用事があり、久しぶりに蔵前へ。

蔵前を巡った日には、幾度となく記事にしていますが、けっしてご近所ではありません。

おでかけするなら、新規開拓するよりも、慣れた場所でぼんやりする時間が好き。忙しないところも苦手。

渋谷・表参道・新宿・池袋等も近所ではないものの、遊びの約束などがあると向かいます。回数でいうと蔵前よりもずっと多く足を運んでいますが、一向に慣れた場所になりません。

都内で好きな場所は東京駅周辺の丸の内、大手町、銀座、日本橋辺り。あのあたりは、落ち着きがありつつ、見て回る店も多いので、安心感とワクワク感を両方味わえます

街並みは変わりますが、安心感とワクワク感を両方味わえるという意味で、蔵前も少し似ている。

落ち着いているけど、見て回る店は多い。

人の熱気が恋しくなれば、少し歩いて、浅草の賑わいを感じにいくこともできる。






蔵前に寄った日には、訪れたい、『菓子屋シノノメ』さん。


※こちらは以前(2020年1月18日)撮った写真です




右から時計周りに、ラムレーズンのショートブレッドジャスミン茶のパウンドケーキ、そしてバタースコッチスコーン

平日の昼過ぎに伺ったからか、まだお菓子が沢山置かれていて、カウンターはよりどりみどり状態でした。






プリッとしたラムレーズンが少し入ったショートブレッドは、サクッとほろっと、甘すぎず、硬すぎず、私の好きなタイプのショートブレッドに近い。

ジャスミン茶の香りが爽やかで心地よいパウンドケーキは、甘さ控えめで、食べやすい。イギリスのモイスト(日本の”しっとり”よりもずっとしっとり。絞ればじゅわりと砂糖水が滴りそうなしっとり加減)なケーキに慣れた私には少しぱさつきを感じましたが、日本のケーキのしっとりはこのくらいだと思い出しました。こういうケーキもとっても美味しいですよね。

バタースコッチスコーンは良い香りがしますが、冷凍したのでまだ食べていません。食べたら追記するか、別で記事にするか、スコーンガチ勢としてレビューをどこかにおいておきます。














さて、蔵前に出向き、約束の時間まで1時間ほどあったので、ひとまず喫茶店に入りました。


暖房の効いた場所で、座ってコーヒーを飲めるのならどこでもよかったので、キーコーヒーの青い看板が出ていた店の戸を開けました。

日当たりの加減で外の方がずっと明るく、中の様子は全く見えないガラス張りの店。木製の扉をギーっと開けると、頭に描いていた雰囲気とは違う感じ。

お店の内装もその香りも、古い民家のそれ。

ニスが塗られたようにつやっとした飴色の木製テーブル。椅子には、古びた座布団が布紐で結びつけられています。新聞が置いてあって、テレビからワイドショーの音が聴こえてくる。

ふわりと煙の匂いが顔にかかる。
そうだ、昔ながらの喫茶店は喫煙可能なお店が多いんだったとちょっと後悔するも、引き返しにくい。

店内のお客様の視線が、扉を開けていろいろ察した私に一斉に集まる。お客様は全員常連風。

店に入っても、店員さんからの言葉がない。
どうしたものかと案内されるまで黙っていると、「ごめん、聞こえない。」と、声を掛けてもらえました。

聞こえないのは、当然。
私は何も言っていなかったのだから。

そうか、自分で席を見つけて座るタイプの店だ、と判断し、一番近くにある椅子に腰掛けました。

すぐにお水を持ったおば様がやってきます。
「何にしますか〜?」

何…?メニューメニューと見渡すも、どこにもメニューがない。あ、これはメニューがないタイプのお店なのかもしれない。

「喫茶店ならコーヒーはあるはずだ。」と、「コーヒーありますか?あったかいのお願いします。」とだけ言いました。

ブレンドね〜と言って、しばらくして出されたコーヒー。

これが美味しかったです。

私はコーヒーの細かい差については語れないけれど、美味しいか不味い(好みでない)かには敏感です。不味い(好みでない)コーヒーは飲みきれない。

頂いたコーヒーは美味しいコーヒーでした。

入りにくいと思った喫茶店でしたが、すぐに落ち着いてしまった。

iPadで雑誌を読みながら、美味しいコーヒーを啜る。寒さに凍えていたので、コーヒーのカップで手先を温める。

常連と思われるお客様たちと会話するおばさま。途中で工事のお兄さんが入ってきて、内輪話を大声で始める。テレビの音も相変わらず聞こえる。

全てがどこか心地よい。
私はどこからどう見ても余所者で、店に馴染んでいるような気はしなかったけど、それでも心地よかったです。

約束の時間が近づいたので、店を出る支度をする。
コーヒーの値段もわからないので、「すみません、ご馳走様で〜す!」と声をあげ、「コーヒーおいくらですか〜?」と聞く。

コーヒーは420円でした。

お金を渡す私に、店主らしきおば様が「どこから来たの?」と聞いてくださる。地元の駅の名前や、今回蔵前まで来た理由を伝えると、「そうかあ!じゃあがんばってね〜!」とあたたかく送り出してくれました。

なんだかもうすでにあのコーヒー屋さんに行きたい。お店の名前は覚えていないし、場所は覚えているのに、Googleマップ上では見つからない、あのお店へ。









用事を済ませた昼過ぎ、今度は昼食を取るため通りかかった店に入りました。



庭食 柊さん。


これまた座席までの案内や、席にメニュー表がないお店。

数時間前の経験で勝手がわかったので、挙動不審にはもうならない。

席に腰掛け、幸い外に貼り出されていたランチメニューを読んでいたので、「ぶりの照り焼きお願いします。」と言いました。内心、おっ私スムーズにいけてる、と思いながら。

ぶりの照り焼き、ひじき煮、きんぴら風のなにか、きゅうりの漬物、ごはん、味噌汁、

スーパーのお惣菜とも、一流料理店とも違う、家庭料理の味。

こういうお店が職場の近くにあったら、昼休憩で通ってしまいそうです。

周りのお客様の様子を見ていると、会計の際には、注文したメニューを口頭で伝えて、お会計をするようす。伝票はない。

最後は私もそれに倣って、「ぶりの照り焼きいただきました。」と伝えてお会計してもらいました。






入りにくいのに、落ち着いてしまう蔵前。

やっぱり、東京駅周辺の雰囲気と同じものを感じる。

大都会、渋谷・表参道・新宿・池袋は、街に入ってくる人達を誰ひとり拒まない。にも関わらず、一向に落ち着かない。誰も拒まない街だけど、誰も本当には受け入れてくれないように感じてしまう。

じゃあそれが、誰にも当てはまる、普遍的な街の性格かというと、そうでもない。

身分相応という言葉があるけど、なにが身分相応なのかは、自分が選び決めるものだと思います。

私は私が勝手に、大都会を私に合わないと決めている、ただそれだけのこと。

自分に合うものは、自分で決めていいと、私は思っています。

ケミオさんは、「どこまでいっても渋谷は日本の東京」と言っていたなあと、ふと思い出しました。