IFRS移行で純利益が増加?(日経14*9*14*17) | 会計知識、簿記3級・2級・1級を短期間でマスター【朝4時起き活動のススメ】

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IFRS移行で純利益が増加?(日経14*9*14*17)

国際会計基準(IFRS)への移行に伴って、
純利益が増加しているケースが複数でています。

新聞記事に掲載されていた事例をご紹介しますと、
富士通300億円プラス、
コニカミノルタ120億円プラス、
LIXILグループ70億円プラス、
ファーストリテイリング40億円プラス、
日本取引所35億円プラス、
などです。


ここで、新聞でも挙げられているとおり、
日本基準とIFRSでは、いくつかの点で大きく
会計処理実務が異なります。

その代表例として、
のれんの償却の要否と有形固定資産の
減価償却方法があります。

1.のれんの償却
(1)日本基準・・・20年以内の期間で償却。
(2)国際基準・・・償却しない。

2.有形固定資産の減価償却
(1)日本基準・・・多くの資産で定率法を適用
(2)国際基準・・・多くの資産で定額法を適用


コニカミノルタの2015年3月期は、
日本基準に比べIFRSへの移行により
120億円の利益増加を見込んでいますが、
そのうち100億円はのれんの償却がなくなることに
よる、とされています。

のこる20億円は、工場など固定資産の減価償却方法を
現在の定率法から定額法に変更する影響だそうです。


ここで、「え?IFRSでは固定資産の減価償却方法を
定額法とすべき、みたいな規定があるの?」
と考えてしまう人が出てくるかもしれません。


しかし実は、基本的な減価償却に対する考え方は
日本基準とIFRSで違いはないのです。

所有する固定資産の経済的実態に即して、
その資産の取得に要した支出=取得原価から
残存価額(処分時の予想売却価値)を控除し、
耐用年数にわたって一定の計算方法で
費用化していく、というコンセプトに差異はないのですね。

日本基準とIFRSが異なるのは、
基本ルールではなく、実際の運用面においてなのです。


具体的には、日本の会計実務上、次の規定が大きな
影響を与えています。

監査・保証実務委員会報告第81号「減価償却に関する当面の
監査上の取扱い」です。

従来より、日本の会計実務は、税法で規定されている償却方法
や耐用年数を慣習として用いてきていました。
ほんとうの会社の現場で起こっている設備の老朽化の実態とは
あまり関連性がない、と思われるケースであっても、
外形上、税法の基準に従っておけばとりあえずお上からは
おとがめがないし、これでいっとこうか、みたいな感じですね。

そして、平成19年4月には、いわゆる250%定率法などの
ように、どう見ても企業の節税支援であろう、という会計理論
より経済政策を優先させた償却ルールの大改正がありました。
その流れを今もくんでいます。
で、平成19年4月の償却ルール大変更を機に公表されたのが
この監査・保証実務委員会報告第81号だというわけですね。

これによると、「3 監査上の取扱い 23.24.」のところで、
次のように書かれています。

「23.耐用年数及び残存価額に関しては、本来であれば
各企業が独自の状況を考慮して自主的に決定すべきものである。

したがって、資産を取得する際には、原則として
適切な耐用年数及び残存価額を見積もり、当該見積りに従って
毎期規則的に減価償却を実施することが必要である。

24.しかしながら、多くの企業が法人税法に定められた
耐用年数を用いており、また同様に残存価額の設定についても、
多くの企業が法人税法の規定に従っているのが現状である。
このような事情に鑑み、法人税法に規定する普通償却限度額
(耐用年数の短縮による場合及び通常の使用時間を超えて
使用する場合の増加償却額を含む。以下、同じ。)を
正規の減価償却費として処理する場合においては、
企業の状況に照らし、耐用年数又は残存価額に不合理と
認められる事情のない限り、当面、監査上妥当なものとして
取り扱うことができる。」


このような規定があるため、「不合理と認められる事情」の
ハードルを各企業が高く解釈して、じつは相当な償却費の
差が定額法とのあいだに存在するにもかかわらず、日本では
定率法の実施をしている、という現状があるのですね。

ほぼ節税対策という感じです。

だから、私は最近の財務分析では、新規設備投資が多い年
などは、減価償却費の額があてにならないほど多くなるので、
決算書を定額法などに調整してから分析することもあります。

だって、定額法の方がまだ各期平準化して比較しやすいんですもの。



ちなみに、IFRSでは、日本における委員会報告のような考えを
とらず、あくまで実態として定率法のような経済的状況が
あるなら定率法を採用するだろうし、経済的実態を
反映する見積を行うならば、定額法だよね、という考え方を
採る場合とがニュートラルにあるはずだ、と考えられます。

このようなことから、IFRSでは、多くの場合「定率法を採用している
根拠はこれこれです」という説明がしずらい、という面もあって、
定額法の採用になっていると考えられます。

定額法は毎期一定の減価償却費なので、
直感的なイメージとしても、なんか固定資産の価値減少のプロセスと
マッチしていると考えやすいのでしょうね。

以上、IFRSに移行することで利益が一時的にもアップすることが
ありえますよ、というお話でした。



柴山政行