EGFR遺伝子変異をもつ肺癌患者に対するイレッサ(ゲフィチニブ)の効果は
・「縮小:現状維持:無効」が「1:1:1」ぐらい、
・日本では肺癌患者の3割がEGFR変異を持つので縮小する人は肺癌患者全体の約1割程度。
・奏効例でも半年~2年程度で薬剤耐性がつく。と推定されている。

イレッサはEGFR遺伝子変異がある患者に選択的に投与され、現状維持以上なら治療継続。
増幅に転ずれば治療は終了。タルセバ、アリムタあるいは抗癌剤治療に変更されている。

私自身はEGFR変異が無くイレッサもタルセバも選択肢に入らない。またイレッサ患者は
外来が主で、あまり接点が無く、私は殆ど知見を持っていない。が、作用機序と耐性、
再奏効の可能性などについて私の理解(したと思っている事)を整理しておく。

下図に示すように経口投与されたイレッサが癌細胞に到達するまでには少なくとも
・肝臓代謝(平均4割は無効化される)
・血漿中での蛋白質との結合(9割は不活性な平衡状態に維持され少しずつ消費される)
・細胞膜の透過(pHや電解質、化学物質排出チャネルなどの兼ね合いで決まる?)
などの各過程を経る必要がある。さらに血量(体重)により血漿中の濃度には個体差が生じる。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-iressa_01

試験管レベルの知見ではおよそ50~100ng/mL程度?の薬剤濃度を保てれば癌の増幅を抑制
できるとの事である。公表されているイレッサの血中濃度のデータを示す。
(「トラフ濃度」とは反復投与時のノコギリ型の波形の「谷間」での数値の事)
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-iressa_02

ある程度の濃度がある程度の時間(24時間?)以上維持されないと「当然効かない」。
「ある程度」とは平均的にはトラフ濃度で200ng/mL以上ぐらい?の様に見えるが、細胞膜
の出入りの効率や毛細血管の流速などにより、個人差と変動があると思われる。

さらに、イレッサの「効き具合」を想像する為にはEGRF遺伝子変異と作用機序を考える必要
がある。遺伝子レベルのイレッサの作用機序と耐性のシナリオは散々言い尽くされているが、
あくまでも「不確定である」というのが現状の理解。以下には最も有名な「推定」を記す。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-iressa_03

イレッサは細胞増殖などの信号伝達を担うEGFRファミリーに取り付き、信号をカットしよう
とするが、細胞膜内のある部分に「750del」や「L858R」等の変異があれば作用し易く、
反面「T790M」の変異が発現すると(イレッサが結合しても)効かなくなるというシナリオ。

T790M耐性説の1つの根拠は
・感度1~5%?で計測し、イレッサ投与前の患者の遺伝子からは発見されない。
・が、耐性がついた患者の約半分の症例からは発見される。というものである。

が、耐性の議論をするには少なくとも以下の点が不足している様に思える。
1.耐性が付いた患者から検出されるT790M遺伝子の占有比が不明な事。
2.感度0.1%のPCR法では3%程度の患者から検出されており、イレッサによる二次耐性
  だけがT790Mの由来とも言えない。すなわち治療前の患者のT790M占有率の測定が
  (通常の遺伝子解析では)耐性の議論をするには精度不足な事。

癌細胞は一般的には一様では無く、750delやL858R、T790MなどのEGRF遺伝子に
変異がある細胞と無い細胞が「ある割合」で混在していると想像している。

現状の判断基準は殆どが「5%?」以上か?以下か?というレベルに過ぎず、例えば750delが
5%の患者と90%の患者では効き具合が違うかも知れない。反対に、T790Mがどの程度の割合
を占めるか?いつ頃発生したのか?という事も耐性の度合いを左右すると思われる。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-iressa_04

イレッサが「効くvs効かない」「耐性があるvs無い」には様々なケースが混在していると考える。
ここで挙げた基本的な要因だけでも、少なくとも、
・吸収、体重
・肝臓代謝
・血漿タンパク質
・細胞膜
・遺伝子変異分布・割合
・細胞分裂周期
・遺伝子変異までの期間など、
で、全て個体差があり、かつ同一人物においても変動する。何をどう見れば判断材料に
成り得るのか?、どの様な治療指針・考え方があり得るのか?引き続き整理してみたい。