他人。それも故人の闘病にコメントをするのは甚だ不謹慎と思われるが、
やはり有名人のがん治療は気になるところではある。

同じ「がんクラブ」の、ほんの少しだけ先輩として想うことを文章にしておく。
故人、及び遺族の方々には何卒お許し願えればと思う。

筑紫氏の仕事面に関して、私の言及は必要無いと考える。
惜しい人を失くしたと思うし、後に続く人材が乏しい現実に驚くばかりである。

ただ、「ガンを公表した知識人」として以下の2点が、やや残念であった。
1.禁煙の重要性を啓蒙しなかったこと。
2.治療の方法と効果を公表しなかったこと。

後述するつもりであるが、喫煙と癌の因果関係は人類が100年を費やし、
得ることが出来た、唯一にして最大の疫学的な事実である。
タバコ産業と喫煙者は人類史上最大の「大量虐殺」を毎年繰り返している。

ヘビースモーカーだった筑紫さんには、この事実を認め、注意喚起することに
抵抗感があったかも知れない。が、禁煙と40歳以上の方に検診を勧めることは、
ガンに罹患した者の責務と私は考えている。

甚だ勝手な期待ではあるが、あれほどの見識と教養を兼ね備えた筑紫さんが、
禁煙に関して強いメッセージを遺さなかったのは意外であると同時に、やはり
少し残念に感じる。


治療経過や病状は当然、高度にプライバシーが守られるべきである。

にも拘わらず多くの患者が自分の治療経過を公表するのは、主に癌治療の
情報を整理し、後に続く「後輩」の参考になる事を期待してのことである。
この想いは筑紫さんも変わらなかったであろうと信じる。

「ガンを公表し」、「治療が一時奏功した事を報告し」、「訃報」が流れる。
癌患者やその家族が欲している情報は、「その間」にこそある。

ガン治療において先輩患者の経験は、それが成功であっても失敗であっても
極めて有用である。一方で、それが有名人であればある程、患者に与える
希望や落胆の度合が大きい事を筑紫氏ならば熟知していたと想像する。

「気が向かなかった」あるいは「落胆させたくなかった」というのは完全に
正当な理由ではあるが、私としてはもう少し情報を公開して欲しかった。

次の記事で記載する予定であるが、私の理解では筑紫さんの発言と治療経過は
少し矛盾を含むと同時に、肺がん患者に混乱を与えかねない気がする。