4.韓国の対日請求8項目
 韓国側の請求項目について、日本側資料と突き合わせ、数量、経緯を明らかにした資料

 

 第6次会談の初期、昭和36年秋から37年春にかけて韓国側より示された請求8項目について、調査、整理、討議が行われた。その記録を下記サイトより入手したので紹介する。

 

文書リスト
http://www.f8.wx301.smilestart.ne.jp/nihonkokai/saisyu.htm

Docuworks文書ビューアーソフト
https://www.fujixerox.co.jp/download/software/docuworks

 

文書番号1914(1964年10月):Docuworks文書(拡張子XDW)

 

日韓会談における韓国の対日請求8項目に関する討議記録
(約160頁を2頁単位でコピーし、それを1頁としている。以下、この頁数を示す。全102頁)

 

 徴用工の韓国大法院判決問題もあり、第5項の3(徴用者の未収金)4(戦争による徴用者被害)6(対日本人・法人への請求)を重点的に目を通されることをすすめる。徴用者には、一般労務者、軍人、軍属、船員などを含む。日本政府は、未収金については、記録を精査して支払う意志を示している。ただし、被害に対する補償は、日本側に法的義務がないが、日本人に対する措置と同じように見舞金という形の善意を示すことができるとしている。(各論の61から80頁に調査・分析が書かれている)

 

 「徴用者の内、軍人・軍属の被害が大きいにもかかわらず、その後の韓国人は、今回の労務者の訴訟のように、行動を起こさないのだろうか。その訴訟を行うと共犯者として名乗りを上げることになるからか。
 連合国が、サンフランシスコ平和条約署名への李承晩大統領の参加を拒否した理由と同じか。(戦勝国ではない)」

 

 最後の102頁に、韓国対日8項目と日本側の意見をまとめている。(日本側の意見と金額欄が黒塗りになっているが、各論の日韓の対話を読めば、日本側の意見を推定できる。)

 

5頁
韓国の対日請求要綱(8項目) (昭和37年時点の要求)

 

第1項 1909年から1945年までに朝鮮銀行から持ち出された地金と地銀の返還

 

第2項 1945年8月9日時点の朝鮮総督府に対する日本政府の債務
 1.逓信局関係
   (a) 郵便貯金、振替貯金、為替貯金
   (b) 国際、貯蓄証券
   (c) 簡易生命保険、郵便年金
   (d) 海外為替貯金、債券
   (e) 太平洋米国陸軍総司令部布告3号によって凍結された韓国受取金
   (f) その他
 2.1945年8月9日以降日本人が韓国内銀行から引き出した預金額
 3.朝鮮から収入された国庫金中の裏付け資金のない歳出による韓国受取金
 4.朝鮮総督府東京事務所の財産
 5.その他

 

第3項 1945年8月9日以後韓国から振替又は送金された金員の返還
 1.朝鮮銀行本店から東京支店に振替または送金された金員
 2.在韓金融機関を通じて日本へ送金された金員
 3.その他

 

第4項 1945年8月9日現在韓国に本社、本店、主たる事務所得があった法人の在日財産の返還
 1.連合軍最高司令部閉鎖機関令によって閉鎖精算された韓国内金融機関の在日支店財産
 2.SCAPIN1965豪によって閉鎖された韓国内本店保有法人の在日財産
 3.その他

 

第5項 韓国法人、韓国自然人の日本国、日本国民に対する日本国債、公債、日本銀行券、被徴用韓人の未収金、補償金、その他の請求権の弁済
 1.日本有価証券
 2.日本系通貨
 3.被徴用韓国人未収金
 4.戦争による被徴用者の被害に対する補償
 5.韓国人の対日本政府請求恩給関係
 6.韓国人の対日本人又は法人請求
 7.その他

 

第6項 韓国人(自然人及び法人)の日本政府又は日本人(自然人及び法人)に対する権利の行使に関する原則

 

第7項 前記所在産または請求権から生じた諸果実の返還

 

第8項 前記の返還及び決済は協定成立後即時開始し、遅くとも6ヶ月以内に終了すること

 

基本的問題に関する法律論
サンフランシスコ平和条約、第4条(a)、第4条(b)とUSAMGIKの
軍令33号の関係の解釈

 

各論(12頁~100頁)

 

結論 102頁 「内:日本側容認/拒否」
韓国側請求項目                  請求金額         

 

第1項 地金(249t)・地銀(67t)   現物請求(1018億円相当)
   「日本側:拒否(通常売買によるもの)」

 

第2項 総督府
 1.逓信局関係            14.49億円 
   「日本人と同じ措置」
 2.日本人預金引出          留保
 3.裏付け資金のない拠出金      留保
 4,総督府東京事務所財産       留保

 

第3項 韓国よりの送金返還      
 1.鮮銀本店からの送金        第5項に含む
 2.金融機関からの送金        留保

 

第5項 韓国人の対日本及び対日本政府請求 11,355 + 36,400万ドル
 1.日本有価証券            8,735 
   「記録の確認要」
 2.日本系通貨             1,525
   「焼却した日銀券や無効とした軍票など証拠要」
 3.被徴用韓国人未収金          237 
   「個々の記録により支払う」
 4.被徴用者補償金(軍人軍属含む)   36,400万ドル
   「支払いの法的義務無し(善意として見舞金)」
    内訳         生存者   18,600
               死亡者   12,800
               負傷者    5,000
   (日本側内訳:善意で認めるとしたら下記名目)
    労務者見舞金
    復員軍人軍属見舞金
    死亡軍人軍属見舞金
    死亡軍属遺族年金
    軍属傷害年金

 5.恩給                 4.2億円  
   「国籍変更により支払い義務無し」
 6.生命保険準備金            4.38億円
   「民間の私的請求問題、国は介入しない」 

 

第6項 韓国人の権利行使に関する原則    個人請求権の保障
   「第1項から5項までの項目と異なる新規の要求、後日の課題に」

 

第7項 果実                討議未了

 

第8項 支払い方法 (合計)        15億50万ドル

 

 請求項に沿って具体的な数字を確認していくのだが、韓国側は、李承晩政権における杜撰な財産管理や南北の分断、朝鮮戦争による資料の散逸、人員と財産の消滅などにより、明確な根拠を示せず、日本側の資料およびそれを元にした米軍の資料に依存することになる。

 典型的な事例は、日銀券を焼却したり、軍票の無効宣言を行い、証文を消滅させたことである。日銀券(貨幣)は、日銀の債務証書(負債)であり、額面の価値が交換される。韓国政府は、日銀券、軍票を含む日本系通貨を焼却した、つまり請求権の根拠がないこと吐露した。(60頁)