イレッサ耐性などについて幾つかの推定を記載したが、最後に補足等述べる。

1.タルセバ150mg/dayは用量的に「まあまあ」な気がするがイレッサ1日1錠はやはり
用量不足なケースが多いと想像する。しかしながら勿論、体質によってはイレッサ1錠
でも厳しい場合もある。

典型的には服用を始めて1ヶ月以内ぐらいにGOT/GPTなどが上昇するケースで、
イレッサ(薬剤)を処理できずに肝細胞が壊れて血中に流れでてくると思われている。
この状態が続くと肝機能低下が慢性化し恐らく癌治療において致命的なダメージを与える。

先ずは休薬、もしくは隔日投与などであろうが、プロへパールという補助剤で肝機能
を多少は守れる?場合もある様である。毎食後1~2錠服用。副作用は軽微とのこと。


2.イレッサと言えば間質性肺炎であるが、むしろタルセバの方が用量的に「適当?」
なせいか、肺炎等の副作用リスクも高い?と想像する。イレッサ、タルセバ使用者は
KL-6を採血の検査項目に加えるべきと考える。


3.イレッサ、タルセバに知見の無い私が上記の様な印象を持つに至った論文などを
下記に紹介する。イレッサ経験者としてIntelligenceの高い患者ブログを書かれている
ミューさんtamyさん、及び治療経過を提供頂いた方々のご協力に感謝致します。

イレッサ第I相試験の報告
http://www.jco.ascopubs.org/cgi/content/abstract/20/18/3815
・投与量150mg/dayから1000mg/dayまでの7水準全体に対して肺癌のn数は39人。
・ドロップアウトした人の治療前歴など詳しい推移は個々には不明だが、やはり
 600mg/day~1000mg/dayだと投与が厳しくなる人が出てくる。血中濃度も上がらない。
・主な毒性はやはり、ニキビ様皮膚疾患、下痢、衰弱、吐き気、食欲減退、、など。
 逆に言えば通常の抗癌剤の様に、白血球や肝機能やクレアチニンでグレード3になる人は
 1000mgまでの投与量でも余りいない?
・血漿中の薬物動態は個人差、及び(同一患者の)経時差ともに、かなり大きい。
(イレッサは繰り返し投与なので血中濃度は上がったり、下がったりノコギリ型を描きながら
 上昇してゆくが、7日程度で定常状態に達し、その時期の投与直前に採血し、谷間(トラフ)
 濃度で評価する)
・2人の患者はこの濃度が1週目と3週目で2~3倍も変化したので、評価から除外。
・各投与量グループの被験者数名のgeometric mean=全データの相乗積の同次乗根
(平たく言えば、統計的平均値の様な値)で比較して、600mg/day辺りまでは投与量に
 だいたい比例して血中濃度もあがる。
・とはいえ血中濃度の分布は(恐らく標準偏差で言って?)±50%程度のバラツキがあり、
 個体差がかなりある。イレッサのカタログ値とも大体矛盾しない。
・同じ患者の中で比べても、(投与後3週までに?)4%から40%程度の変化がある。
 血液動態はかなり動く。この変動自体にも個体差がある。
600mg/day程度はトライする価値があるし、第二相試験が250mg, 500mgで行われたのは合理的
だったと考える。(本当は200mg, 400mg, 600mgぐらいの三水準程度が適切だったかも??)

イレッサ第II相試験の報告
http://www.jco.ascopubs.org/cgi/content/abstract/21/12/2237

タルセバ第I相試験の報告
http://jco.ascopubs.org/cgi/content/full/19/13/3267
・3つの臨床試験をコンバインした内容。かつ、まとめた筆者が薬剤開発担当なせいか?
 実際の患者に接してないか、あるいは間接的な情報を基に論文を書いた?という印象。
・毒性などの評価に使えるのは実質30人ほどのn数。それを50mgから200mgの4水準に
 3人から6人程度ずつ割り付けた試験(それも3週投与後1週休薬)、150mgの連日投与、
 休み無し試験(10人ほど)を混ぜ合わせて評価しようとしており、偏りがある?
・ただ、血液動態の結果fig.5などでは50mg/dayから200mg/dayまでの範囲でおおよそ、
 投与量に比例して血中濃度は増えており、中外の公表データに矛盾はしない。
・ただし、150mg/dayの連日投与のデータ郡に引きずられている。一方で、「比例性」は
 3週投与+1週休薬のデータ郡で得られている。このデータのみから「連日投与」の
 スケジュールを考えるのは困難?。
・何れにせよイレッサ同様、「同じ投与量でも血中濃度は非常に個体差が大きく、データから
 類推すると概ね50%~70%程度?はありそう」という事だと思います。論文の文章の中では
 バラツキが30%程度であるかの様に主張しようとしていますが、そんなに揃った結果で無い
 事は生データ(は、一応信じておきますが、、、)を見れば類推できる。

この論文や、実際のタルセバの使われ方、中外の薬理データなどから感じる私の印象では、
・あくまでも毒性を見ながらだが、タルセバも同じ投与量でも血漿中の薬剤濃度は非常に
 個体差が大きく、患者によっては200mg/day程度までは試す価値はありそう。
・ただし、400mg/dayあたりに行くとイレッサで言うところの800mg/day前後の毒性より強い?
 かも知れず、上限はその辺り以下になりそう、、。

また、増量して半年~年のレベルで長期使用した場合の毒性は(私の調査能力が低い為)
殆ど判らず、イレッサ1日2錠、タルセバ400mg/dayレベル等の増量は慎重を要する。