パパの不倫相手とは
四十九日まで連絡を取っていた。
先に手を出したのはパパだから
最初は不倫相手を責めなかった。
だから慰謝料も請求しなかった。
パパの事を共有できる人が欲しい。
そんな思いで連絡を取っていた。
今思えば知らない方が
幸せだったんじゃないかと思う。
だけどパパの不倫が発覚しなかったら
私は間違いなく今生きていないと思う。
罪悪感とパパへの愛情が大きすぎて
間違いなく後を追って死んでいた。
だから不倫相手に感謝する部分がある。
不倫相手には２回会った。
パパの不倫が発覚した日と
相手がパパにプレゼントした物を返し
パパ預けたお金を返してもらった日。
不倫相手は正直可愛いとは言えない。
だけど直接不倫相手に会うと
何故か責める事が出来なくなってしまう。
おっとりしていてパパが好きそうな
本当にふわふわしたオーラの人。
鬱がある事もあり弱そうな人。
パパには気が強い私とは真逆なタイプ。
パパが私ではなく不倫相手に
溺れた理由が嫌でも分かってしまう。
それでもやっぱり
私は良い人間ではいられなかった。
不倫相手はパパの通夜にも参列し
住所と名前をしっかり書いて行った。
パパが死んだ1ヶ月後にある
不倫相手とパパが回るはずだった
会社の社員旅行のハワイにも行った。
私がパパの会社に行った時も
笑いながら普通に仕事をしていた。
パパが死んだのに
どうして何事もなかったかのように
普通に生活していられるの？
だってLINEでもいつも
パパと別れたら生きていけないとか
生きてる意味がないって言ってたよね？
ああ、そうか。
不倫相手は夢と現実の線引きが
ちゃんと出来ている人間なんだ。
夢から抜け出せなかったのはパパの方。
パパが死んだ意味は何だったの？
時間が経つにつれて
不倫相手への憎しみが湧き上がる。
パパが死んで行き場がなくなった
思いをLINEで不倫相手に送り続けた。
「パパは最初は遊びだったのに、あなたがパパを求めたからこんな事になった」
「パパが間違ってる事してるのに、あなたが無責任に綺麗事とか優しい言葉をかけ続けたからパパの頭がおかしくなった。どうしてパパが間違ってる事を言ってるのに否定してくれなかったの」
「あなたとパパの中学生並みの恋愛ごっこのせいで、1人の人間が死んで、家庭が壊された」
「パパが生きてたら喜んでパパをあなたにあげたのに」
「親になった事のないあなたと父親の自覚がないパパに、連れ回された息子の気持ち、自分が産んだ息子を不倫に利用された私の気持ちが分かる？」
不倫相手とパパのトークを見て
本当に頭がおかしくなりそうだった。
友達に自分の裸の写真を
送ってしまいました
出会い系の人と会おうとした
そんな気持ちの悪い不倫相手の言葉に
パパは本気で嫉妬していた。
普通の人間なら
この女は気持ち悪いって思うのに。
パパは本気で彼女に惹かれていた。
生々しくて気持ち悪いトークを見て
現実を受け入れるしかなかった。
本当にカップルごっこ。
恋愛がしたかった人達なんだと思う。
そうだとしてもパパも不倫相手も
社会人として仕事をしているし
ましてやお互いにも家庭がある。
何のために会社に行っていたのか。
家庭を持っている自覚はあったのか。
不倫相手に行き場のない
思いを沢山ぶつけているうちに
自分の事が嫌でたまらなくなった。
私がどんなに不倫相手を責めても
パパが戻ってくるわけではない。
生きていたとしても
パパの不倫が発覚した時点で
私はパパと離婚していたと思う。
そう思ったら無駄に思えてきた。
四十九日を終えてから
不倫相手に最後のLINEを送った。
沢山の憎しみの言葉を送った。
もし不倫相手が自分を責めて
死んでしまったとしたら
きっと私は今度こそ人殺しだった。
だから不倫相手と
連絡を断った事は私にとっても
前を向ける良い機会だったと思う。
不倫相手も言っていたけれど、
パパは不倫相手を守るために
死んだわけではないと思う。
パパは自分を守りたかった。
本当にそれだけだったと思う。
守りたい人がいたら死ねるはずがない。
不倫相手は、
別居中だった旦那さんと
離婚したという話を聞いた。
パパが生きてたら
今頃どうなっていたんだろう。
私と息子は捨てられていたのかな。
それとも騙し続けられていたかな。
悔しい。
自分が知らない間に
何かが始まって何かが終わっていた。
私は何もさせてもらえなかった。
今はただそんな
やり切れない思いばかり抱えている。