会計士合格者11%減は憂慮すべき事態か?(日経12*
日経新聞17面で、
1347人と報じられました。
会計士5万人構想を打ち立てて鼻息の荒かった2006年前後の年
最小の合格者数ということです。
ちなみに、私が受検していた1990年前後は、500人~
だったので、当時からすると、今の合格者数も「多いなあ」という
気がしますが…。
今の会計士が活躍できるフィールドを考えると、
あきらかに毎年1000人超は供給過剰ですよね。
じつをいうと、学生から社会経験なしに受かった
会計士合格者って、あんがい使いずらいことがあるんです。
(私も新人時代はそうだったかも…)
そのほか、昔は「組織で働けないから、将来が安定しているから、
あるいは人に会うのが苦手だから会計士に…」
なんて動機で目指す人も身近にいました。
ちょっと人生の守りに入った志望動機ですね…。
ところで、2006年前後といえば内部統制バブルと、
いずれやってくるときたいされていた国際会計基準の
2次バブル期待で、「会計士はもっと必要になる!」
という幻想が世間を覆っていました。
あのころは、実は年間10%以上の株価上昇率がつづいたり
して、景気も良かったんです。
加えて今では、会計士試験で経済学が選択科目になってせいで、
ほとんど経済学のイロハを知らない状態で会計士資格を取る方も
増えているのではないかと想像しています。
個人的には、せめて「マクロ経済の入門」と「民法入門」くらいは
会計専門家として必須科目と思いますが。
マクロ経済の基本だけでも知っていたほうが、日経新聞、
より理解しやすいと思います。
アメリカの会計士が30万人だから日本も…
と思っているんでしょうが、そもそも国の背景や文化や
人口構成やらが全然違うんです。
同じ土俵で「少ない!」と断じる方が間違っている。
今の試験制度で生み出される会計士に対するニーズは、
基本的に監査法人以外では大きな期待をもてきません。
あとは個人の資質で、努力によって「コンサルタント」、
「セミナー講師」、「個人事務所」、「会社経営」、
「企業内の財務担当管理職」などとして
独力で道を切り開くのがとりうる手段です。
でも、以上の事が独力でできる方は、そもそも
会計士をとらなくてもご自身で飯の種を見つけられます。
つまり、「少なくとも現行制度下の資格試験をよりどころにする会計士」は、
余らざるを得ない社会状況なんですね。
これは、90年代前半における5年間の監査法人勤務で、
すでに将来予測としてわたしの頭の中にありました。
21世紀はじめになって、
期待された内部統制ニーズやIFRS導入の恩恵が
見込み通りにいかなかったこと、景気が予想よりも
早いペースで後退していることなどを勘案すると、
年間500~700人くらいの合格者で、ちょうど
会計士のブランド価値を高めながら、バランスのいい
需給関係を維持できるのではないでしょうか。
つまり、今年の合格者でもまだ「倍くらい多いかな」
というのがわたしの感覚です。
でなければ、これからの会計士に、社会の過当競争を
生き抜くという資質を問われていなかった以上、
ブランド維持と今後の資格取得者に仕事獲得面での困難が
生じるのは自明です。
そういえば、弁護士業界のほうで、最近興味深い
事件がありましたね。
http://mainichi.jp/select/
<詐欺容疑で逮捕された弁護士のニュース>
毎日新聞の上記記事を見ると、
その背景には、司法制度改革で10年前の1.7倍、
3万人強に弁護士の数が増加したことが背景にある
ようです。
会計士業界でも、対岸の火事とは決して言えないと思います。
ところで、今、将来の会計専門職を目指す方からの相談に、
次のように回答するようにしています。
「昔は税理士と会計士のど力を目指すとき、会計士の方を勧めたけど、
今は、さいしょから税法に特化した税理士の方が、働きながら
受かりやすいし、個人事務所でどぶ板の実務も身に着くし、
つぶしがきいてお勧めかもしれませんよ」
というようにしています。
今の時代に、もしもわたしが20代後半から会計専門家を
目指すとしたら…。
堅実路線ならば税理士、コンサルタント系などで一旗あげようという
野心を持つならば会計士、というようにその時点での人生の
目標に応じて使い分けて考えたと思います。
今、税理士と会計士は、将来性という意味ではイーブンの
資格だと個人的には思っていますよ。
要は、将来、自分がどのような会計専門家としての立ち位置を
もつか、ということですよね。
あくまでも「現在の日本における制度状況を前提」とするならば、ですが、
今、
日商簿記1級や税理士試験の合格の方が、
機動的につぶしがきくかもしれません。
柴山政行