私が、「今、この日本に日本人として生きていることが」、と考えることが多くなった。

歴史と謎解きが好きで、多くの書物を読んだ。
イーリアスの初版本を入手したことから始まり、日本古代史、織田・豊臣・徳川時代、幕末・明治維新の歴史書を好んで読んだ。
司馬遼太郎先生に日本歴史上の特異点を教えていただいた。
塩野七生先生には、ローマ帝国、キリスト教と回教の攻防を題材に、国家のあり方、戦いの意味を教えていただいた。

読書癖には、推理小説とSF小説もあり、その内、アイザック・アシモフのファンデーションシリーズ初期三巻と30年後に発表した続編・完結編を全て読み終えた。アシモフのファウンデーションシリーズは、ギボンのローマ帝国衰亡史が下敷きであると理解出来ていた。ファウンデーションシリーズの最終版が出版されたころ、塩野七生先生の「ローマ人の物語」が始まった。(1992年)

歳を取るにつれ、自分の歴史観に不満を感じることが多くなり、専門の書物をあさることになった。
特に、自分自身の存在が気になり、父親の生きた時代から過去に遡った。
司馬先生が、「なぜこんな馬鹿な戦争をする国に」との思いから多くの歴史小説を執筆されたように、自分自身の存在がどこに立脚しているのかを明確にしたい気持ちに駆られた。

今、「坂本龍馬」のドラマが放送され盛り上がっているが、彼を英雄にしたのは、司馬先生である。

現在の日本を幕末から明治にかけて創った大先輩は誰であろうか。
調べて行くと、現在の日本政府を創った大先輩は、次の方々であるという結論に達した。
この見方は、私独自の見方で、他の方々は異論があると思う、

西郷隆盛、大久保利通、伊藤博文の3人の功績が大きい。とりわけ伊藤博文は、近代日本を設計し運用を開始した最大の功労者である。

伊藤に関する伝記や記事が少ないので、分からないことがあったが、昨年年末に出版された伊藤之雄著「近代日本を創った男」610頁の大作を読み、納得のいく理解が得られた。
吉田松陰、高杉、木戸(桂)、大久保に師事し、初代首相であり、学術・産業を興し、大日本帝国憲法を創り、日清戦争を指揮し、日露戦争後のアジアの安定化に努力した。
その努力を全うする前に、ハルピンで暗殺された。この数年前から統帥権の問題に気が付いていた。
もし、暗殺がなければ、山縣らの軍閥の文官統制を離れた活動を抑えることが出来たであろう。(歴史にはもしがないが。)
日清、日露戦争は文官統制下の戦争であった。伊藤の死、2年後の明治天皇崩御により、憲法修正の機会が失われた。

昨年、伊藤之雄先生の伝記を読む前に、ドナルド・キーンの「明治天皇」上・下(各560頁以上)の伝記を読んでいた。この二つの伝記を読むと、明治天皇が、西郷、大久保、伊藤とともに、近代日本を創った最大の功労者であることが理解出来る。

この二つの伝記については、詳細の調査を行い、それをまとめた先生方に敬意を表し、評論を差し控える。
読み通すのに、多くの努力が必要だが、自分自身の存在場所が確認出来るであろう。

明治天皇は、非常に魅力有るお方で、それに引きつけられるだけではなく、心酔の境地になる。