても、うざったく、ますます敬遠したくなろう。
 豊かな「知識と技術に裏打ちされた、ハートフルなおもてなし」も、「心の欲求」をどう汲み取れるかで満足度の濃度が異なってくる。
 つい最近のことだが、人柄も「接遇力&販売力」も申し分のない、都内百貨店の社員であるA子さんに、「どう、元気で頑張っている? 相変わらず絶好調?」とたずねると、「それが…」とうかない返事が返ってきた。
 そのわけは、そこの売り場特性と、客層の好みを心得た服を納品していたお取引先がなくなってしまったことが災いして、それが業績にも響いているとのこと。
 「売れる品」と「売っていく品」は一致することが望ましいが、固定客を沢山持ち、販売力のある彼女ですら、お客さまがときめいてくださらない商品の前では、新規客の開拓すらままならないのである。
 またメンズのケースだが、四国へ出張(3月)の折、高知県庁の経営流通班のS氏は、「もう、最近、服買うのイヤになってしもうた」と不満をもらしていた。
 彼は昔からおしゃれ大好き人間で、百貨店にある著名ブランドのファンであったが、最近同じブランドの同じサイズを購入しても、着ずらい服(体形・体型・体重の変化はないのに)が増えてきたからと言う。 ある紙面に私が「作る人」「仕入れる人」「売る人」に、「ゆとり(服のゆるみ)おんち」が増えたという内容のコラムを書いたが、「まったく同感!」とユーザーの立場から共感してくれた。
 つまり、プロであるべき側に、服の各パーツ・パーツに施されている、適正量のゆとり(ゆるみ)にうとい人が急増中なのである。
 かと言って、例えば、FAやバイヤーが洋裁学校に行く必要はない!
 的を射た「フィッティング」をマスターすれば良いだけのことだ。
 近頃はまた、商品知識の基本である、デザインやディテール名称を、FAよりお客さまがご存じのことが多い。
 それにまつわる「ルーツ」や「着こなし術のバリエーション」の他、そのアイテムがお客さまにとって、「どんなメリットをもたらしてくれるのか?」を語れることが、信頼性につながる。ただし、「くどくど」ではなく、「さらり」と語れるようなプロの育成が急務と言えよう。
 「さらり」と語れるようになるには、おしゃれと、「人生経験の積み重ね」も必要か?
 上着の打合せで、「男仕立て」と「女仕立て」があるように、パンツの前ジッパーにもそれがあることすら知らない「売り手」が、一流企業にわんさかいる昨今である。

 ◇ふた味違える奥の手

 パソコン画上では、売れた商品の満足度は出てこない。それが本当に「欲しかったのか?」それとも、希望する商品にそれが「一番近かったから購入したのか?」売り手の「情熱に押し切られたのか?」は、システムより購入者が一番良くおわかりだ。また、「売ったのか」「売れたのか」は、担当者しか手応えを感じられない。
 売り手が、様々なシーン体験をし、「オシャレの達人」になることは、的中率の高い「品揃え」により近づく近道だと思う。
 とはいえ、営業利益の改善に努め、効率を追求していかなければならない状況下では、商品の「同質化防止」と「原価率を低下させる努力」とは、相反するエレメントであるから頭の痛いハードルだ。
 「似通った商品であっても、ひと味ならぬ、ふた味も違う訴求で販売できないだろうか?」
 そんな時に役立つのが、四大配色(アクセント・セパレーション・グラデーション・ドミナント)をスタイリング提案に落とし込む技。
 実践・検証していただいたFAから、「そのノウハウは、セールストークにも、VMDにも役立った」と、多数の感想を頂いてきた。
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