年明けの1月に、第1回百貨店プロセールス資格制度1級の審査が、2月には、2級の筆記テストと実技審査が実施された。
 2級の筆記テストに関しては、資格制度がスタートして初の試みということで、筆記テストの内容は各分校(2級)の講師にも、公開されないというマル秘の体制で進められた。
 昨年度末の時点では、1級には20名、2級には、240名弱の応募者があり、後者は、大阪・福岡・東京の順に3つの会場で行われた。
 2級の合格ラインは、300点満点(筆記試験と実技審査の合計点)の70%にあたる、210点が目安に設定された。

◇ 2級講座に4社が参画

 今年度は、プロセールス資格制度の2級講座に、4社が加わり7講座となる。
 本誌の2月号で掲載した3講座の他に、キャリアQスクール(阪急グループ)・ディンプル(大丸グループ)・キャリアデザイン(伊勢丹グループ)・ミレニアムリテーリング(西武グループ)が参画することになっている。
 会員数が99社で280店舗(03年7月現在)で、7講座ということは、マクロな視点からは、参加者が受講しやすいというプラス面がある一方、各々の風通しを良くして、さらに中身の充実を図らなければ、講座内容の水準・専門性・精度の濃さその他、諸々の面で、新たな課題や、局面が生まれてこよう。

◇ 販売の達人に共通するもの

 「販売の達人」と呼ばれる人の多くは、ショッピングタイムを「居心地」の良い時間になるようプロデュースする能力に長けており、「対話」・「体話」に「華」がある。
 わが国に限らず、(社)パフォーマンス教育協会の全国大会に、アメリカから参加した会員(職業はイメージコンサルタント…企業もしくは、キーパーソンのイメージを確立させ広めるために、髪型から服装、パーソナルカラーなどを含めたスタイリングやアドバイスを手がける)に、そのような話をしたところ、「アメリカの小売業界でも、業績の良い百貨店や専門店には、カリスマ性のある販売スタッフがいて、彼ら彼女らへのファンがついている」と語ってくれた。
 ところが、素晴らしいFA(販売スタッフ)であっても、「買い手」と「売り手」とには相性というものがあって、その組み合わせパターンは、星の数ほどあるから、時には誠意を持って努めても相性が合わないことも出てきてしまう。
 したがって、資格の取得者も、他のFAも、「忘れられぬ店・売り場」、「忘れ得ぬFA」になることが、お客さまに支持される重点課題であるから、スタッフの「個性の輝くおもてなし」は、「心・技・知」をベースにウィットに富んだ、もしくはユーモアのある接客応対なら心強いことこの上ない。
 極端な例であるが、「医師免許」を持っているからといって、「手術」が上手とは限らないように、「資格」を取得したからといってイコール、「接客販売の達人」とはいかないから、お客さまとの出会いを重ねていく過程で、百人百様のお客さまの「心模様」が分かるようになることが肝心だ。
 「ハートを捉えるには?」、「ときめきのチャイムを沢山鳴らせるには?」のゴールを定め、良い答を出せるよう実体験を積む必要があろう。
 また近頃は、商品とサービスの同質化傾向も加速気味だから、プラスαの付加価値を添えることで、数年来、取りざたされているCSM(顧客満足経営)も、威力を発揮できることになろう。
 フィッティングアドバイザーの資格取得後は、時々立ち止まって、以下(1)~(5)のような項目をチェックされてはどうだろうか?
(1) 認定バッジを手に入れたら、販売業務を通して、人と人とをつなぐコミュニケーターになる。
(2) 「着心地」「居心地」「夢心地」の三拍子が盛り上がるよう、さらにベストな「おもてなし空間」をプロデュース
   する。
(3) 店や企業の代表選手として、他のメンバーに伝授し、チームワークの良い戦力強化を図る。
(4) 企業が研鑽(けんさん)を積んで努力している姿勢をアクティブにアピールする広報マンの意識を持つ。
(5) お客さまの事前期待に応えられるよう、次のステップの目標を掲げ、CS(顧客満足)の向上に努める。
 百貨店のFA(正社員・契約社員・メーカーからのパートナー)に対して、未だにお客さまからの事前期待は他業態より高い。
 どのFAに対しても、プロの応対が期待されているから、「フィッティング=試着」のアドバイスは、全スタッフができるものと、大多数のお客さまは思われておられるだろう!
 学んだことはすぐにでも、「点から線へ、そして立体的へと組み立てて」、熱いうちに現場で活かすことが、「結果」として、数字でビジュアルにはね返ってくることになる。

◇ ニーズ・ウォンツからシーズへ

 60年代~80年代の後半(各々順に戦後の復興期~高度成長期~安定成長期~成熟期)までは、お客さまの本音(顧客心理)を引き出すことや、ニーズ(物の欲求)・ウォンツ(心の欲求)・シーズ(目の前にない、これから芽生えるであろう欲求の種)を汲み取ることは、昨今に比べれば比較的容易にできた。
 しかし、だからと言って商品のすべてが楽に売れたというわけでもなかった。
 多くの百貨店が、今よりずっーと活気があった時代は、どこもお客さまであふれていたから、うっかり気をゆるめたり、油断でもしようものなら、まるで「ウサギとカメ」の話のごとく、売り上げが逆転したり、大きな差が出てしまったケースは沢山あった。
 目を見はるような大ヒットに巡り会うチャンスが少なくなった昨今はどうであろうか?
 斬新なアイデアを打ち出し、他店とは差別化された、独自の「MD・接客・空間演出」を展開することで、少々の遅れは充分に取り戻せる可能性もある。
 いずれにせよ、販売の「大変さとやりがい」は、昔も今もそう極端には変わっていない。
 顕著に変化したのは、新規客の場合、接客応対中に「ニーズやウォンツ、生活背景、年代」などを推測することが年々難しくなっていることだ。
 人々の価値観の変化が急速に進み、人それぞれによって、その枝葉が広がっているために、金をかける、もしくはかけたい対象も複雑化している。そのため、現場では、あらかじめ予測したシナリオのように接客対応が進まず、なかなか購買につながらない事態が発生し、また、臨機応変な対応ができないFAも増えている。
いかなるケースにもたじろがない「販売力」と「接客力」との双方をブラッシュアップすることは早急課題であり、プロは「接客力と販売力」を兼ね備えている。
 例えば、立地条件が良く、集客力のある店舗のFAなどは、さほどの苦労をせずに商品が売れることが多いために(目的買い客が大半)、接客力は平均点以上であるが、販売力が弱いことなど多々ある。
 そこでおすすは、「七気説の見直しとCSの精度アップ」!
 かつて「商いの三気説」と言えば、「天気」「景気」「ヤル気」だった。 その後、「根気」「負けん気」が加わり、「五気説」なるものがスローガンとして掲げられた時代があった。
 そこに、「才気…(商いの生き字引になること)」と「士気…(目的を同じにする仲間と組んでの協力体制)」を加えると結束力がさらに強くなる(94年に、自著「パワーアップCS販売術~服のボディフィッター入門~」チャネラー刊で発表)であろう。

◇ CS調査の実践

 一般に「CS=サービス」と、単純に捉えられていることが多い。…CS調査を、経営や、お客さまのためにフィードバックさせるには、企業や店によって、チェックリストの項目は100項目を優に越えることがある。
 もともとは、アメリカから持ち込まれたCS理論であるが、火付け役はジェイデイパワー社(アメリカ最大の調査会社)。
 アメリカで日本車の躍進がめざましいことに着目し、「なぜなのか?」を究明するために、商品(ブレーキの利き、ハンドリング、デザイン、外観など他)そのものに対する満足感の他、サービスやお買い上げ後の満足度にまでスポットを当て、2万5千人以上の人々に、100項目を越える質問に答えてもらった。
 それらの結果をもとに、CSI(顧客満足度指標)が作られ、わかりやすくビジュアル化した内容を81年から公表しつづけてきた。
 その後もCSIでナンバー1を獲得した車が、好成績を上げたことから、サービス経済社会における重要戦略として広まってきた。
 他にもCS志向が浸透した背景はいくつかある。
 CSが、わがが国のメディアに登場した直後(89年末~92年)のことだが、都内にある公的施設のリニューアルに先がけて、CSチームの一員として参加した。…リサーチから、アンケート用紙の作成、回収、インデックス作りと満足度の算出までを行った。
 以下は、某百貨店で実施した基本レベルのCS調査例である。(シューズショップの満足度は、100点中79点であった)
 ※ 調査例は、掲載誌をご覧ください。

Copyright(C) DOMINANT LIMITED All Right Reserved.
【無断転載使用不可】