右肺に胸水が溜まり、胸膜癒着術を実施しましたので報告します。

1.経過
 2014年3月からの経口抗がん剤治療中に胸水の増減が生じました。
 抗がん剤を実施すると増える、休薬すると減るの繰り返し。
 薬剤反応と思われたため様子を見ながら継続していましたが、
 2015年2月、水位が下がらなくなったため、CT。
 無気肺(図参照)が生じるほど肺を圧迫していたため、先ずは水を抜くことに。


2.胸水穿刺(水抜き)
 2015年3月23日から27日まで入院し、胸水穿刺。
 24日に1.8L排水。一度に多く抜きすぎたせいか肺水腫を起こし、
 酸素飽和度70%まで低下。数時間安静後回復。
 肺内(肺水腫)に溜まった水は翌日自然に抜けたので、
 26日に0.8L胸水排水。翌日問題なく退院。
 細胞診の結果は陰性。

3.経過観察
 4月6日、13日外来で、徐々に胸水の水位が上がるのが確認される。
 息苦しさも治療以前と同等レベルになったので、13日に緊急入院。
 当日ドレーン留置。(呼吸困難。歩いて帰宅するのはムリなレベル。)

4.胸膜癒着術
 前回の肺水腫のこともあるので、一週間程度時間をかけて排水(図参照)。
 結局5L近く抜いてやっと1日150cc以下のレベルに落ち着く。
 吸引を開始すると再度排水量は増加。3日目にやっと落ち着いてきたので
 癒着術を実施。薬剤はピシバニール。

 胸膜癒着術については下記リンク等を参照
 呼吸器内科医:胸膜癒着術
 PS不良患者に対する胸膜癒着術の治療実態
 (亀田総合病院呼吸器内科)


 胸腔ドレナージ(水抜き)の感想としては、とにかく「怠い」。
 無気肺があるうえ、胸水に圧迫されていた領域は肺胞が機能しない
 らしく(界面活性剤が復帰すれば回復するらしい)、呼吸が一気に
 ラクになるわけではない。ドレナージが入っていることの違和感も
 あるし、毎日水が排出されることでタンパク質も失われるらしく、
 1週間日に日に怠くなってゆく。

5.癒着後の発熱
 当日、ピシバニール注入後、おまじない程度に体位変換。約2時間。
 それが終了したあたりから一気に発熱。(図参照)

 その時点でたった37.4℃にもかかわらず、電気毛布を借りるほどの寒気。
 奥歯がガチガチ鳴るほど震えが止まらない。カロナール(熱冷まし)を
 2錠飲むも、体温上昇止まらず。
 短い人で2~3日、長い人で1週間と言われていたが、結局1週間断続的に発熱。
 ピシバニールの場合、免疫反応による炎症を起こす(のが目的)ため、発熱は
 比較的ゆっくり(長期にわたり)続くとのこと。

6.採血
 当然ながら白血球と炎症反応CRPは跳ね上がる。その他の項目に特段の変化はなし。
 ナニに反応しているか判らないものの、私の場合ALPにも上昇が見られた。
 胆嚢(は摘出済み)、肝臓、膵臓関係の他の数値に変化もないため、
 とりあえず様子見。

7.その他
 やはり癒着後、胸水が止まってからは体力が回復。
 発熱による怠さもあるが、動けるようになる。
 失敗点は胸水を抜くのが遅過ぎたこと。なんらかの平衡を保って増えたり減ったり
 しているうちに水を抜き、肺のダメージを未然を防ぐべきであったと思われる。

 ひとたび肺が虚脱したり無気肺が生じると、回復しなかったり回復すると
 しても時間がかかるため、その間の排水が止められないように感じる。
 胸膜が下がるため、レントゲンやCTで胸水貯留量を定量的に把握するのは
 困難としても目安としては「横隔膜のアーチ」が不明瞭になってきたら
 胸膜穿刺(水抜き)を考慮すべきと思われる。

 胸水が溜まるとどうしても「予後数ヶ月」という雰囲気が出てくるため精神的に
 ハードルが高いが、針を刺して抜くだけであれば、局所麻酔のチクッとした痛みと
 30分程度の処置で済むため、ちょっとでも息苦しさが出て来たら早めの排水を
 推奨する。

 尚、二度目の細胞診でも癌細胞は陰性。結局は原因は不明ながら、右肺下葉は
 通算3回(3カ所)の放射線治療歴があり、累積100Gyを超える場所もある。
 また、リンパ節や静脈への照射もあるし、小さいとはいえ、近隣のリンパ節
 転移もある。このうちのどれか、もしくはそれらの組み合わせが原因ではないか
 とは思ってはいるものの、結局原因は不明なまま。