「家電」の話のついでにちょっと目についた記事を紹介する。
九州電力が佐賀の重粒子施設に40億円近い寄付をしたという記事があった。

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重粒子線がん治療施設 九州電力が39億円寄付

 九州電力は28日、佐賀県鳥栖市に2013年春開業を目指している「九州国際重粒子線がん治療センター(サガハイマット)」の医療運営法人に、39億7千万円を寄付すると発表した。同社の寄付額としては最高額で、来年度から複数年かけて拠出する予定。今回の寄付で総事業費約150億円のうち117億円が確保できる見通しとなった。

 九電は施設を整備・管理する特別目的会社(SPC)に出資しているほか、医療運営法人の顧問に松尾新吾会長が就任するなど事業推進の中核を担っている。

 県庁で会見した大坪潔晴佐賀支店長は「公益性の高い事業で、重要な電源立地地域である佐賀県の振興に協力することが地域との信頼強化につながると考え寄付を決めた」と説明。額については「医療運営法人側からの要請額を満額出した」とした。既にSPCに3千万円を出資しており「これ以上のことは考えていない」とした。

 寄付金は治療装置の整備、医療スタッフ確保の資金に充てる。医療運営法人によると、事業の進ちょく状況は、5月中に治療装置の購入契約を交わし、年度内に建物を着工する見通し。
佐賀新聞 2010年04月28日更新
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成る程、言われてみれば九電にとっても大口の「お客さん」であるし、誘致・建設に
協力しても悪い話では無いだろう。加速器はとにかく「オール電化」である。

例えば放医研の平成20年度の財務諸表によると研究系の「水道光熱費」は約13億円。
殆どが電気代なはずなので、仮に12億円が電気代として、その1/3は医療用運転電力。
(医療用マシンタイムは1日8時間程度)

重粒子治療の電気代が約4億強?年間患者数が600人とすると1人あたり約70万円。
300万円の自己負担のうち約1/4が電気代!?という事になる。(最大400MeV)

jesterさんのコメントを元に少し調べてみると、粒子線治療の電気代は以下の様な感じ。
(兵庫粒子線センター、村上副医院長の2008年学会発表によると)
               装置費用      年間電気代
陽子線           約60億円     6000万円
陽子・重粒子(320MeV) 約120億円   1億8000万円
兵庫では1人平均の電気代は30万円程度でほぼjesterさんの聞いた値と一致する。

が、質量が6倍の重粒子は建設費もかかるが電気代もかかる。兵庫では患者の2~3割
が重粒子であり、明確な区分は無い様だがあえて計算すると、2007年の場合で、
陽子線:465人×20万円?=9300万円
重粒子:125人×60万円?=7500万円
小計            =1億6800万円
+検査機器など合計し、、、、大体1億8000万円という感じの様な気がする。 

こうして考えると、40億はちょっと思い切った額ではあるが、九州で年間4~5億円
使ってくれそうな大口契約先に「投資」するという判断も充分あり得るかも知れない。

加速器系の医療マシンの普及と費用負担において、電気代の占める割合は結構大きい
要素になりそうである。「エネルギー問題はコストを通じて医療問題にも反映する」
、、と、いったところですか。

ちなみに兵庫の場合、人件費を含めた年間維持費は10億円で、電気代は18%。
年間333人治療すると「トントン」とのこと。感覚的には放医研は高すぎるし、
兵庫は安すぎる様な気がする。マスが大きいのがそんなに効くのか、あるいは
単価契約が違うのか?勿論定格エネルギーも違うが全員が400MeVでも無いし、、。