とは言え、私も癌患者なので感染症については敏感になっており、ド素人ではあるが、
ネットやテレビでインフルエンザに関する可能な限りの調査は行った。

当初は入院中という事もあり(ネットが遅く)テレビ報道にかなり頼る事になった。
その中で何人もの「専門家」が登場しており、非常に興味深く拝見した。

本ブログは私人としての「個人」は原則として取り上げない方針であるが、公衆衛生に
関わる報道で専門家としての意見を述べた方達であるので何人かは実名を挙げる事にする。

興味があったのは情報が乏しい報道の初期段階において、この分野の「専門家」の方々が
どの様な説明と助言をするか?という点である。先ず、卓越していたのは、
・根路銘国昭(元WHOインフルエンザ・呼吸器ウィルス協力センター長)氏と
・尾身茂(元WHO西太平洋事務局長)氏だと思う。

(特にメキシコにおける)感染者数や死亡数、ウィルスの特性に関して、
明らかになっている事実と推測を明確に区別しながら、感染力と毒性の推定、
及び死亡者比率が不自然に多い事の疑問、などを的確に示したと思う。

国、自治体、個人、会社や学校、医療機関が取るべき対策も具体的かつ適正に
指針を示しており、解説のほぼ全てが有益なモノであると感じられた。

両氏がこの分野でどれ程多くの仕事をしてきたか、常日頃からどれ程科学的に物事を
捉えているかが、言動や考察の端々に滲み出ており、非常に信頼性が高いと思われる。

確か尾身氏は以前NHKの医療問題を扱った番組にも出演しており、国内の医療問題、
とりわけ医療資源の偏在と、その土壌になっている開業医制度を極めて明確、かつ強く
批判しており、医療や公衆衛生に真摯に向き合っている印象を持った。


それに対して非常に深刻に感じたのは(元?国立感染症研究所の)岡田晴恵氏。
パンデミックに関する一般向けの著書が多く?、その道では有名な研究者なのかも
しれないが、業績や論文は検索してもなかなか見つからない。

特に初期の1~2日間は、何度もテレビに出演し、現状についての分析は殆ど無く、
ひたすらH5N1並のインフルエンザが、それもヒトからヒトへの連続した感染を
始めた場合の「考えうる最悪の」予測を根拠無く繰り返していた。

ワイドショー的には岡田氏の方が「美味しい」らしく、キャスターやコメンテーター
におだてられ、毎回スペイン風邪の話題で盛り上がっていた。

パンデミックやウィルスに関する科学的な知見は当然、多くの真面目な研究者により、
相応のコストと時間をかけ積み上げられてきたと想像する。膨大な数の感染者と死者の
上にその成果はある。

が、恐らく彼女にとってはそれらは単なる商売道具に過ぎず、
世間で話題になる事こそが第一義の様である。

彼女の口から出る単語は確かに「科学の産物」である。その点においては根路銘や尾身氏
とそれ程違わない。しかし彼女の思考や表現は短絡的、恣意的かつ不公平である。
最も「科学から遠い」人間の一人であると言わざるを得ない。