百貨店プロセールス資格制度がスタートして、あっという間に一年が過ぎた。
先月の半ばには、北海道地区で、第2回目の2級資格取得の審査が終了したばかりだ。
本誌が発売の頃に、合否の判定がほぼ確定していよう。
9月から、いよいよ2級講座の第3フィールドが始まる。
第一期の資格取得者をはじめ、すでに2級講座を受講された方や他のスタッフにとっても、この頃は下期の商戦を占い、弾みづけとなるシーズンのため期待と不安が交錯しよう。
下期の2級講座が、何回開催されるかは、本稿の執筆時点(7月末)では調整中のため不確定だった。
レディス・メンズ共に、新たな展開やアイデア、修正などが加えられる可能性もありそうだ。
◇ 過去・今日・未来の検証
下期の2級講座のうち、「ファッションフィッター講座」(筆者担当)に関しては、晩秋に近い頃(1回)の予定となっている。
時期をにらんで、ウィンター商戦もからめた内容を加味したい(百貨店協会の設定レベル・単位・内容にプラスαを添える)と考えている。
ここ一年間は、この制度の充実を目ざして、本部も送り出す側も、そして受験者も、モチベーションを高めながら、各々のセクションが独自のやり方で鼓舞もしてきた。
現時点では、習得した、「接客」「商品知識」「お直し技術」という属性を、期待通りにリンクさせることのできたメンバーは、7~8割ではないだろうか?
100%と言い難い理由の一つとして、衣料売り場を担当してきたものの、後方の管理業務に追われ、お客さまとの接遇チャンスが不足したために、キャリア年数と接客回数が比例していないこともあろう。
講座に参加された方で、自信をつけて帰られる方の多くは、好奇心が旺盛で目ヂカラ(眼力)がある。
一方、弱気になってしまう方は、接客回数が少ないか、もしくは「学ぶこと」そのものに「ストレス」を感じてしまうケースが多いようだ。
前者の瞳は、「チャンスは全部モノにする!」といった意気込みで輝いていることが多い。
後者には、「服を販売することって、そんなに辛かったかしら?」
「ご自分自身もユーザーなのよッ、いつも服を着ているんだから、落ち着いて考えてみましょう」と励ますことにしている。
かつて先輩から、「小説家は、白を見ると、七色の虹が見える。凡人は、白を見て、白しか見えないッ」といった例えを聴かされた。
習得チャンスを逃しがちなおっとりタイプには、実技の時に後押しをした。
◇ ティーチとコーチの使い分け
何事も結果は大切だが、時にはそのプロセスが重要なことも多い。接客業においてはなおさらである。
例えば「フィッティング技術」。今さら言うまでもないが、多くの方が、サイズの「詰め出し」と「修理」、「体形別補正」と「リフォーム」を混同して、全部ひっくるめて「お直し」と呼んでしまっている。
「フィッティングアドバイザー」は、服を熟知した上で、「お直し」を極力承らなくて済むような技能力を持ち合わせていなければならない。
しかし現状は、「修理・加工・アトリエ」主導型に近い、単なるサイズの「詰め出し」や、その域をはるかに越えてしまった「リフォーム」に近いことが、ためらいもなく既製服を扱う売り場で行われている。
したがって、修理加工費の節減にはつながっていない。
表層上のサイズの「詰め出し」ばかりが先行して、既製服本来の美しいシルエットが損なわれている。各部位に必要なゆとり(ゆるみ)を知らないピン打ちは、クリーニング後に、布地が収縮し、ボディラインもあらわな「ピタピタ服になってしまった」などという苦情を招く。
にもかかわらず、「フィッティング」関連の研修は、「ゆるみ」や「シルエット」「工程」が後手に回ったような、「ピン打ちの仕方を手取り足取り教えて…」といった類のニーズが多い。かたや教える側も「サイズの詰め出し」の域を出ていないケースが氾濫している。
服の工程やシルエット、「ゆるみ」を熟知していなければプロではない。それらが分かれば、男性社員でも、婦人服のピン打ちを容易にこなすことができる。
プロの域に到達するには、他力本願は言語道断だ。「ティーチ」ばかりに頼らず、「コーチング」についていくことのプロセスと、自らが深く考えて答を出せる「商い人」の育成が大切だ。
つまり、コーチングとは、自らが「考える力」を発揮することから入るのが基本となる。
フィッティングアドバイザーの育成もしかり、ティーチ(教える)とコーチ(自らがつかみ取れるよう訓練する)との使い分けが必要か? 講座への参加者は、自己課題を持つことが前提条件といえよう。
服を扱う全スタッフに目標(イメージ・ゴール)を定めさせ、現状を分析させてから、各店が定めるゴールや、顧客が求めておられる期待に応えられるよう、2級講座でも、安易なヘルプ(助ける)をせずに、サポート(ヒントを与えて支援)をしていきたいと願っている。
◇ 名フィッターはプロバイヤー
フィッティングアドバイザーが、日々の業務に自信がついた頃は、服の「名フィッター」となる。
前号でも記したが、レディスの2級講座に、男性社員を積極的に送りこんでいただくと、百貨店はさらにパワフルになろう。
かつて、業界新聞紙上で、フィッターの心得について書かせて頂いた。男女に関係なく推奨する理由を、「七つの心得」にまとめたものを以下に紹介させていただく。
ピン打ちの技術はピカ一、再お直しはめったにない。
素材の特性・物性にたけている上で、値を決める。
顧客カルテに、お買い上げ商品の、的確な補正箇所、および値を正確に記入できる能力がある。
フィッティング、ピン打ち時の、しぐさやセールストークが自信を持ってできる。
どんな体形・体型・体格、容貌、肌や髪、瞳の色の方に出会っても、たじろがない技術と知識を
身につけている。
映画の名衣装デザイナーのごとく、お客さまの最も美しいシルエットの値を見つけることができ、
ニーズに応じたスタイリングができる。
アフターフォロー、メンテナンスも忘れずに実践でき、定期的にグッドサイズのカルテを作れる
能力がある。
銑Г了訶世之,蟆爾欧討いと、基本のスキルが、いずれ売り場の管理職、バイヤー、販売促進などの職務で、大輪の花を咲かすことが期待できよう。
時として、外部から、このような提案は、「レベルが高すぎる」と言う声も聞かれる。
それらの声に対して、裏を返せば「理解度が低い」と、応酬させていただくこともある。
「プロの世界は甘くない!」
現場でお客さまのニーズにお応えしてきた結果、今までの「一連の課題や提案が生まれた」訳なのだから…。
◇ 三者のコミュニケーション
例えば、パンツの股下寸法直しが仕上がってきた場合、ご要望通りに調整されていないと、お客さまと、担当者、お直し場スタッフが、端ぎれを前に「直した」「直してない!」と、水掛け論になることが多々ある。
端ぎれの幅ほど、あてにならないものはない。直す人によって、布にハサミを1回入れるだけとは限らないからである。
レディスで多発している主因は、メンズのお直し伝票にあるような「股下何兢紊り」という項目がないからである。
本来「股下寸法は、絶対値」のはずである。
各百貨店のレディス売り場にある伝票欄のほとんどは「何儺佑瓠何兔个掘廚良週しかない。
かつては、レディスの伝票にも「股下何兢紊り」の項があった。
直しを「出す側」と、「する側」との双方共に、技能力のバラツキ(メジャーの持ち方が甘い・辛い。0僂僚佝点のブレ他)があるため、いつの頃からか「何儺佑瓠出し」にするのが無難という「方向性」に押されてしまったようだ。
現状の伝票を使用するに当たって、再お直しやクレームを未然に防止するためには、パンツなら「何儺佑瓠△發靴は出し…股下何兢紊り」と明記するのが好ましい。
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先月の半ばには、北海道地区で、第2回目の2級資格取得の審査が終了したばかりだ。
本誌が発売の頃に、合否の判定がほぼ確定していよう。
9月から、いよいよ2級講座の第3フィールドが始まる。
第一期の資格取得者をはじめ、すでに2級講座を受講された方や他のスタッフにとっても、この頃は下期の商戦を占い、弾みづけとなるシーズンのため期待と不安が交錯しよう。
下期の2級講座が、何回開催されるかは、本稿の執筆時点(7月末)では調整中のため不確定だった。
レディス・メンズ共に、新たな展開やアイデア、修正などが加えられる可能性もありそうだ。
◇ 過去・今日・未来の検証
下期の2級講座のうち、「ファッションフィッター講座」(筆者担当)に関しては、晩秋に近い頃(1回)の予定となっている。
時期をにらんで、ウィンター商戦もからめた内容を加味したい(百貨店協会の設定レベル・単位・内容にプラスαを添える)と考えている。
ここ一年間は、この制度の充実を目ざして、本部も送り出す側も、そして受験者も、モチベーションを高めながら、各々のセクションが独自のやり方で鼓舞もしてきた。
現時点では、習得した、「接客」「商品知識」「お直し技術」という属性を、期待通りにリンクさせることのできたメンバーは、7~8割ではないだろうか?
100%と言い難い理由の一つとして、衣料売り場を担当してきたものの、後方の管理業務に追われ、お客さまとの接遇チャンスが不足したために、キャリア年数と接客回数が比例していないこともあろう。
講座に参加された方で、自信をつけて帰られる方の多くは、好奇心が旺盛で目ヂカラ(眼力)がある。
一方、弱気になってしまう方は、接客回数が少ないか、もしくは「学ぶこと」そのものに「ストレス」を感じてしまうケースが多いようだ。
前者の瞳は、「チャンスは全部モノにする!」といった意気込みで輝いていることが多い。
後者には、「服を販売することって、そんなに辛かったかしら?」
「ご自分自身もユーザーなのよッ、いつも服を着ているんだから、落ち着いて考えてみましょう」と励ますことにしている。
かつて先輩から、「小説家は、白を見ると、七色の虹が見える。凡人は、白を見て、白しか見えないッ」といった例えを聴かされた。
習得チャンスを逃しがちなおっとりタイプには、実技の時に後押しをした。
◇ ティーチとコーチの使い分け
何事も結果は大切だが、時にはそのプロセスが重要なことも多い。接客業においてはなおさらである。
例えば「フィッティング技術」。今さら言うまでもないが、多くの方が、サイズの「詰め出し」と「修理」、「体形別補正」と「リフォーム」を混同して、全部ひっくるめて「お直し」と呼んでしまっている。
「フィッティングアドバイザー」は、服を熟知した上で、「お直し」を極力承らなくて済むような技能力を持ち合わせていなければならない。
しかし現状は、「修理・加工・アトリエ」主導型に近い、単なるサイズの「詰め出し」や、その域をはるかに越えてしまった「リフォーム」に近いことが、ためらいもなく既製服を扱う売り場で行われている。
したがって、修理加工費の節減にはつながっていない。
表層上のサイズの「詰め出し」ばかりが先行して、既製服本来の美しいシルエットが損なわれている。各部位に必要なゆとり(ゆるみ)を知らないピン打ちは、クリーニング後に、布地が収縮し、ボディラインもあらわな「ピタピタ服になってしまった」などという苦情を招く。
にもかかわらず、「フィッティング」関連の研修は、「ゆるみ」や「シルエット」「工程」が後手に回ったような、「ピン打ちの仕方を手取り足取り教えて…」といった類のニーズが多い。かたや教える側も「サイズの詰め出し」の域を出ていないケースが氾濫している。
服の工程やシルエット、「ゆるみ」を熟知していなければプロではない。それらが分かれば、男性社員でも、婦人服のピン打ちを容易にこなすことができる。
プロの域に到達するには、他力本願は言語道断だ。「ティーチ」ばかりに頼らず、「コーチング」についていくことのプロセスと、自らが深く考えて答を出せる「商い人」の育成が大切だ。
つまり、コーチングとは、自らが「考える力」を発揮することから入るのが基本となる。
フィッティングアドバイザーの育成もしかり、ティーチ(教える)とコーチ(自らがつかみ取れるよう訓練する)との使い分けが必要か? 講座への参加者は、自己課題を持つことが前提条件といえよう。
服を扱う全スタッフに目標(イメージ・ゴール)を定めさせ、現状を分析させてから、各店が定めるゴールや、顧客が求めておられる期待に応えられるよう、2級講座でも、安易なヘルプ(助ける)をせずに、サポート(ヒントを与えて支援)をしていきたいと願っている。
◇ 名フィッターはプロバイヤー
フィッティングアドバイザーが、日々の業務に自信がついた頃は、服の「名フィッター」となる。
前号でも記したが、レディスの2級講座に、男性社員を積極的に送りこんでいただくと、百貨店はさらにパワフルになろう。
かつて、業界新聞紙上で、フィッターの心得について書かせて頂いた。男女に関係なく推奨する理由を、「七つの心得」にまとめたものを以下に紹介させていただく。
ピン打ちの技術はピカ一、再お直しはめったにない。
素材の特性・物性にたけている上で、値を決める。
顧客カルテに、お買い上げ商品の、的確な補正箇所、および値を正確に記入できる能力がある。
フィッティング、ピン打ち時の、しぐさやセールストークが自信を持ってできる。
どんな体形・体型・体格、容貌、肌や髪、瞳の色の方に出会っても、たじろがない技術と知識を
身につけている。
映画の名衣装デザイナーのごとく、お客さまの最も美しいシルエットの値を見つけることができ、
ニーズに応じたスタイリングができる。
アフターフォロー、メンテナンスも忘れずに実践でき、定期的にグッドサイズのカルテを作れる
能力がある。
銑Г了訶世之,蟆爾欧討いと、基本のスキルが、いずれ売り場の管理職、バイヤー、販売促進などの職務で、大輪の花を咲かすことが期待できよう。
時として、外部から、このような提案は、「レベルが高すぎる」と言う声も聞かれる。
それらの声に対して、裏を返せば「理解度が低い」と、応酬させていただくこともある。
「プロの世界は甘くない!」
現場でお客さまのニーズにお応えしてきた結果、今までの「一連の課題や提案が生まれた」訳なのだから…。
◇ 三者のコミュニケーション
例えば、パンツの股下寸法直しが仕上がってきた場合、ご要望通りに調整されていないと、お客さまと、担当者、お直し場スタッフが、端ぎれを前に「直した」「直してない!」と、水掛け論になることが多々ある。
端ぎれの幅ほど、あてにならないものはない。直す人によって、布にハサミを1回入れるだけとは限らないからである。
レディスで多発している主因は、メンズのお直し伝票にあるような「股下何兢紊り」という項目がないからである。
本来「股下寸法は、絶対値」のはずである。
各百貨店のレディス売り場にある伝票欄のほとんどは「何儺佑瓠何兔个掘廚良週しかない。
かつては、レディスの伝票にも「股下何兢紊り」の項があった。
直しを「出す側」と、「する側」との双方共に、技能力のバラツキ(メジャーの持ち方が甘い・辛い。0僂僚佝点のブレ他)があるため、いつの頃からか「何儺佑瓠出し」にするのが無難という「方向性」に押されてしまったようだ。
現状の伝票を使用するに当たって、再お直しやクレームを未然に防止するためには、パンツなら「何儺佑瓠△發靴は出し…股下何兢紊り」と明記するのが好ましい。
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