5.第5次日韓会談予備会談・一般請求権小委員会第13回(昭和36年5月10日) 

 

「韓国政府は、日銀券、軍票を含む日本系通貨を焼却した」

 

 第6次会談「韓国の対日請求8項目」の前に行われた第5次請求権小委員会会合の会議録に、日銀券焼却について応答が詳しく書かれている。何回も日本側の交渉官が「焼いた」意味を尋ねているが、韓国側交渉官の説明がかみ合わない。貨幣の意味を知らないか、覆水盆に返らずなので理屈をこねているかだろうと感じる。しかし、焼いた当局は知らなかったのだろうと思う。

 

文書番号95 第5次日韓全面会談予備会談の一般請求権小委員会会合(第13回)(添付文書)

文書リスト
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6頁から16頁、軍票無効化と日銀券焼却の確認      

 

 この文書の34頁以降に当時の交渉官の吉田主査代理の発言要旨が掲載されている。平和条約第4条(a)(b)及び軍令33号の日本側の解釈を説明している。この説明に対し、韓国の李主査代理は平和条約第14条(連合国に対する賠償)ではなく、第4条(旧日本領有地域の請求権処理)による請求だと明言している。(3頁)

 

吉田主査代理の発言要旨
 4月28日に開かれた本小委員会の第12回会合において、韓国側李相徳主査代理が行われた発言も関して、日本側の見解を一言申し述べておきたいと思います。
 平和条約第4条(b)項及び在朝鮮米軍政府法令第33号の解釈に関する韓国側の発言について十分検討いたしましたが、それが本委員会の第10回会合において李主査代理の行った発言を繰り返されたものであって、第11回会合においてわが方から補足説明した点に答えられておらないのは、残念なことであります。従って日本側としては、これ以上議論の繰り返しに入ることを避け、特に韓国側において、さきに第9回及び第11回会合において日本側から申し述べた諸点をもう一度よく吟味の上、日本側見解の正しい理解を得られるよう切望いたします。
 なお、さきに行った日本側説明の中、韓国側で誤解しておられるように見受けられる点が1,2ありますのでこれらの点につき簡単に補足説明しておきたいと思います。

 

(1) 平和条約上、韓国が日本に対して賠償的性質の請求権を主張する根拠のないことは、本委員会において韓国側も確認された点であります。しかるに、他方において韓国側は、平和条約第4条によりつつもカイロ、ポツダム両宣言及び1945年9月7日付太平洋米国陸軍最高司令部の布告1号を引用せられ、日本に対し公判な内容の claim をなしうるかの如き発言をしておられるのは理解に苦しむところであります。
 カイロ、ポツダム両宣言または太平洋米国陸軍最高司令部の布告1号が韓国の請求権について何等言及していないことはいうまでもありません。
 連合国がその対日平和処理を最終的に確定した法的文書が平和条約であることは申すまでもありません。したがって本委員会が対象とする請求権の検討は、平和条約の実定的規定にしたがって、平和条約上根拠を有しない主張が認められないことは余りにも明白であります。

 

(2) 平和条約第4条(a)項における特別取極については、既に当方の見解を述べておりますがさらに理解を深めるために、別の角度から説明すると次のとおりになります。
 即ち、平和条約第4条(a)項における特別取極の対象となるのは、「日本国及びその国民の財産で(第2条にかかげる地域)にあるものならびに日本国及びその国民の請求権で現にこれらの地域の施政を行っている当局及びそこの住人に対するもの」ならびに「日本国におけるこれらの当局および住民の財産ならびに日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権」の処理であって、ここでいう請求権が法律上有効に成立しているものに限られることはいうまでもありません。しかるに、同条(b)項はこの同条(a)項にいう日本財産及び請求権の中、韓国との関係においてはその大部分が法令33号によって消滅せしめられたことを承認するという意味をもつものであります。このことは、いいかえれば、同条(a)項に従って本来ならば日本側が韓国側に対して主張しうるはずの「日本国及びその国民の財産ならびにその請求権」がこの第4条(b)項の規定によって消滅したということに他ならず、従ってこの消滅の事実が「特別取極の考慮において関連をもつ」という米国解釈の意味は、この在韓日本財産引き渡しの事実が第4条(a)項に従って韓国の主張しうるものとしての、法律上有効に成立している請求権をある程度まで消滅又は充足せしめる効果をもつものであることを確認した趣旨に他ならないことは極めて明瞭であります。

 

(3) 法令第33号に関する日本側見解については既に明らかにしたとおりでありますが、第12回会合において韓国側が行った「法令第33号以前に発布された諸布告令と法令とが法令第33号のいわゆる準備立法として relevant である」という主張については、第11回会合において申し述べた点、すなわち「日本財産の所属変更は法令第33号によってはじめて行われたものであって、それ以前に発せられたこれらの諸布告、法令の場合には、当該財産の権利権原の移転に関しては何等法律的な効果を発するものではない」という事実に重ねて韓国側の注意を喚起したいと思います。すなわち、これら8月9日以降、法令33号以前に発せられた諸布告、法令は日本財産の凍結、対外取引の禁止を命じた指令たる性質をもつものにすぎず、この段階では、当該日本財産の所有権移転の効果が発生していないということはいうまでもありません。
したがって、12月6日付の法令33号によって行われた所属変更措置の結果として、はじめて権利権原を移転せしめられた日本財産の範囲如何を決定するに当たっては、これらの諸布告、法令が法理上全く irrelevant であることはきわめて明らかであります。すでに日本側が指摘してきたとおり、かかる決定は、法令第33号の規定と、その法律的効果とを検討することによってのみなされるものに他なりません。法令第33号は、その明文の規定上、所属変更の効果を8月9日現在米軍政府の管轄下に所在した、すべての日本財産に及ぼす意図を有していないことが明瞭であるのみならず、たとえその効果をこれら財産のすべてに及ぼし、8月9日以後の所在の如何をとわず所属変更の対象としようとする意図を有していたとしても、どう法令の本質的制約から生じる法律的効果の限界に鑑み、12月6日現在米軍政府の管轄下に所在しなかった日本財産については、かかる意図が法理上実現されえなかったものであることは、さきに第9回会合において日本側が申し述べた見解においてすでに明らかとなっているものと考えます。

 

サンフランシスコ平和条約
http://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/docs/19510908.T1J.html

 

6.まとめ

 日韓交渉記録、国会会議録などの調査結果、次の結論に達した。

(1) 日韓両国の国民が相手国に残した財産・権利の請求権は残存する。

(2) その請求先は、先ず自国政府であり、次に相手国での請求(訴訟)である。

(3) 自国政府を通して、相手国の財産・権利を請求することを放棄する。(外交保護権の放棄)

(4) 終戦時、朝鮮半島に残した日本の私有財産(公有財産除く)は、730億円(昭和40年時点で7兆3千億円)の価値があり、その内、韓国に約300億円(昭和40年時点、約3兆円)の財産が残された。この財産が米軍に接収され、李承晩政権に譲渡された。

(対馬の寺で盗まれた仏像を没収したにもかかわらず、日本に返還しないことと同様)

 

(5) 日本側は、この残置個人財産と李承晩ラインにおける日本漁民の被害補償を請求、韓国側は、8項目の請求を行ったが、双方の請求を相殺し、日韓基本条約附属協定の「請求権・経済協力協定」を締結した。

(6) (5)の結論は、米軍の軍令33号を認めるサンフランシスコ平和条約に日本が署名したことによる。

(7) 日韓の交渉は、国家分裂時の双方に残した財産・権利の請求権、在日朝鮮人の取扱いなどが中心で、日本の植民地支配の責任を問うものではない。

(8) 共産党や韓国寄りの方々が、韓国側の個人請求権を問題にするならば、日本人の請求権を取り上げて公平に扱うべきだ。

 

(終わり)