第1回百貨店プロセールス資格制度の2級審査(筆記&実技)は、2月20日に東京会場で最終日を迎えた。
2級は大阪で3日間(2月2日~4日)、福岡では終日(2月6日のみ)、東京では4日間(16日~20日…18日は休み)と実施されたが、受験者の出来不出来や合否基準については、結果のとりまとめを待つことになる。初回ということもあって、いくつかの課題が浮上したのではないかと推測している。
1級の合格者には、ゴールドカードの認定証と金色の丸いバッジが、2級の合格者には、シルバーカードの認定証と銀色の丸いバッジが授与される。
2級の筆記テストの出題内容や、技術審査用に出題されたアイテム、採点基準、審査員の顔ぶれなどの詳細を記載したいところだが、筆者(2級の分校その一で講師を担当)は、審査執行の該当者でないため、審査終了直後の時点では、断片的な情報しか得られなかった。
◇ 広く認知されるには
今の時代は、接客スキルを学ぶ機会に恵まれている。
ふり返れば、百貨店で婦人服のイージーオーダーが全盛期だった頃、お渡し場で補正師を務め、その後紳士服の販売(メーカーからの派遣スタッフ)に携わり、かれこれ20年近くも百貨店にはお世話になった。
当時(70年代~)は、販売スキルを身につける格好の機会と言えば、優秀な先輩(社員、派遣を問わず)の背中を見て、彼ら彼女らのノウハウを、どん欲なまでに吸収することだった。
例えばセールストークは、「料理は舌で味を盗め」ならぬ、まさに「耳で名トークを盗め」の意気ごみで、言い回しやイントネーション、商品価値のさりげない伝え方のコツを吸収するために、先輩の一挙一動をも見逃さずに、耳をダンボ状態にしたものだ。
また、素材やアイテム知識で分からないことがあれば、人知れず本屋に飛び込んで、自らのお金で専門書を買い、勉強した仲間達も沢山いた。
あくまで私見だが、昨今の百貨店には、「華やぎ」が不足していると思う。
例えば、多くの百貨店が掲げているスローガンの一つに、お客さまから「ありがとう」と言って頂けるFAの育成がある。
かつては、お客さまから「おやつの差し入れをどのくらい頂けたか?」とか、「お食事のお招きをいただいたことが何回あるか?」などは、好かれているFA、業績を上げているFAのバロメーターとして、一つの目安になった。
そのような、お客さまからのアクションは、担当者を気に入ってくださったり、商品のお見立てをお手伝いした腕の良さ(センスなど)に感激してくださった時など、売り場でしばしば見られたシーンだった。
つまりご満足いただけたことを代弁している「非言語表現」の証として、商人冥利(あきんどみょうり)につきることだった。
バッジを胸に付けて、専門知識を並べ立てても、お越しくださるお客さまの多くは、お客さまの立場に立った「やすらぎ感と共感」、「豊かな話題といやしの空間」がなければ、モノ足りなさを感じられるであろう。
つまり、個々の購買目的やご要望にそって、プロとしてどこまで「May I help you?」の原点に立ち戻れるかが、「心の充足」といわれる今日、全スタッフにとって、リピートにつながるか否かの正念場ではないだろうか?
そこでおすすめは、3つの“り”想。新規の「ふら“り”客」が、「やっぱ“り”あの店へ」と再来店いただき、こちらの店の、誰それから、この品をと、「こだわ“り”客」になっていただくには、365日毎日が勉強日!
昨日、売り場に初めて立ったFAでも、「誠意とひたむき」さが感じられれば、接客応対が多少未熟であっても、お客さまの大半は、寛大に温かく見守ってくださるケースがいっぱいある。…「ハート」さえあれば、「瞳に優しさ」があれば、「指先に愛があれば」、たとえ言葉が通じない外国人のお客さまを相手にしても、かなりの部分までお互いを分かりあえるものなのである。
ところでフィッティングアドバイザー制度が、少しづつ浸透して行く過程では、予期せぬ質問や、整理をしなければならない項目も浮上してくるように思う。
例えば、以下のような 銑の課題など。
従来から活躍しているFA(ファッションアドバイザー)と、FA(フィッティングアドバイザー)との違いについて
の明確なガイドライン
スタイリストや、コーディネーターとの棲み分けについて
服のフィッターや、モデリスト・パタンナーと比較した場合の、技術力水準の設定レベル…他。
◇ 接客スキル向上の着眼点
その昔、百貨店は、人、モノ、空間、文化催事などあらゆる面で華やいでいた。
核家族化、少子化社会といった時代の移り変わりへの対応が背景にあるとはいえ、商品は効率重視で百花繚乱とは言えないから、選択肢が狭くなった。また「華のデパートガール」と言われた頃のように、「パッ」と花が咲いたような、お客さまを退屈させない「会話美人」や、「○○小町」と言われるスタッフが少なくなってきている。
「心・技・知」の研鑽後は、「売り場スタッフ・チャームアップ講座」が次なるおすすめの一つ!
ユーザーの一人として百貨店は、いつも「文化とハートの香り」がして、「ときめきのアロマ」が漂っていて欲しいと願っている。
坪効率が悪い商品でも「文化とアロマ」があれば並べておくことでマグネット力を発揮してくれるから、他の売り場へと流れたお客さまでも、別の商品を購入していただける可能性だってある。家族全員で来店されても、各々の欲しい物が揃っていれば時間のムダも省けよう。
一方、パーソンに関しては、商品の専門知識については長けているが、お客さまにとっては、どうでも良いような事まで説明をしたり、反対に本当に知りたがっていることに答えられないスタッフに出くわすことも多い。
例えば、ニット類の売り場。手に取られたセーターの編み地について、柄のデザイン名称(アーガイル・ノルディック・アランセーター)を知りたがっているお客さまに、「こちらは、平編みやパール編み…うんぬんという類のトークをしても、的のはずれた応対になってしまう。
また、紺のジャケットを試着されたお客さまに、「ベーシックな紺がお似合いですね!」では「感情表現」が乏しく説得力に欠ける。
「なぜ、どういう理由で、自分に映えるのか?」をきちんと伝達してもらうことで、顧客心理は「確信から購買決定へ」と傾くことになる。
素材を例にあげるなら、お客さまは、繊維組織(平織・綾織・朱子織)よりも、手にされた商品の物性・特性(手触りや、ハリ・コシ・落ち感)とか、クリーニングや洗濯の仕方、お手入れや保管の仕方に興味を示してくださるケースが多い。
近頃、プロ集団であるはずの現場スタッフが、暮らしに根ざした応対ができないことも増えている。
都内にある百貨店の家庭用品売り場でのエピソードだが、昨秋「ハロウィーンパーティ」向けのVMD演出用に、黄・橙・黒色の麻ナプキンを購入した。居合わせた二、三人のスタッフに、「ハロウィーンには、なぜ、この三色が多用されるのか分かる?」と問いかけたところ、他のメンバーからも「シラー」とした冷たい視線を浴びせられた。
閉店間際で、人影が少なかったので、Gケースの上で、おもむろにナプキンのたたみ方を三パターンほど披露したところ、皆の瞳が尊敬の眼差しに変わった。
この類の事例には事欠かないが、小物やアクセサリーを扱い、率先してスタイリング提案をしているにもかかわらず、欧米の老舗ブランド(例えばエルメスなど他)の多くが、スカーフの縁回りを、表側に巻き込んであることを知らないスタッフが多い。
いずれにせよ、信頼していただけるための、スキル向上の引き出しは沢山あるから、優先順位の見極めも検討課題と言えよう。
◇ 資格制度を開花させる次期課題
今号では、資格制度とプロの商人(あきんど)の関係にふれながら、ミクロな部分までの見解を記述させていただいている。
マクロな課題としては、各百貨店から研修に参加したメンバーの、年代、キャリア、実体験、実力にバラツキがあるという他講師の声を伝え聞いた。
私的なことではあるが、百貨店スタッフを対象にした服のフィッター関連の研修に関して、91年から旧FBS(ファッシヨビジネス振興財団)での、「サイズフィッター講座」を皮切りに、百貨店ごとの労組主催の講演や一日研修、社内認定研修で、「ボディフィッター」・「CSフィッター」・「衣料フィッター」・「フィッティングアドバイザー」・「ファッションフィッター」と、クライアントのご要望に添ったネーミングで講師をさせていただいてきた。…(社内認定に関しては、研修、育成審査員をはじめフィッター誕生・認定に至るまでを担当させていただいた百貨店は4社)
このような経験からも、百貨店によって、実力や理解度にバラツキがあることを垣間見てきた。
考えられる理由としては、
「研修慣れしているか?」
「研修後に、トレーニングスタッフがフォローしているか?」
「事前学習が、きちんとなされているか?」
「エレガンスゾーンか、カジュアル売り場か、といった売場特性による接客回数の頻度の違い」
「全社をあげての、取り組み姿勢にささえられているかの意識」などが上げられる。
また、教える側の責任としては、限りなく実体験を積み、参加者一人一人のウィークポイントをカバーできる、技能力を磨かなければならない。
いずれにせよ、ハサミや薬剤を使用する美容師や理容師と違って、衣服の販売は、「感性とソロバン」の世界だから、資格取得の前にも、「学ぶ」ことは山積みだ。
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2級は大阪で3日間(2月2日~4日)、福岡では終日(2月6日のみ)、東京では4日間(16日~20日…18日は休み)と実施されたが、受験者の出来不出来や合否基準については、結果のとりまとめを待つことになる。初回ということもあって、いくつかの課題が浮上したのではないかと推測している。
1級の合格者には、ゴールドカードの認定証と金色の丸いバッジが、2級の合格者には、シルバーカードの認定証と銀色の丸いバッジが授与される。
2級の筆記テストの出題内容や、技術審査用に出題されたアイテム、採点基準、審査員の顔ぶれなどの詳細を記載したいところだが、筆者(2級の分校その一で講師を担当)は、審査執行の該当者でないため、審査終了直後の時点では、断片的な情報しか得られなかった。
◇ 広く認知されるには
今の時代は、接客スキルを学ぶ機会に恵まれている。
ふり返れば、百貨店で婦人服のイージーオーダーが全盛期だった頃、お渡し場で補正師を務め、その後紳士服の販売(メーカーからの派遣スタッフ)に携わり、かれこれ20年近くも百貨店にはお世話になった。
当時(70年代~)は、販売スキルを身につける格好の機会と言えば、優秀な先輩(社員、派遣を問わず)の背中を見て、彼ら彼女らのノウハウを、どん欲なまでに吸収することだった。
例えばセールストークは、「料理は舌で味を盗め」ならぬ、まさに「耳で名トークを盗め」の意気ごみで、言い回しやイントネーション、商品価値のさりげない伝え方のコツを吸収するために、先輩の一挙一動をも見逃さずに、耳をダンボ状態にしたものだ。
また、素材やアイテム知識で分からないことがあれば、人知れず本屋に飛び込んで、自らのお金で専門書を買い、勉強した仲間達も沢山いた。
あくまで私見だが、昨今の百貨店には、「華やぎ」が不足していると思う。
例えば、多くの百貨店が掲げているスローガンの一つに、お客さまから「ありがとう」と言って頂けるFAの育成がある。
かつては、お客さまから「おやつの差し入れをどのくらい頂けたか?」とか、「お食事のお招きをいただいたことが何回あるか?」などは、好かれているFA、業績を上げているFAのバロメーターとして、一つの目安になった。
そのような、お客さまからのアクションは、担当者を気に入ってくださったり、商品のお見立てをお手伝いした腕の良さ(センスなど)に感激してくださった時など、売り場でしばしば見られたシーンだった。
つまりご満足いただけたことを代弁している「非言語表現」の証として、商人冥利(あきんどみょうり)につきることだった。
バッジを胸に付けて、専門知識を並べ立てても、お越しくださるお客さまの多くは、お客さまの立場に立った「やすらぎ感と共感」、「豊かな話題といやしの空間」がなければ、モノ足りなさを感じられるであろう。
つまり、個々の購買目的やご要望にそって、プロとしてどこまで「May I help you?」の原点に立ち戻れるかが、「心の充足」といわれる今日、全スタッフにとって、リピートにつながるか否かの正念場ではないだろうか?
そこでおすすめは、3つの“り”想。新規の「ふら“り”客」が、「やっぱ“り”あの店へ」と再来店いただき、こちらの店の、誰それから、この品をと、「こだわ“り”客」になっていただくには、365日毎日が勉強日!
昨日、売り場に初めて立ったFAでも、「誠意とひたむき」さが感じられれば、接客応対が多少未熟であっても、お客さまの大半は、寛大に温かく見守ってくださるケースがいっぱいある。…「ハート」さえあれば、「瞳に優しさ」があれば、「指先に愛があれば」、たとえ言葉が通じない外国人のお客さまを相手にしても、かなりの部分までお互いを分かりあえるものなのである。
ところでフィッティングアドバイザー制度が、少しづつ浸透して行く過程では、予期せぬ質問や、整理をしなければならない項目も浮上してくるように思う。
例えば、以下のような 銑の課題など。
従来から活躍しているFA(ファッションアドバイザー)と、FA(フィッティングアドバイザー)との違いについて
の明確なガイドライン
スタイリストや、コーディネーターとの棲み分けについて
服のフィッターや、モデリスト・パタンナーと比較した場合の、技術力水準の設定レベル…他。
◇ 接客スキル向上の着眼点
その昔、百貨店は、人、モノ、空間、文化催事などあらゆる面で華やいでいた。
核家族化、少子化社会といった時代の移り変わりへの対応が背景にあるとはいえ、商品は効率重視で百花繚乱とは言えないから、選択肢が狭くなった。また「華のデパートガール」と言われた頃のように、「パッ」と花が咲いたような、お客さまを退屈させない「会話美人」や、「○○小町」と言われるスタッフが少なくなってきている。
「心・技・知」の研鑽後は、「売り場スタッフ・チャームアップ講座」が次なるおすすめの一つ!
ユーザーの一人として百貨店は、いつも「文化とハートの香り」がして、「ときめきのアロマ」が漂っていて欲しいと願っている。
坪効率が悪い商品でも「文化とアロマ」があれば並べておくことでマグネット力を発揮してくれるから、他の売り場へと流れたお客さまでも、別の商品を購入していただける可能性だってある。家族全員で来店されても、各々の欲しい物が揃っていれば時間のムダも省けよう。
一方、パーソンに関しては、商品の専門知識については長けているが、お客さまにとっては、どうでも良いような事まで説明をしたり、反対に本当に知りたがっていることに答えられないスタッフに出くわすことも多い。
例えば、ニット類の売り場。手に取られたセーターの編み地について、柄のデザイン名称(アーガイル・ノルディック・アランセーター)を知りたがっているお客さまに、「こちらは、平編みやパール編み…うんぬんという類のトークをしても、的のはずれた応対になってしまう。
また、紺のジャケットを試着されたお客さまに、「ベーシックな紺がお似合いですね!」では「感情表現」が乏しく説得力に欠ける。
「なぜ、どういう理由で、自分に映えるのか?」をきちんと伝達してもらうことで、顧客心理は「確信から購買決定へ」と傾くことになる。
素材を例にあげるなら、お客さまは、繊維組織(平織・綾織・朱子織)よりも、手にされた商品の物性・特性(手触りや、ハリ・コシ・落ち感)とか、クリーニングや洗濯の仕方、お手入れや保管の仕方に興味を示してくださるケースが多い。
近頃、プロ集団であるはずの現場スタッフが、暮らしに根ざした応対ができないことも増えている。
都内にある百貨店の家庭用品売り場でのエピソードだが、昨秋「ハロウィーンパーティ」向けのVMD演出用に、黄・橙・黒色の麻ナプキンを購入した。居合わせた二、三人のスタッフに、「ハロウィーンには、なぜ、この三色が多用されるのか分かる?」と問いかけたところ、他のメンバーからも「シラー」とした冷たい視線を浴びせられた。
閉店間際で、人影が少なかったので、Gケースの上で、おもむろにナプキンのたたみ方を三パターンほど披露したところ、皆の瞳が尊敬の眼差しに変わった。
この類の事例には事欠かないが、小物やアクセサリーを扱い、率先してスタイリング提案をしているにもかかわらず、欧米の老舗ブランド(例えばエルメスなど他)の多くが、スカーフの縁回りを、表側に巻き込んであることを知らないスタッフが多い。
いずれにせよ、信頼していただけるための、スキル向上の引き出しは沢山あるから、優先順位の見極めも検討課題と言えよう。
◇ 資格制度を開花させる次期課題
今号では、資格制度とプロの商人(あきんど)の関係にふれながら、ミクロな部分までの見解を記述させていただいている。
マクロな課題としては、各百貨店から研修に参加したメンバーの、年代、キャリア、実体験、実力にバラツキがあるという他講師の声を伝え聞いた。
私的なことではあるが、百貨店スタッフを対象にした服のフィッター関連の研修に関して、91年から旧FBS(ファッシヨビジネス振興財団)での、「サイズフィッター講座」を皮切りに、百貨店ごとの労組主催の講演や一日研修、社内認定研修で、「ボディフィッター」・「CSフィッター」・「衣料フィッター」・「フィッティングアドバイザー」・「ファッションフィッター」と、クライアントのご要望に添ったネーミングで講師をさせていただいてきた。…(社内認定に関しては、研修、育成審査員をはじめフィッター誕生・認定に至るまでを担当させていただいた百貨店は4社)
このような経験からも、百貨店によって、実力や理解度にバラツキがあることを垣間見てきた。
考えられる理由としては、
「研修慣れしているか?」
「研修後に、トレーニングスタッフがフォローしているか?」
「事前学習が、きちんとなされているか?」
「エレガンスゾーンか、カジュアル売り場か、といった売場特性による接客回数の頻度の違い」
「全社をあげての、取り組み姿勢にささえられているかの意識」などが上げられる。
また、教える側の責任としては、限りなく実体験を積み、参加者一人一人のウィークポイントをカバーできる、技能力を磨かなければならない。
いずれにせよ、ハサミや薬剤を使用する美容師や理容師と違って、衣服の販売は、「感性とソロバン」の世界だから、資格取得の前にも、「学ぶ」ことは山積みだ。
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