その8
学校に着くのは結構はやい。もちろんクラス内では1番乗りだ。
いつも職員室に行って、鍵を取って、そしてドアを開けて朝イチの教室の空気を吸う。
誰もいない教室の雰囲気が僕は大好きだ。
今日もいつものように職員室に向かう。
用務員のおじさん、事務の女の先生。すべてがいつもの通りだった。
「あれ・・・・」
職員室に入ってカギ置き場に行くと、いつもあるはずのカギがなかった。
「僕より先に誰か来たんだろうか。」
僕は駆け足で教室に向かった。
いつもの教室へ向かう長い廊下の曲がり角を曲がると、やっぱり僕の勘は的中した。
そこには、いつもとは違う「明るい」教室があった。
「やっぱり誰かいる。誰だろう・・・」
他には生徒もいない、静まり返った廊下。いくら朝とはいえ少し怖い。
胸の高鳴りがしっかりと聞こえる程だ。
少しずつ、教室に近づくにつれて、不安が興味に変わってくるような気がした。
こんな朝から何やってるんだか。
ドアの前で思いっきり深呼吸して、思いっきりドアを開けてみた。
「よ!」
「あ・・・あぁ。」
声の主は同じクラスの川内だった。
ちょっとした驚きとちょっとした失望感。
なんだ、こいつか。
ちぇっ。女の子ならよかったのにな。
そう思いつつ、机に座ってカリカリしている川内の顔を見て、僕は思いっきり吹き出してしまった。
黒縁めがねに「必勝」の鉢巻き。
今はもうどうしたかわからないけれど、昔のアニメの「ベンゾー」さんになっていた。
それが可笑しくてたまらなくて、いつもはあんまりしゃべらない川内に話しかけてみたくなった。
「よう!川内。なぁ、なんでこんな早く学校きてんだ?」
「ひゃ。わぁ。」
近づきながら僕が話しかけるないなや、川内は驚いたように、意味不明の言葉を発して、机の上にあった本をしまいだした。
明らかにあせっている。
「なんだよ川内!なにこそこそしてんだよ!」
「へ?な・・・なんでも・・・ないよ」
いつも堂々とした川内の足ががたがた震えている。
クラスでもなかなかのイケメンだった川内の変わりよう、そしてこの隠し事。
なんなんだ?
川内に対する疑念がわいてきた。