2020年5月16日研究会のご報告 | 応用行動分析学入門(study-behavior-analysis)のブログ

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教育臨床学研究会は、さまざまな分野からの参加者が集う中野良顯先生が主催する応用行動分析の研究会です。

[2021年5月の研究会報告]

2021 年5月16日 ZOOMで開催。出席8

 

小野瑠美子さんが、ご自身の2006年の調査研究「実存的空虚感と希死念慮に苦しむ学生の分析」について、以下のような概要の紹介をされた。

 

この調査では、相談機関に来談した学生の人生の充実度および生きがい喪失度を、授業中に心理テストを受けた学生と比較した。

 

調査研究に参加したのは、相談機関に来談した学生36名(カウンセリング群)、授業中にテストを実施した文系教室群376名、理系教室群346名、看護教室群99名、福祉系群、高校生群93名(教室群)である。

 

人生の充実度および生きがい喪失度のスケールとして、PILテストを使用した。PILテスト(purpose-in-Life Test)は、フランクルのロゴセラピーの考えに基づいてアメリカのクランバウ(Crumbaugh, J.C.)らによって考案された心理検査である。7点尺度の質問紙法のPart Aは人生の充実度スケールで, 文章作成法のPartB, PartCは自分の人生をどの程度受容しているかを主として評価するスケールである。PILのスケールは、精神的に健康で、社会的に適応している場合に高くなるが、アルコール依存状態、カルト集団や過激な政治集団で活動しているとき、そう状態、時には統合失調症でも高くなることがある。

 

調査の結果、カウンセリング群と教室群の間には、有意な差が認められた。カウンセリング群では「生きることがつまらない」、「生きている意味がない」、「落ち込んだときに部屋にとじこもり自殺を考える」、「無意味な存在」などを記述し、面接時も生きていくことへの意味の無さ、存在感の空虚さを訴えるものが目立った。カウンセリング群において希死念慮に苦しむ学生は、PILテストの主体性と実存的空虚が7点尺度で4点以下と低い傾向にあることが共通で、過去受容度、現在受容度も低い傾向を示している。主体性と実存的空虚の得点がともに低いために実生活においても発見的、創造的体験ができていない可能性がある。さらに、過去も肯定的にとらえられないために、現在の受容と自己肯定をも下げるという否定の連鎖が形成されていると考えられる。