2018年3月期のバランスシートにおいて、
出光興産の純負債資本倍率が
1倍未満になる可能性が高い、
と1月5日の日経朝刊で
報じられていました。
昨年7月の公募増資と、
業績好調で余剰資金が
潤沢に有ることによる
有利子負債の圧縮といった
2つの主な理由が、
財務安全性の向上を
後押ししているようです。
ここで基礎知識です。
【純負債資本倍率】======
(ネットDEレシオ)
D(Debt:負債)をE(Equity)で
割った数値です。
計算式
「純負債(D)÷資本(E)」
===============
負債を何にするか、および
資本を何にするかで、
計算する人により
多少違いが出ますが、
ここでは出光興産の計算例を
参考に話を進めます。
そこで、まず純負債について、
「有利子負債-現金預金」
とここでは定義することにします。
※出光興産の有価証券報告書を見ると、
純負債=有利子負債-現預金および短期運用有価証券
となっていますが、バランスシート上は短期運用有価証券
が表示されていないため、影響は少ないと仮定して
今回の計算では控除しないこととしています。
また、この場合の資本は
「純資産-非支配株主持分」
と定義することにします。
(純資産のうち、親会社に帰属する部分)
以上の前提で、
2017年3月期の
出光興産のネットDEレシオを
計算してみました。
1.純有利子負債
357,566+104,005+10,000+55,000+
-91,423=959,263百万円
2.資本
619,932-36,132=583,800百万円
3.ネットDEレシオ
959,263÷583,800≒1.6431…
新聞報道の「前期末は1.65倍だった」
という記事内容にほぼ近い結果が得られました。
これが、2017年7月における
約1200億円の公募増資の影響などもあって、
年度末に1倍を下回る公算だというのですから、
すごい変化です。
1.6倍から1.0倍以下への
変動は、大きいですね。
仮に、単純な計算として、
1200億円が資本に加算されると同時に、
そこから全額返済が行われたと
想定してネット負債から控除されたら、
次のようになります。
(959,263-120,000)÷(583,800+
=839,263÷703,800=1.1924…
まだ1倍を下回りません。
これにさらに、業績向上の効果を見込んでの
1倍未満ということになりますね。
これは相当な財務体質の変動です。
出光興産といえば、
昨年の公募増資に関連して
創業家の法的対抗措置が話題になりました。
いろいろな意味で、今後の出光興産の
決算は、注目を集めそうですね。