2009衆議院の開票速報中、難治癌である胸腺癌で亡くなった山本孝史議員が思い起こされた。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-ytakashi

民主党参議、2005年12月に胸腺原発・肺、肝転移確定診断。2007年12月永眠。
ステージIVaの確定診断から24ヶ月の長期生存。ギリギリまで議員活動を続けた。

同様の症例報告としては世界的にも最長?レベルに近く、初回治療は国立がんセンター。
私と同じカルボプラチン+パクリタキセルによる化学療法を受けた。その後平岩正樹医師
の元で抗癌剤治療を続けた。平岩氏曰く「癌治療を国政で改善してもらいたい」との事だった。

写真は山本孝史氏の遺稿「救える「いのち」のために」。亡くなる2日前に書き上げたとの事。
Amazonだと新品1冊、古本8冊が残っているが、今まで書店で見かけた事は1度も無い

巷では帯津氏や梅澤氏、安保氏などの「全く読むに値しない本」が山積なのに、
こういった「癌関係者にとって必読な本」は殆ど売られてない。皮肉なねじれ現象である。

情緒的なタイトルとは異なり、本の中身は癌医療、関係者への重要な提言が網羅されている。
真面目で正直、かつ粘り強い人格が滲み出ており「国会の良心」という表現に相応しい。
また苦学の故か「世間も判っており」現実的な感覚も備えた有益な人物と見受けられる。

内容をかいつまんで挙げると、
・癌治療の地域間格差、院内格差などの是正
・がん登録事業の必要性、情報公開、情報収集の推進
・がん医療・研究費の増額、医師、技師の拡充
・費用対効果の低い粒子線治療よりもX線施設・人員の拡充
・専門医制度への疑問、修正の必要性
・検診制度の充実とたばこ対策・たばこ税の導入
・抗癌剤治療の充実、未承認薬治験制度の改善
・緩和ケアの拡充、切り捨てへの懸念
・患者の声の重要性、政策への反映
・混合診療、回数制限の改善
・必要な保険料・公費負担増の国民的合意

どれも常識的で「当事者として正しい情報」が簡潔に整理されている。
患者、医療従事者、および政府関係者は一度は目を通すべきである。

ただ「常識的でなく」かつ「真面目でもない」私の観測による医療現場の現実を
考慮すると、残念ながら山本孝史氏の提言は実行性と効率の面でイマイチに感じる。
いくつかの微修正は可能だと思うが、恐らく根本的な医療制度改革にはならない。