放射線治療の利益と不利益を考える際、重要なのは「ムダな照射体積を減らす事」に尽きる。

照射した結果、患部自体の機能が失われるのはやむを得ない事であり、不利益とは異なる。
しかし周辺の正常細胞には極力照射すべきで無い。例えば肺なら20GyE以下に抑えたい。

IMRTと陽子線の照射計画例として、MDアンダーソンのR.Komaki氏の学会発表資料をお借りする。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-mdpro090117

ここでの発表の主旨は「IMRTよりも陽子線の方がムダな照射が少ない」というモノ。
注目すべきは20GyEもしくは35GyE以上のハイリスクな照射野の広さの違い。
図をみても明らかな様に粒子であるプロトンビームの有意性が判る。

勿論、見る人が見れば一目瞭然なのだが、この例には発表者の意図が隠されている。
体幹部とは言え、胸膜に接するこの位置はフォトンや陽子線にとって「最も楽な」
患部と言える。同じ肺癌でも深部ではムダな照射野はさらに酷くなる。

フォトンとの比較だけなら深部の病巣を例にとっても良いのだが、この後発表される予定の、
「重粒子線の照射計画例」を念頭に置くと、なるべく印象の良い症例を出したかったのだろう。

プロトンの弱点(と言ってもフォトンよりは良好ではあるが)は既に知られている。
むしろ深部に対する新しいアプローチでも示す方が評価できると思うのだが。