10月25日に発表された全国百貨店(98社、285店)の9月売り上げ高は、前年比4.4%減の5557億8600万円で、7ヶ月連続の減収であった。
リニューアルや文化的催事、各種のセールに努めた店舗も含めて、予期せぬ大自然の猛威にふりまわされたことが災いして、創意工夫されたMDやサービスも、充分な真価を発揮できなかったようだ。
さて、今夏に実施された「フィッティングアドバイザー(2級)」の、第2回審査の最終結果であるが、レディスは334名の受験者中、250名(約75%)が合格し、メンズは162名の受験者中、124名(約77%)が合格という予測通りの成果となった。
また、3級に関しては、昨秋のスタート時から現在までに、783名が、規定をクリアーして修了証を授与されている。
今期9月15日からスタートした2級講座(レディス全17回・メンズ全13回)も、本稿を執筆の時点で、レディス、メンズ共に、前半から後半への橋渡し期にさしかかっていた。
◇ 販売力向上のキーポイント
先日、都内にある服飾関連の専門学校生から、「接客が、なかなか商品の購入につながらない…」という悩みの相談を受けた。
今秋からそこで、「ファッションアドバイザープログラム」と、「ファッションビジネスプロデュース科」という講座を担当させていただき、「プロFA育成」と「販売力の向上」を目ざした実習・座学・体験学習で、未来の商人を育てることに努めている。
生徒の面々は、30%ほどが、すでに就職が内定している、もしくはまだであるが、授業の間をぬいながら、販売職のアルバイトをしているといった具合だ。
先のような悩みは生徒ばかりではなく、百貨店、SC、量販店、中小個店、その他に務めるFAにも、常につきまとう現実である。
立地条件が良い、もしくは知名度の高い企業や、ブランドのネームバリューが広く浸透している店舗の場合、そこで働いているFAを、不利な条件下の店舗で販売をさせてみると、本当の力量がわかる。
自他共に販売力があると思われていたFAが、集客力のない店舗に配属された結果、大半がつぶれてしまい本物として生き残れたのは60%程度という事例を沢山見てきた。
反対に、集客力のない店舗や売り場で業績を上げてきたFAを、好条件の所に配置転換させてみたら、そこの業績が一気に上がった例は、昨今でもよくある。
先の生徒が、商品を売れない訳がわかった。
いつも接客しているように、ロールプレイングさせたところ、すべての流れが「重い」のである。
例えば、
▽ 見かけが大人っぽくて、声のトーンが低いために、近づきがたい。
▽ お声かけ後に、お客さまを自由に泳がせてあげていない。
▽ アイテムやスタイリング知識を、お客さまのタイプを見極めずに、早々とひけらかしてしまう。
…などが、購買につながらない主な要因として浮上した。(商品は値頃感があって、人気の著名ブランド)
そこで、「どのようにすれば、お客さまが心を開いてくださるか?」、「FAの個性が輝く接客応対とは?」について実例を交えながら、コーチングをしたところ、自らのウィークポイントを理解できたようで、笑顔で帰って行った。
販売では、「自家需要・ギフト需要」といった、目的買いへの接遇は、接客の入門編と言える。
プロは、「購買予備軍」のお客さまに対して、「いかにアプローチすれば、商品価値の何倍ものご満足をいただけるのか、また購入につながるのか?」を心得ている。
◇ 売り上げデータの水面下を探る
業態に際がなくなって久しいが、公開される売り上げデータを鵜呑みにして、一喜一憂していても進展はない。
景気や天気がどうであれ、また商品の同質化傾向がエスカレートしようが、人は服を必要としている。
そこで以下のような、検討課題を記載してみた。
課題,蓮▲▲Ε肇譽奪肇癲璽襪膨未い弔瓩訖諭▲螢汽ぅルショップで服を購入する人が予想外に多い。
百貨店が、射程に入れなくてはならない相手は、自宅に伺い、仮縫いつきの注文服やリフォームの受注をする「マイ・スタイリング服」の提供者や、ホテルなどの会場で、洋服やジュエリーを、期間限定で即売する仕組みの異業種だ。
それらの売り上げ高をも視野に入れなければ、もはや消化率の良い「MD構築」をはじめ、「人的サービス」の側面までが、万全とは言えない時代となっている。
課題△箸靴討蓮◆嵜佑凌瓦鯑阿す」のは人、「システムを操る」のも人という、誰しもが痛感している不変のテーマを整理する必要がある。
接客の達人と呼ばれるプロ(フィッティングアドバイザー含)FAは、共通して以下のような資質を持ち合わせている。
(1) アフターフォローを欠かさず、筆マメで、せっせとDMを出し続けている。
(2) 五感がシャープで、販売計画(在庫管理から催事まで)や、商品の「演出展開」に長けている。
(3) あらゆる情報をふるいにかける能力に優れていて、購買につながる商品を「狙い当てる」ことが上手。
とりわけ(2)と(3)であるが、導き方次第で、優れたMD担当や名バイヤーの誕生を期待できる。
△北瓩襪、婦人服のMD、バイヤー、企画&素材担当のキーマンで「女体のメカニズム」や、「女心」を熟知しているスタッフは、業態に関係なく、「どれほど存在しているのであろうか?」
「消化率の良いMD構築」「効率の良い商い」を営むには、「そそる服づくり」と「仕入れ」能力が前提条件である。…豊かな知識に裏打ちされた「感性」と、「女性」の潜在願望をキャッチできる「柔軟性」を、常に磨く必要性があろう。
◇ サービスという商品
欧米でサービスの研究に努めている識者によると、サービスは、「目に見えない商品で、瞬時に生産されて同時に消費されてしまう、ストックや手直し、修理さえもできないモノ」だそうだ。
人々の価値観が「モノ」から「質」、そして再び「心の充足」へと、うねりが大きくなっている昨今も、前項の(1)(2)(3)をフォローしてくれる助っ人は、買い手発想の「サービス精神」につきよう。
以下は、月一度でかれこれ297回も続いている、異業種の交流&勉強会(CS・サービス向上研究会…筆者も会員)で知り得た「SERVICE」のルーツに由来する用語を、私なりに解釈してみた内容である。
「S」→Sincerity…常に「誠意」を持ってお客さまに接します。
「E」→Energy…立ち居振る舞いや仕ぐさは、にこやかに上品でありながら「エネルギッシュ」に動きます。
「R」→Revolutionary…どのお客さまにも、いつも「新鮮な出会い」をお届けします。
「V」→Valuable…チームワークを考え、時には機転を利かせて「価値」ある充実した対応をします。
「I」→Impressive…聞き上手、話し上手になって「感銘深い」会話を心がけます。
「C」→Communicate…販売業務を通して、人と人をつなぐ「コミュニケーション上手」になれるよう努めます。
「E」→Entertain…着心地・居心地・夢心地の三拍子が盛り上がるよう、もっともベストな「おもてなし」空間を
プロデュースします。
◇ 百貨は百花そして百華
先日、うれしいEメールや問い合わせが三件あった。
その1は、某百貨店の女子社員からだ。彼女はすでに服のフィッター(社内認定)のバッヂを胸につけて、お得意さまを沢山持っている。
社内認定を受ける前から、接客や販売が好きで、売り上げを作ってきた。
「2級講座は、いつ頃受けられるの?」という問いに、「順番待ちです! そのうち回ってきます」と弾んだ声が電話の向こうからしてきた。
その2は、初夏に「ボディフィッター育成」の研修をさせていただいた(コンシェルジュの方を対象)某百貨店の販促部門からのEメール。
「目ざしたゴールイメージに、一歩づつ近づき、お客さまからの手応えと売り上げが、プラス方向へと動き出した」とのこと。
その3は、地方百貨店の婦人服を扱う男性バイヤー(「服のボディフィッター実践講座」を購入してくださった)からの問い合わせである。
概要は、「サイズMDの構成比で、ニッチ部分の、限定サイズに関する、意見を聞かせて欲しい」といった内容である。
こうした事例からも、既製服を扱うどのセクションも、「サイズ・シルエット・フォルム」、「修理費の節減」、「色使いやスタイリング能力」…といった課題がついて回っていることを確信した。
百貨店は、どのセクションにも百花(華)が、いつも咲いて欲しい。はきちがえた「リフォームフィッター」は言語道断だ!
フィッティングアドバイザーとしてのゴールイメージは、個々のご要望に応えられる、服に詳しい「いやし系のスタイリスト」!
服の立体感を無視した、身体のパーツパーツだけを見つめた「サイズ調整」や「お直し技術」に走らないことを願っている。
◇ アフターフォローのあれこれ
プロセールスの資格取得者に、今後いかほどファンがつくかは、アフターフォロー次第である。
例えば、「メガネのフィッター」…(眼鏡業界の一部で発足)は、従来のカンと経験に頼っていたノウハウを、体系だてて整理し、技能力の向上と、後輩の育成とをスローガンにスタートした。
メガネは、目の健康という医学的見地から「視力調整の技能力」、まぶたや鼻、頬への「フィット具合の見極め」、「レンズやフレームの機能・構造知識とメンテナンス力」「色やデザインの理解」といった難関をクリアーしなければならない。
こういった異業種の事例から、服を扱うスタッフが学ぶことも多い。
資格取得は、あくまで「第1ハードル」、業界全体で、「着心地満足服」の追究をしていきたい。
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【無断転載使用不可】
リニューアルや文化的催事、各種のセールに努めた店舗も含めて、予期せぬ大自然の猛威にふりまわされたことが災いして、創意工夫されたMDやサービスも、充分な真価を発揮できなかったようだ。
さて、今夏に実施された「フィッティングアドバイザー(2級)」の、第2回審査の最終結果であるが、レディスは334名の受験者中、250名(約75%)が合格し、メンズは162名の受験者中、124名(約77%)が合格という予測通りの成果となった。
また、3級に関しては、昨秋のスタート時から現在までに、783名が、規定をクリアーして修了証を授与されている。
今期9月15日からスタートした2級講座(レディス全17回・メンズ全13回)も、本稿を執筆の時点で、レディス、メンズ共に、前半から後半への橋渡し期にさしかかっていた。
◇ 販売力向上のキーポイント
先日、都内にある服飾関連の専門学校生から、「接客が、なかなか商品の購入につながらない…」という悩みの相談を受けた。
今秋からそこで、「ファッションアドバイザープログラム」と、「ファッションビジネスプロデュース科」という講座を担当させていただき、「プロFA育成」と「販売力の向上」を目ざした実習・座学・体験学習で、未来の商人を育てることに努めている。
生徒の面々は、30%ほどが、すでに就職が内定している、もしくはまだであるが、授業の間をぬいながら、販売職のアルバイトをしているといった具合だ。
先のような悩みは生徒ばかりではなく、百貨店、SC、量販店、中小個店、その他に務めるFAにも、常につきまとう現実である。
立地条件が良い、もしくは知名度の高い企業や、ブランドのネームバリューが広く浸透している店舗の場合、そこで働いているFAを、不利な条件下の店舗で販売をさせてみると、本当の力量がわかる。
自他共に販売力があると思われていたFAが、集客力のない店舗に配属された結果、大半がつぶれてしまい本物として生き残れたのは60%程度という事例を沢山見てきた。
反対に、集客力のない店舗や売り場で業績を上げてきたFAを、好条件の所に配置転換させてみたら、そこの業績が一気に上がった例は、昨今でもよくある。
先の生徒が、商品を売れない訳がわかった。
いつも接客しているように、ロールプレイングさせたところ、すべての流れが「重い」のである。
例えば、
▽ 見かけが大人っぽくて、声のトーンが低いために、近づきがたい。
▽ お声かけ後に、お客さまを自由に泳がせてあげていない。
▽ アイテムやスタイリング知識を、お客さまのタイプを見極めずに、早々とひけらかしてしまう。
…などが、購買につながらない主な要因として浮上した。(商品は値頃感があって、人気の著名ブランド)
そこで、「どのようにすれば、お客さまが心を開いてくださるか?」、「FAの個性が輝く接客応対とは?」について実例を交えながら、コーチングをしたところ、自らのウィークポイントを理解できたようで、笑顔で帰って行った。
販売では、「自家需要・ギフト需要」といった、目的買いへの接遇は、接客の入門編と言える。
プロは、「購買予備軍」のお客さまに対して、「いかにアプローチすれば、商品価値の何倍ものご満足をいただけるのか、また購入につながるのか?」を心得ている。
◇ 売り上げデータの水面下を探る
業態に際がなくなって久しいが、公開される売り上げデータを鵜呑みにして、一喜一憂していても進展はない。
景気や天気がどうであれ、また商品の同質化傾向がエスカレートしようが、人は服を必要としている。
そこで以下のような、検討課題を記載してみた。
課題,蓮▲▲Ε肇譽奪肇癲璽襪膨未い弔瓩訖諭▲螢汽ぅルショップで服を購入する人が予想外に多い。
百貨店が、射程に入れなくてはならない相手は、自宅に伺い、仮縫いつきの注文服やリフォームの受注をする「マイ・スタイリング服」の提供者や、ホテルなどの会場で、洋服やジュエリーを、期間限定で即売する仕組みの異業種だ。
それらの売り上げ高をも視野に入れなければ、もはや消化率の良い「MD構築」をはじめ、「人的サービス」の側面までが、万全とは言えない時代となっている。
課題△箸靴討蓮◆嵜佑凌瓦鯑阿す」のは人、「システムを操る」のも人という、誰しもが痛感している不変のテーマを整理する必要がある。
接客の達人と呼ばれるプロ(フィッティングアドバイザー含)FAは、共通して以下のような資質を持ち合わせている。
(1) アフターフォローを欠かさず、筆マメで、せっせとDMを出し続けている。
(2) 五感がシャープで、販売計画(在庫管理から催事まで)や、商品の「演出展開」に長けている。
(3) あらゆる情報をふるいにかける能力に優れていて、購買につながる商品を「狙い当てる」ことが上手。
とりわけ(2)と(3)であるが、導き方次第で、優れたMD担当や名バイヤーの誕生を期待できる。
△北瓩襪、婦人服のMD、バイヤー、企画&素材担当のキーマンで「女体のメカニズム」や、「女心」を熟知しているスタッフは、業態に関係なく、「どれほど存在しているのであろうか?」
「消化率の良いMD構築」「効率の良い商い」を営むには、「そそる服づくり」と「仕入れ」能力が前提条件である。…豊かな知識に裏打ちされた「感性」と、「女性」の潜在願望をキャッチできる「柔軟性」を、常に磨く必要性があろう。
◇ サービスという商品
欧米でサービスの研究に努めている識者によると、サービスは、「目に見えない商品で、瞬時に生産されて同時に消費されてしまう、ストックや手直し、修理さえもできないモノ」だそうだ。
人々の価値観が「モノ」から「質」、そして再び「心の充足」へと、うねりが大きくなっている昨今も、前項の(1)(2)(3)をフォローしてくれる助っ人は、買い手発想の「サービス精神」につきよう。
以下は、月一度でかれこれ297回も続いている、異業種の交流&勉強会(CS・サービス向上研究会…筆者も会員)で知り得た「SERVICE」のルーツに由来する用語を、私なりに解釈してみた内容である。
「S」→Sincerity…常に「誠意」を持ってお客さまに接します。
「E」→Energy…立ち居振る舞いや仕ぐさは、にこやかに上品でありながら「エネルギッシュ」に動きます。
「R」→Revolutionary…どのお客さまにも、いつも「新鮮な出会い」をお届けします。
「V」→Valuable…チームワークを考え、時には機転を利かせて「価値」ある充実した対応をします。
「I」→Impressive…聞き上手、話し上手になって「感銘深い」会話を心がけます。
「C」→Communicate…販売業務を通して、人と人をつなぐ「コミュニケーション上手」になれるよう努めます。
「E」→Entertain…着心地・居心地・夢心地の三拍子が盛り上がるよう、もっともベストな「おもてなし」空間を
プロデュースします。
◇ 百貨は百花そして百華
先日、うれしいEメールや問い合わせが三件あった。
その1は、某百貨店の女子社員からだ。彼女はすでに服のフィッター(社内認定)のバッヂを胸につけて、お得意さまを沢山持っている。
社内認定を受ける前から、接客や販売が好きで、売り上げを作ってきた。
「2級講座は、いつ頃受けられるの?」という問いに、「順番待ちです! そのうち回ってきます」と弾んだ声が電話の向こうからしてきた。
その2は、初夏に「ボディフィッター育成」の研修をさせていただいた(コンシェルジュの方を対象)某百貨店の販促部門からのEメール。
「目ざしたゴールイメージに、一歩づつ近づき、お客さまからの手応えと売り上げが、プラス方向へと動き出した」とのこと。
その3は、地方百貨店の婦人服を扱う男性バイヤー(「服のボディフィッター実践講座」を購入してくださった)からの問い合わせである。
概要は、「サイズMDの構成比で、ニッチ部分の、限定サイズに関する、意見を聞かせて欲しい」といった内容である。
こうした事例からも、既製服を扱うどのセクションも、「サイズ・シルエット・フォルム」、「修理費の節減」、「色使いやスタイリング能力」…といった課題がついて回っていることを確信した。
百貨店は、どのセクションにも百花(華)が、いつも咲いて欲しい。はきちがえた「リフォームフィッター」は言語道断だ!
フィッティングアドバイザーとしてのゴールイメージは、個々のご要望に応えられる、服に詳しい「いやし系のスタイリスト」!
服の立体感を無視した、身体のパーツパーツだけを見つめた「サイズ調整」や「お直し技術」に走らないことを願っている。
◇ アフターフォローのあれこれ
プロセールスの資格取得者に、今後いかほどファンがつくかは、アフターフォロー次第である。
例えば、「メガネのフィッター」…(眼鏡業界の一部で発足)は、従来のカンと経験に頼っていたノウハウを、体系だてて整理し、技能力の向上と、後輩の育成とをスローガンにスタートした。
メガネは、目の健康という医学的見地から「視力調整の技能力」、まぶたや鼻、頬への「フィット具合の見極め」、「レンズやフレームの機能・構造知識とメンテナンス力」「色やデザインの理解」といった難関をクリアーしなければならない。
こういった異業種の事例から、服を扱うスタッフが学ぶことも多い。
資格取得は、あくまで「第1ハードル」、業界全体で、「着心地満足服」の追究をしていきたい。
Copyright(C) DOMINANT LIMITED All Right Reserved.
【無断転載使用不可】