軟部肉腫の罹患率は10万人に2人、骨肉腫で10万人に0.8人。組織分類も多様で、
大分類だけでも軟部肉腫で11種,骨肉腫で7種+分類不能タイプ。がある。当然、
製薬会社は「儲からない」。薬は開発されにくく、治療は難しい。

私は骨・軟部の医師と相談した事もないし、実際の抗癌剤治療も殆ど見たことが
ないが、将来選択肢になり得る?かも知れない薬剤を幾つかメモってみる。

先ずは1stラインの細胞殺傷系抗ガン剤。
軟部肉腫
1.CyVADIC 3週間隔
・シクロフォスファミド(エンドキサン) 500mg/m^2 (day1)
・ビンクリスチン(オンコビン)     1.5mg/m^2 (day1, and day5)
・ドキソルビシン(アドリアシン)    50mg/m^2 (day1)
・ダカルバジン(ダカルバジン)     250mg/m^2 (day1~5)
の4剤併用か
2.MAID 4週間隔
・ウロミテキサン(腎、膀胱の保護)   1500mg/m^2/24時間持続(day1~day3)
・ドキソルビシン(アドリアシン)    20mg/m^2/24時間持続(day1~day3)
・イフォスファミド(イフォマイド)   2500mg/m^2/24時間持続(day1~day3)
・ダカルバジン(ダカルバジン)     300mg/m^2/24時間持続(day1~day3)
の3剤併用。

骨肉腫
・メトトレキセート(メソトレキセート)8~12g/m^2
 (ロイコボリン(核酸合成を補助))
・シクロフォスファミド(エンドキサン)
・ドキソルビシン(アドリアシン)
・イフォスファミド(イフォマイド)
・シスプラチン(CDDP)
・エトポシド(VP-16)
・カルボプラチン(CBDCA)
などからの多剤併用が一般的、との事。、、見ただけでいかにもキツそうナゾの人
それでも治ればまだ良くて「術後抗癌剤をやった後、再発」となると更に難しくなる。

以下、ネットで検索しただけであるが、考えても良さそうな情報を羅列する。
現状、入手すら難しいものが多いが、こういった研究的課題に取り組むのが
国立がんセンターのサルコーマセンターの責務だと考える。

1.ムラミル・トリペプチド(MTP)
Journal of Clinical Oncology, Vol 26, No 4 (February 1), 2008: pp. 633-638
日本語の記事はこちら
骨肉腫に対する試験薬により全生存率が改善される(海外癌医療情報)
シスプラチンなどの化学療法にこのペプチド製剤を併用すると少し良さそう。
という内容。

2.WT1ペプチドワクチン(全国数カ所)
ペプチドのみで、ある程度維持できれば一番楽だが、やはり「まだまだ」な感じ。
何か抗癌剤があり得るなら、当然抗癌剤優先と考えられている。
とはいえ膵癌や肉腫など、それほど選択肢の無い癌種の場合は検討の余地あり。

3.トラベクテジン(Yondelis)
2007年に欧州承認。軟部肉腫向け抗癌剤。未承認薬使用問題検討会議では
「まあまあ効きそう。副作用も従来のレジメン程度。(でも様子見、結局何もしない)」
との事で、いまだに国内未承認。がん情報サービスの解説はこちら、
http://ganjoho.ncc.go.jp/professional/med_info/drug/trabectedin.html

4.がん情報サイトのNCI日本語版での臨床段階にある選択肢としては、
http://mext-cancerinfo.tri-kobe.org/database/pdq/summary/japanese.jsp?Pdq_ID=CDR0000062698#Reference_278.37
・COG-ADVL0413:ソラフェニブの第I相試験。
・COG-ADVL0525:ペメトレキセド二ナトリウムの第I相試験。
・COG-ADVL0821:抗IGF1受容体モノクローナル抗体cixutumumabの第II相試験。

まあ、今は「何でもかんでもネクサバール(ソラフェニブ)?」という風潮なので
I相試験ぐらいは誰かがしそうなもんだが、むしろ注目は抗IGF1レセプター抗体。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/asco2008/200806/506805.html
もしもこんなのがホントに効くんだったら、
・figitumumab(ファイザー)
・AVE1642(サノフィアベンティスなど)
・BMS-754807(BMS)
・OSI-906(OSI)
・BVP-51004(Biovitrum)
・XL-228(Exelixis)
なんかも使える様になるかも知れない。

いつの間にか同サイトで日本語検索もできる様になっているので、
http://cancerinfo.tri-kobe.org/clinicaltrials/search/index.html
試しに「骨肉腫」といれて検索してみると6件ある。分子標的剤は、

「局所進行,転移性,または再発性軟部組織または骨肉腫患者を対象とした、テムシロリムス(Temsirolimus)/シクスツムマブ (cixutumumab)の第II相試験」
New York
Memorial Sloan-Kettering Cancer Center
Robert Maki, MD, PhD

テムシロリムス(Temsirolimus)とは、いわゆる「トリセル」(ワイス社)のことで、
2007年上市、腎がん向け、mTORターゲット、売り上げ1.2億$といったところ。
担当者はRobert Maki、、もしかして日系??

ニューヨークなんてメシがまずいので行きたくない、、という場合は個人輸入も
できる様であるが、30mgで22万円?!毎週20万円の出費って、、

mTOR阻害剤としては、いわゆる後発のエベロリムスの方が効くと噂されており、
Afinitor(everolimus) ノバルティス、腎がん、2009年欧州上市。
http://www.novartis.co.jp/news/2009/pr20090603.html

mTORターゲットの臨床試験(できれば国内が良い)が無いかな?と検索すると、

5.がん情報サービスで
http://ganjoho.ncc.go.jp/professional/med_info/clinical_trial/ct0090.html

・固形がん患者におけるE7050の経口投与による臨床第1相試験
エーザイ株式会社
年齢: 20歳以上 74歳以下

とか、
・日本人進行固形癌患者を対象としてmTORキナーゼ阻害剤AZD8055の経口投与時の安全性及び忍容性を検討する非盲検単施設第I相試験
アストラゼネカ
年齢: 20歳以上

などが募集されている。どっちもI相試験ではあるものの、良さそうな気がするが
20歳以上の制限付きプンプン。小児癌もなんとかならないものでしょうか、、。

本ブログはなるべく信頼性の高い情報を提示することを意図して来た。
分子標的剤については開発中だったり、効き目も不確実なことが多く、
かなり、いい加減な情報の羅列になってしまう為、これまで余り触れずに
来たが、2nd、3rdラインを終え、「何か無いの?」という場合も多い。

また「よく判らない」のは何も私に限ったことでは無く、恐らく専門医の方でも
それほど違わない状況かも知れない。仮に大部分の内容が将来否定される事に
なるとしても、現時点での「粗い情報」を羅列してみることにする。
study2007