日本製紙、資産売却で資金捻出とROA改善(日経15*8*19*15) | 会計知識、簿記3級・2級・1級を短期間でマスター【朝4時起き活動のススメ】

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日経新聞の報道によりますと、
日本製紙が2018年3月期までに資産売却で
800億円前後の資金を捻出する予定だそうです。

ここまでの資産売却が順調に進んでいるために、
従来の目標であった約500億円からさらに金額を上積みする
方針とのこと。

そのなかには、持ち合い株として保有している資産も
売却処分の対象となるようで、売却によって得た資金は
M&Aの目的で投下し、資産効率を高める狙いがあります。


持ち合い株など、余剰資産を売却することで、得た資金を
将来有望な投資案件にどんどん振り向け、収益性を高める
ことができれば、それは会社にとっても株主にとっても
歓迎すべきことですね。

なお、財務分析の理論上、
会社の総資産の有効活用度をトータル的に判断する指標として、
ROA(総資産利益率)があります。

英語で「Return On Assets」といいます。

一般的によく用いられる計算式は次のとおりです。

ROA=(経常利益+支払利息)÷(平均総資産)



日本製紙は、この値が2015年3月期で2.2%だったのを、
2018年3月期には3.7%にまで高めたいという
以降があるそうですね。


ところで、ROAの計算式のうち、
経常利益というのは、損益計算書の利益のうち、

本業で得た利益(営業利益)に
本業以外の活動(営業外活動)で得た収益を足し、
本業以外の活動(営業外活動)でかかった費用を引いて
求められた利益です。

会社の総合的な稼ぐ力を示す利益ですね。

営業外活動の代表例は資産運用や資金調達などの
財務活動です。
そのほかにも、自販機を設置して得た
飲料水の販売に伴う副業の収入とか、
販売活動以外の費用(雑損失)など、
いろいろあります。

ここで、ROAの算定上、なぜ
経常利益に支払利息を足すのかについての
説明はあとに譲るとしまして、
まずは計算式の分母に当たる平均総資産の意味を
考えます。

平均総資産=(期首の総資産+期末の総資産)÷2

資産は、一年を通じて少しずつ増えていきます。
いっぽうで、利益も一年を通じて少しずつ増えていきます。
ということは、当期のはじめの方の利益は期首の資産から
生まれており、そこから利益の分も含めて総資産が膨らんで
いき、期末に近い総資産からは期末に近い利益が生み出されます。

このように、分母を単純に期末の総資産としてしまうと、
実態からかけ離れてしまうので、より正確にROAを
求めるには、期首と期末の平均総資産によるほうが
より妥当だろう、という考えがあるのですね。


いっぽう、分子の経常利益に支払利息をたす理由は次の通りです。


総資産の調達方法として、負債で調達する方法と純資産(資本金や
利益)で調達する方法がありますが、ケースバイケースで
負債の割合が多くなったり純資産の割合あが大きくなったり、
全ての企業が同じじょうきょうであることは考えられません。

そのようなときに、負債が多い会社は支払利息が大きくなり、
負債が少ない会社は支払利息が小さくなるので、
同じ収益力の会社であっても、負債の比率で経常利益の額が
影響を受け、ROAの計算結果が変わってくるのは分析上
望ましくない、という発想があるのです。

事例で説明しましょう。

(事例1)総資産1000=負債200+資本800の
バランスシートの会社があるとします。
負債100がすべて借入金だとして、借入利率が年5%ならば、
年間の支払利息は200×0.05=10となります。

当期の営業利益が100、支払利息以外の営業外損益が+10
だとすると、当期の経常利益は次のようになります。


(損益計算書)
**:
営業利益100
支払利息△10
その他**10
-------
経常利益100

ROA=100÷1000=10%と計算できます。

つぎに、事例2をご覧ください。


(事例2)総資産1000=負債800+資本200の
バランスシートの会社があるとします。
負債100がすべて借入金だとして、借入利率が年5%ならば、
年間の支払利息は800×0.05=40となります。

当期の営業利益が100、支払利息以外の営業外損益が+10
だとすると、当期の経常利益は次のようになります。


(損益計算書)
**:
営業利益100
支払利息△40
その他**10
-------
経常利益*70

ROA=70÷1000=7%と計算できます。



以上を見てもわかるとおり、
借り入れが多い方が支払利息の負担が大きくなるため、
資金調達方法の違いでROAの計算結果にズレが出るのは
うまくないだろう、ということから、経常利益に
支払利息を足し戻してROAの計算を行うのです。


そのように計算すると、
上記の事例1および事例2はいずれもROAが
11%となるのがわかりますね。

(事例1)(100+10)÷1000=11%

(事例2)(70+40)÷1000=11%



今回は、少し専門的な立場におけるROAの計算方法を
ご紹介しました。


難しいと感じたならば、経常利益をそのまま使って
ROAを求めることもあるので、そのような計算方法で
比較分析してもOKです。

要は、一貫性を持って分析をすることが大事なのですね。


以上、ROAに関する話題でした。



柴山政行