映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向け
スタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された
「かぐや制作日誌 “悲惨な日々” 西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録


2011年3月22日(火)~3月25日(金)


22日(火)

・今日も停電。仕事にならない。

・高畑さんとキャスティングの話をする。高畑さん「10代中盤ぐらいの女優に幼い姫と大人になった姫の両方を演じてもらう。そこで懸念されるのが、大人になったかぐや姫の声が、幼くなってしまうんじゃないかということなんですけどね。いや、ちょうど考えていたことを言いますとね、大人になったかぐや姫も、多少、子どもっぽくて良いんじゃないかと、思ったんですよ。幼さが残っているほうが、むしろそっちのほうが良いんじゃないかって。とすると、もう10代中盤の女優なんて、この前聞いた人達も似たり寄ったりなわけですから、オーディションをやってみて、探してみても良いんじゃないかと思ってるんです。」 かぐや姫は、オーディションを前提に打ち合わせしようということに。

23日(水)

・またしても停電。

24日(木)

・経営企画室の稲城さんより連絡をもらい、ジブリ作品のキャスティング等をお願いしていたパグ・ポイントの畠中基博さんが亡くなったことを知る。肝臓癌とのことだ。まったく知らなかった。急遽自宅に戻り、喪服に着替え、高畑さんの香典も預かって、通夜へ。「西村さん、企画あったら一緒にやろうよ。」と言ってくれていたのを思い出す。

25日(金)

・朝、田辺さんと話していると、原発の話題に。東京の水を不安がっている様子。「西日本にスタジオを移しませんか?」と。田辺さんには、今年小学校に入学する娘がひとり、いる。

・午後2時から高畑さんは、フレデリック・バック作品の字幕チェック監修で5スタへ。結局、この打ち合わせは、8時間続く。

・20時からの打ち合わせで男鹿さん来訪。しかし、高畑さんが時間になってもかぐスタに戻らず。電話してみると、「まだ終わらないんです。ぜんっぜん。今日は、そっちで、田辺くんひとりで、とか(笑) やっといてもらえないでしょうか(笑)」と。西村から「じゃぁ、今から15分後に、男鹿さんと田辺さんを連れて、5スタに行きます。そちらを30分中断してください」と伝え、スタジオを出る。本業をおろそかにしちゃいけない。

・5スタ2Fで、美術打ち。前回の打ち合わせの修正が上がってきた。どれもOK。ただ、色味については、セルの色指定が終わってから、若干手直しをしてもらう可能性あり。

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