2009年1月には肺機能検査も行った。下図は胸部CTと単純X線の画像である。
この1年近くの画像上の推移は先日の記事を参照頂きたい。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-lung090122

放医研ではPETの集積剤としてメチオニンというアミノ酸を試験している。
治験扱いの為、費用はタダで済むが、外部発表の権利は放医研に属する。その為、
本ブログで画像を掲載する事はできないが、PETでも左肺患部の集積は消失している。

ただ、肺繊維化が残っている付近は2008年4月の重粒子照射から9ヶ月が経過したにも
関わらず、淡く集積信号があり、軽い放射線性の炎症が続いている事を示唆している。

症状としては2008年12月上旬に「笑いすぎた」のをきっかけに2週間近く咳が続いた。
1週間ほど咳止めを飲み、沈静化後は咳や息切れなどの症状は全くない。

本来、肺機能検査は3ヶ月から半年おきには行うが、私の場合昨年の夏から骨転移が増悪し、
検査を受けられる状態では無かった。2008年3月から約10ヶ月ぶりの検査となった。

検査結果の推移はそれぞれ、
・肺活量(ゆっくり吐いた肺活量)及び努力肺活量(急いで吐いた時の肺活量):
 4.4L及び4.2Lから、3.8L及び3.4Lに低下。

・1秒率(1秒間に吐ける努力肺活量の割合):気道の狭さや気管支の炎症の指標
 81%から、81%と変化無し。

・気速V50、V25、及びV50/V25:肺活量50%,25%の時の呼気の流速、及びその比、
 細い気道の閉塞状況の指標。特にV50/V25が3以上だと末梢部分の病変を示唆する。
 V50=3.5L/s, V25=1.4L/s, V50/V25=2.5から、
 V50=2.8L/s, V25=1.2L/s, V50/V25=2.3に低下。

・クロージングボリューム:N2濃度曲線のIV相体積。末梢気道の閉塞などで増加。
 0.5Lから、0.65Lに悪化。

・残気量:吐き切れない量。N2洗い出し方で測定。
 1.9Lから、1.1Lに減少。(全肺気量の低下の原因)

・CO肺拡散能:肺繊維化などがあると酸素取り込み能が低下し減少する。
 基準値は25-30[mL/min/mmHg]程度。
 23[mL/min/mmHg]から、18[mL/min/mmHg]へ低下。

一言でいえば、心配する程の悪化ではないが、全般に20%程度の肺機能低下が示唆される。
主な原因は肺末梢野の閉塞や繊維化と考えて良さそうだが、その程度はCT画像から
想像されるよりも悪く、むしろPETで炎症が疑われる体積に依存している様に見える。

この10ヶ月の間、約半年間は寝たきり状態で、かつ、4ヶ月間の抗癌剤治療を実施した。
それらを考慮すればむしろ良好とも言えるが、今後運動等で回復をはかりたい。

重要な事は、私の容態や季節効果(真冬は多少肺機能が落ちる)を割り引いても、
肺のど真ん中の3cm大の腫瘍を撃ち抜くと、重粒子でも10~20%程度の「損傷」が起こった、
という事実である。画像上どんなに良好に見えても油断は禁物である。