究極の癌治療は「飲み薬を1週間から1ヶ月程度服用すれば完治する」という姿。
「副作用は軽微で肺も肝臓も消化管も脳も全部一発で治る」。そんな立花隆氏が夢見る
「最後の新薬」は設計方針すら立ってなく、恐らく30年後にも現れないと想像する。

しかしその一歩手前の状態「重粒子並の効果と、部位・数によらず繰り返し照射可能」
な放射線治療は場合によると20年後ぐらいには一般に普及できるかも知れない。
これは一部の緊急手術が必要な症例を除き、「事実上ほぼ治る癌治療」とも言える。

癌は原因も治療も非常に難しい病気である。その「難しさ」にまともに取り組むのは志は
立派だが要領が悪すぎる。当面は自然界のウラをかく「裏技」でごまかすべきである。

生体内RI治療の1例はスイス・バーゼル大などで行われているPRRT療法。
Peptide Receptor Radionuclide Therapyの略で、膵内分泌腫瘍に集積しやすい
「Peptide DOTATOC」という物質とベータ(β)線放出核種の「Yttrium-90(Y-90)」
を使った、癌細胞1粒を個々に狙った「ミクロな」放射線治療。

イットリウム90は癌細胞に集積されβ崩壊する。2.28MeVの電子線を放出。
半減期は64.1時間。注射で注入し2~3日安静にしたら治療終了。たったそれだけ。

費用は60~100万円程度?、数ヶ月間隔で2~3回行い経過観察。腎機能などに
副作用が出ない限り、何回でも繰り返せる。オクトレオスキャン:111In-DTPAOC
(Octreoscan) SPECTでソマトスタチン受容体が有意に発現していれば検討に値する。

現状、癌腫が限られることや薬剤の集積度合いから「完治」する例は少ないとの事だが、
こういった内部RI治療の延長上に放射線治療の目指すべきゴールがあると思われる。

恐らく、そのゴールに最も近いのがホウ素中性子捕獲療法(BNCT療法)だと考える。
この治療法のスジの良さ、は放射線にも薬剤にもあまり難しい事を要求しない点。
PRRTは薬剤に難しい事を期待し過ぎ?また従来の放射線は基本的に単独治療である。

BNCTの原理。中性子線は「起爆装置」に過ぎない。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-BNCT1

少し高い中性子エネルギーを使うことで体深部に届く。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-BNCT2

1粒の「捕獲」で発生する内部線量。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-BNCT3_F

BNCT目標パラメーター。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-BNCT4

腫瘍細胞への照射線量。1回照射でこれだけ掛ければ殆どの癌は制御できそう。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-BNCT5_F

中性子による放射線量。1時間照射でも正常細胞のダメージは平均1.8GyE程度。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-BNCT6_F

従来の放射線治療とは根本的に異なり、癌治療の全体像を変える程のインパクトがある?
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-BNCT7_F

ホウ素誘導体DDS製剤の見通し。動注法やヒアルロン酸による固定などと組み合わせれば、
(分布、濃度的に理想的では無いとしても)比較的早期に実現できる様に思える。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-BNCT8

加速器はFFAGが有力とされているが、ΔP/P補償とビーム冷却がうまくできれば、
より簡単なシステムの可能性もあるかも?
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-BNCT9

DDS製剤はBNCTに関わらず「金のなる木」であることは明白。それなりのインセンティブが
働いているが、少なくとも加速器に関しては「業界の本気」を出していないことは明らか。
(やってる人は極めて真剣ではあるが、、笑)今後、資源と人をより投入する価値はある。
20年を要する理由の殆どは「技術」では無く、政策的・医療的な決心の遅さだと感じる。