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目次:
- くすみピンクの本との出会い
- 本の内容
- フィッシュアンドチップス禁断症状が復活したので作った
くすみピンクの本との出会い
遡ること数ヶ月前、本屋の専門書コーナーで見かけた一冊の本。
くすみピンクのカバーに西洋画が一枚。
表紙の色合いに惹かれ、近付いてみる。
そこはイギリス関連の書籍が平積みされたコーナーでした。
装丁の雰囲気から、イギリス絵画あるいはイギリス史に関する書籍だろうと推測し、タイトルを読んでみると…
『フィッシュ・アンド・チップスの歴史』
思わず二度読みしたタイトル。
フィッシュ&チップス一本のテーマで、まるまる一冊の専門書が出版されていただなんて。
副題には『英国の食と移民』とある。
このテーマ、相当惹かれる。
フィッシュ&チップスの作り方や、ざっくりとした歴史、おすすめ店舗の情報、食レポ等を集めたような本であれば、買う気が全くないとまではいかなくても、ネット上に転がっている情報でも十分に満足できるものが多いため、読みたい本リストの優先順位としては低い。
しかし移民と絡めたフィッシュ&チップスの歴史とは興味深い。あまり意識してこなかったテーマ。
専門書ということもあり、お値段は2,640円とお高め。1ヶ月くらい気持ちを温めてから購入に踏み切った。
本の内容
この本の内容が一言でまとめられいると私が勝手に思う文章が本の中にあったので、そのまま書くと…
「フィッシュ・アンド・チップスは十九世紀にイギリス料理として誕生し、二十世紀の後半にはローストビーフさえも押しのけて、ナショナル・アイデンティティを象徴する食べ物になった。かつてはユダヤ人の食べものであるとして、その後は貧民の食べものであるとして、社会の住みに追いやられていたフィッシュ・アンド・チップスは、百年以上の時間をかけて中心まで移動してきたのである。」(pg.180)
抜粋した上記の文章が約200ページ分の本に引き伸ばされて印刷されたのが本書なので、この情報で満足した人は本を読まなくてもいいかもしれないし、この記事も読まなくていい。
もう少し詳しく知りたい方に、以下私なりのまとまっていないまとめを続けます。
今やイギリス料理のアイコン的存在フィッシュアンドチップス。
しかし元々は移民にルーツがある料理であり、それを広めたのもまた移民や、社会下層部の人々。
魚のフライは元々ユダヤ人の料理で、ユダヤ系移民に向けられた嫌悪感もあって、当時執筆された文書からはフライドフィッシュへの嫌悪感がひしひしと伝わる。
フライに使われる「生の魚」という食材に関しても、産業革命で漁業技術や交通の発達発展により近年になって広まったものに過ぎないという。
この本で、フライドフィッシュとチップス(フライドポテト)が一緒になった時期は明記されていない。
正確には、筆者自身がこれは分からないという言っている。
様々な文献を基にフィッシュ&チップスの歴史を一冊の本に書き上げた著者が分からないのだから、たぶん誰にもわからない。
それでも1800年代後半の時期にはフィッシュアンドチップス店がイギリス全土に広まった。
初期投資が安く済むことから、アメリカンドリームならぬフィッシュアンドチップスドリームを夢見て、移民だけでなく、イギリス社会の底辺層もこのビジネスに参入していった。(そして後にこのビジネスモデルを真似て、移民が経営するテイクアウェイ店(持ち帰り料理専門店)が増えていく。)
顧客ターゲットも同じく社会下層の人々。貧困と栄養不足が労働者たちの生活の特徴であったというこの時代に、調理にかかる手間や費用、燃料が不要で、数ペンスで家族全員の腹が満たされるフィッシュアンドチップスという料理は重宝された。
フィッシュアンドチップスビジネスは順調に広がり、1900年代にピークを迎える。
店の数はイギリス全土で2万5千軒にまで広がり、今現在利用できるフィッシュアンドチップスと類似した基本的な店の要素はこの時期に完成したらしい。
1900年代のある年(おそらく1921年)にイギリスで消費された魚のうち25%はフィッシュアンドチップス店で消費されたもので、ジャガイモの15%はチップスとして消費された。(ちなみにある地域ではジャガイモの69%がチップスとして消費されたらしい。)
やがてこの料理がイギリス国外へと輸出される時期を迎えると、それが「イギリス料理」としてのアイデンティティを持って伝えられ、広まった。
フィッシュアンドチップス禁断症状が復活したので作った
と、まあこんな本を読んで、2年ぶりにフィッシュ&チップス禁断症状が出ました。
イギリスにいた時は、寮の目の前がフィッシュ&チップス店だったので、週一で食べたくなり、それを我慢して月一に抑えていたんです。
渡英経験のある方は、一度は周りから、「イギリス料理って美味しいの?」という質問をぶつけられたことがあるでしょう。
その質問に皆さんがどう答えているのか気になるところですが、私はいつも「イギリス料理が不味い美味しいじゃなくて、店と作り手による。美味しいところのはめっちゃ美味しいし、まずいところのはまずい。」と答えています。
うまく作られたフィッシュ&チップスは、白身魚の一番好きな食べ方かもしれません。
衣に包まれたお魚がとろとろふわふわ臭みがなくって、周りはサクサクっと軽くて、油の匂いまで癖になるのです。
下手なやつだと、魚がボソボソに乾燥してて、魚の味が無で、油臭くて、衣はシナシナ粉っぽい味がするんですけどね。
大きな鱈の身に、ビール入りのどろっどろのバッター液を纏わせて黄金色に揚げて、グリンピースを塩で湯掻いてバターと塩胡椒を絡めて味を整えて(マシーピーにはしなかった)、芋も揚げて、ミントとレモンを添えて、頂きました。
サクサクふわふわとろとろのフライドフィッシュに仕上がったので大成功でした。
食後に胃もたれはしましたが、デザートのバニラアイスに新鮮なレモンをぎゅーっと絞って食べたら治りました。
ちなみに載せた写真たちは2回戦目のもの。
本を読んでフィッシュアンドチップス禁断症状が出て真っ先に作ったフィッシュ&チップスは主に色合いを拗らせています。
フライドフィッシュの濃いきつね色、太く揚がった黄金色のジャガイモ、グリーンピースの緑。
これが揃わなくちゃ、フィッシュアンドチップスを食べた気がしませんね。