映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向け
スタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された
「かぐや制作日誌 “悲惨な日々” 西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録


2011年1月31日(月)~2月5日(金)


31日(月)

・原画の濱田くんに第一子が生まれた。おめでたい。

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2月1日(火)

・帰りの車中は、「おもひでぽろぽろ」の話題。高畑さん「自分の作品って、まったく見ないほうなんですけど、前にテレビで『おもひでぽろぽろ』がやっていたときに、つい見てしまって。で、あれ?この映画、結構悪くないじゃない!って。今でも見られる作品になっているなぁって思ったんです。」 西村「実写だったら、そうはいかないですよね。服装を見ただけでも、昔の映画だ、今の映画じゃない、僕らの映画じゃないって反応する」 高畑さん「そうですね。薬師丸弘子かな、機関銃の。あれなんか、もう、うわー凄い古い映画だなぁって、思っちゃいますから、僕でも」 西村「その点、アニメーションは特殊ですよね。高畑さんが前に『おもひでぽろぽろ』を、クソリアルって言ってましたけど、そういうリアルな描写も、何らかのデザイン化がなされていて。」 高畑さん「そうなんですよ。近ちゃんのキャラクターもね、あれはあれで、線を選びつつデザイン化が行われていて、広く言えば、あらゆるところでデザイン化が行われている。だから古さを感じさせない。アニメーションって、何でしょうね。」

・帰宅は、田辺さんと一緒。田辺さん「いやぁ、ほんとにみんな良くやってくれていますよ。反乱が、クーデターが起こってもおかしくないのに(笑)」

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2日(水)

・田辺さん、今週からコンテ作業も並行して行っている。西村「並行作業、どうですか?」田辺さん「うーん、ふふふ(笑)」と奇妙な微笑み。今はどの作業も集中力をもってやっているので、とりあえずは様子見。

・高畑さん、Amazon.co.jpで、大量注文。小熊英二「単一民族神話の起源」他、書籍15冊、DVD7本くらい。意外なことに、小熊三部作のうち、「単一民族神話」だけは未読とのこと。かく言う僕はどれも未読。読まねば。とはいえ分厚すぎ。

・戻ると、田辺さんからコンテの清書が上がっていた。高畑さんがト書きと台詞を書き込んでいる。机に向う二人の真剣な背中。

・帰りの車中は、「狭山事件」から。概略しか知らない僕に、「史上稀にみるミステリー」を詳細に説明してくれた。西村「で、なんでまた狭山事件の話を?」と質問すると、高畑さん「……えっと、なんででしたっけ……。はぁ、もうダメですね。その前に話していたことと関係していたと思うんだけど、もう、ダメですね。ほんとに耄碌ジジイですよ。はぁ。人の名前も全然覚えられないし。この前なんか、ひどいですよ。「九条の会」で何度も会っている人から、電話がかかって来ましてね。うちの奥さんが、なんとかさんから電話よ!って。でも、全然覚えてなくて。いや、そんな人知らないなぁ!って大声で言っちゃったら、電話がそのまま繋がっていてね。その後、大変でしたよ。電話口で"知らないはずはない!あなたは私と何処そこで会っている!"とかって。そりゃあ、怒りますよね。いやぁ、本当に申し訳ない!年とって耄碌しちゃって、なんて言い訳したりして(笑)。もう大変でした。」 西村「人の名前は、僕もよく忘れます。」 高畑さん「いや、西村くんの立場は、それじゃダメでしょう!徳間社長みたいに日記をつけて、人の名前とか全部覚えてさ、立派に(笑)」 西村「それが人徳(笑)」 高畑さん「そうそう、人徳です(笑)」 西村「でも、鈴木さんもよく忘れますよ。会議で商品部の今井さんに、"あれ?キミ、名前なんだっけ?"なんてこともあったし(笑)。でも鈴木さんには優秀な秘書が付いてますから。」 高畑さん「あ、そうか!そうですよ。その人が覚えていれば良いんですよ。僕も、付き人なんか居ても悪くない年なんですけどね、昔だったら。」と。 高畑さんの付き人は大変だろうなぁ……。

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3日(木)

・橋本さんの追加カットのレイアウトが上がっている。QARでチェック。高畑さんのイメージと少し違ったようで、「もう少し、裳をフワッと。嘘をついて良いから」と修正指示。ただ、コンテのレイアウトを守ると、フワッとした感じがフレームアウトしてしまう、と橋本さん。その場で解決案を高畑さんが提示。橋本さん、それで描いてみることに。ちなみに、橋本さんはギックリ腰。腰ではなく背骨が痛むらしい。「どうせ野川公園でフリスビーでもやってたんでしょ?」と聞くと「ばれましたか(笑)」と。

・高畑さんの机から、「カチッ、カチッ」という音が聞こえる。ストップウォッチで計りながら、田辺さんの清書済みコンテに秒数を書き込んでいる時の音。随分前は、この「カチッ、カチッ」という音が、何の音かわからず、「高畑さん、悠長にスタジオで爪を切ってるのか。いい加減、仕事してくれよ!」と勘違いしていたのを思い出す。

・帰りの車中は、読書の話題から。西村が、小熊三部作をそろそろ読まねば、と思っていると伝えると、高畑さんは、「単一民族神話」はAmazonの書評欄を読めば良いような気がすると。そして「最近、読書の方法を変えることにしたんですよ。読み捨てすることにしたんです。大事そうなところだけ部分的に読んで、それで終わりで良いんじゃないかって。昔はね、途中で投げ出すことなんて無かったんだけど、裕福になったってことでしょうね。だって、昔はお金がないから、書店に行っても、どうしようかな、買おうかな、いや、読む時間が無いな、とかね。買う本っていうのは、それこそ選びに選んだものだったわけです。でも最近は、Amazonのせいでしょうね、読む時間なんて無いのにどんどん買っちゃってね。まぁ、ご存知のとおり、山済みです(笑)でも、読まないまま本棚にしまってあるってのは、あまり無いんですけどね。(略) 僕のことを読書家って言う人がいるけど、全然違いますよね。読書家っていうのは、それこそ、丸谷才一さんであったり、大江健三郎さんであったり、亡くなったけど井上ひさしさんであったり。ああいう人を読書家と言うのであって。ああいう人は、読みながら文筆活動もしているわけで、それに書評なんかも沢山書くわけですよ。書評が書けるような読書なわけです。そんな読書でもって、沢山の本を読んでいるわけですよね。井上ひさしさんなんかは、ノートにメモを取りながら読んでいたらしいし。僕なんか、読むのも遅ければ、最近は内容も覚えていないんだから。内容も覚えていないってなると、何のために読んでいるんだろうって(笑)。もちろん、読んでいるときは、なるほど!って高揚感はありますよ。ただ、時間がたつと、えっと、あれ?何書いてあったっけ?って。覚えてないんだから、どうしようもない(笑)」

・戻って、高畑さんが尺と台詞・ト書きを書き入れたコンテ(シーン10の一部)を読む。脱帽。あの脚本を、こう演出するのか。興奮冷めやらず、田辺さんの机に行き、感想を伝える。「よかったです、そう言ってもらえて(笑) でも、全部、高畑さんですけどね。」と。

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4日(金)

・高畑さん、僕の斜め前の机でコンテを捲っている。高畑さん「どんなシーンに音楽をつけるんでしょうねぇ、この映画……」 西村「良くわからないんで教えてほしいんですけど、そもそも、高畑さんは、ここは音楽を入れよう、ここは絵だけで行こうって、どうやって決めているんですか?」 高畑さん「うーん……この映画は、ファンタジーでしょうか?」 西村「枠組みはファンタジー、中身は現実でしょうか。」 高畑さん「中ではリアルなことやっているわけですけど、どうでしょうね。フォークロアとか民話とか、なんていうんだろう、物語的時間というのか、そういうのが流れているんですかね、これ?なにせ、ぶつ切りですよ、この映画。ファンタジーとして考えると、色々なところに音楽が付けられますよね。ファンタジー映画って、うるさいぐらい音楽だらけでしょ。やろうと思えば、そういう風にも出来る映画ですよ。でも、なんていうか、ぶつ切りでしょ。感情が乗っていかないですよ。それもまた問題なんだけど、ハハハ(笑)。爺さんが滑稽なことをやってると思ったら、姫は姫で悲しげだったり。それでようやく、あぁ、姫はこんな感じなんだ、というのがわかる。だから、そっちに向けて音楽を付けられない。(姫の感情に焦点をあわせて音楽を入れることができない)。ぶつ切りなんですよ。」 西村「久石さんは?」 高畑さん「久石さんね……。どうでしょうね。」 西村「久石さんの音楽って、必要以上に映像を説明してしまうって言う人いますけど、僕は必ずしもそうは思わないんですけどね。だって、元は、えっと……」 高畑さん「ミニマル」 西村「そうそう。もちろん久石節とか言われるような色ってのはあるでしょうけれど、扇情的なピアノ旋律ばかりじゃないですよ。軽いパーカッションなんか使って、力を抜いたような滑稽な劇伴も沢山ありますし、面白いですよ。」 高畑さん「久石さんって、そう思われているんですか?」 西村「一般的にそう思われてるのかと言われると、怪しいですけど、冷静な、客観的な音楽がほしいところで、必要以上に音楽が説明しちゃう、と言う人がいますね。」 高畑さん「ふーん。」 西村「とはいえ、そればかりだとは思わないんですけどね、全然。」 高畑さん「うん。『悪人』の音楽、よかったですよ、ほんとに」  (と、YouTubeで『悪人』の予告編を見る。)  高畑さん「あれ、この音楽でしたっけ?」 西村「そうですね。この冒頭の繰り返し、これが多用されてたと思います。」 高畑さん「あぁ、そうそう、そうですね、うん。これ、よかったですよ。効いている。なんていうか、一義的に定まらない人物の心理ってのを上手にやっていると思います。『かぐや姫』にも、そのまま使えますよ、この部分。」 西村「一義的に定まらない感情、ですか。なるほど。定まっちゃう音楽、多いですもんね。」 高畑さん「え?どういうことですか?」 西村「この人の感情、こういう感情でっせ、というのが背後に延々と流れ続けるやつです。この人、悲しいんですよ!とか、この人、泣きたいんですよ!とか音楽が全部、説明してくれる。」 高畑さん「うん、わかる。でも、むしろ、先行するやつの方が問題ですよ。何かが起こる前から、ほら、今から泣ける場面になりますよ!泣いてくださいね!っていう音楽が流れ出すやつ。多いですよ、ほんとに」

・高畑さん「はぁ……、僕ね。前科3犯なんですよ。」 西村「既成曲ですか?」 高畑さん「そうですね。『おもひでぽろぽろ』でも、他人が映画に使っていたやつ使っちゃったし、『狸』の上々颱風のも、他の作品で使ったことあったらしいんです。僕は知らなかったし、彼らも言わなかったから、後で分かったんですけど。それに『山田くん』でしょ。バッハです。ノルシュテイン。」 西村「どっちを気にしています?」 高畑さん「あ、そっか。杉本竜一さんのも、そうか。ハハハハ(笑)。もう、どうしようもないですね(笑)。いや、杉本竜一さんのやつはね、使うなら何とかします、って言ってくれましたけど。※当初、杉本竜一さんの既存の歌曲を映画で使うことも検討された。

・高畑さん「それとは別に、あの西村くんが持ってきてくれた……」 西村「『海を飛ぶ夢』ですね」 高畑さん「そうそう。『ネッスン・ドルマ(Nessun dorma)』。家に帰ってプッチーニのアリア集とか、僕もかなり聴いているほうだと思うんだけど、やっぱりね、あれを超えるのがないんですよ。」 西村「あれ、いいですよね。」 高畑さん「うん、いいですよね。もうね、ないんですよ。クラシック。使い尽くしたんじゃないでしょうか。『2001年宇宙の旅』だったら、えっと」 西村「ツァラトゥストラはかく語りき」 高畑さん「そうそう。そういうのとか、マーラーとヴィスコンティとかね。ロシアの映画でも、なんかあるんですけどね。もう使えないですよ。映画と一緒くたになってるから。」 西村「『ネッスン・ドルマ』は、けっこう使われてるみたいですよ、色んな映画で。10作品ぐらい。」 高畑さん「そうなんですか?」 西村「ええ。でも、人の声の広がりってのは、良いですよね。感情だけじゃなくて、腹のあたりから、フワーーって浮き上がっていくような」 高畑さん「うんうん、そうなんですよね。前に西村くんが言ってたヴェルディも聞いてみたんだけど、こっちのは、ここでは違う気がするけど。」 西村「もう、確信犯で使ったらどうですか(笑)」 高畑さん「ハハハ(笑)でも、どうなんでしょう、既成曲って、やっぱり珍しいんでしょうか?」 西村「どうでしょうねぇ。日本の映画では少ないんでしょうかね。あ、でも木村大作さんの『剣岳』はヴィヴァルディの『四季』でしたね。盤は違うでしょうけど。」 高畑さん「言ってましたね。」 西村「むこうの、アメリカだったら、今の現代映画って、気のせいか、既成曲を使ってるのが多いと思うんですよね。ま、でも、あっちの映画界は音楽界とガッチリやってますから。」

・食事から戻ると、高畑さんが、ため息をついて眉間に皺を寄せて話しかけてくる。高畑さん「もう、バックさんの原稿、チャラにできないですかね……。書けない。前に話したでしょ、バックさんの愛国心のこと。あれがね、どうしたら良いか、もう分かりませんよ。ぐちゃぐちゃになってきちゃって。」 西村「だめですか。」 高畑さん「ダメです!もう、ダメですよ。書けない。今から断れないかな、ほんとに。」 西村「締め切り、いつですか」 高畑さん「もう、とっくなんですよ!」 西村「そうですか。」 高畑さん「そこを書ければ、自分としてもね、新しいことを書けるわけだから良かったわけですけど」 西村「バックさんが住んでいた場所と、その場所で起こったことがあって、その影響があって国への帰属意識が薄れたんだ、とか、それでカナダへ移住できたとかって、なるほど!って思うんですけど、その、それって、バックさんの作品に何か反映されているんですか?そこが落としどころだと思うんですけど。」 高畑さん「うーん……、そうか、そうですよね。そうなんです。いや、アハハ(笑) 反映されていないんですよね。そこが問題なんですね。そこを書かなきゃいけないんだ。でも、繋がらないんですね。こりゃ、ダメですね。面白くなると思ったんだけどなぁ。」と。 まだ原稿書きが続くか。

・帰りの車中は、コンテの出来に関して。高畑さんから絵コンテの出来を聞かれる。西村「いや、あのコンテは脱帽です。おもしろい。脚本上では、間延びするかも、と心配してた部分なんですよ。でも、カメラの位置から、カット割から、こうやるのか、これが正解だ!って。姫についても、ずっと横顔で描いといて、最後に正面を出しましたよね。横顔にすることで、はっきりとした心情がわからないカットを積み重ねておいて、最後のカットで正面。五人の求婚者の芝居も笑えたし、台詞の入れ方も変えて。あれがまた絶妙で、上手い!って、唸ってましたよ一人で、昨日。」 高畑さん「いやぁ、良かった。あそこの五人の求婚者のところなんかね、斜めから入って、横からのアングルにしてたでしょ。あれ、我ながら、これ効くなぁって」 西村「効きますね(笑)」 高畑さん「でもね、あの一連のシーンがああいう風になったのも、田辺くんの例の一枚の絵があって、ああなったんですよね。あれがなかったら、ああはなってない。やっぱり、彼の絵って、触発するんですよ、こちらを。面白いですよね。それと、最後のカット、どう思いました?」 西村「姫の正面ですね。あれ、難しいでしょうねぇ。」 高畑さん「うん、あれ、難しいですよ。大人らしさに、垣間見えるっていうのか、そこに子どもらしさがなきゃいけない。かといって子どもっぽいだけじゃなくて、大人びてもいる。」 西村「わかります。難しいでしょうねぇ。」 高畑さん「難しいです。大人らしいってことが分かる部品、記号を残しておけば済むのか、それで済むからといって、じゃぁ、その大人らしい記号って何なのか。まぁ、何とかなるとは思うんですけど。でも、これ、なんなんでしょうね。あんなんで良いんでしょうか」 西村「うーん、分からない(笑)。物語の本筋に寄与するのかってことですよね?どうでしょうね。この後がどうなるかで(笑)」 高畑さん「うーん、分かりませんね。ハハハ(笑)」と。

・スタジオに戻り、田辺さんと。高畑さんが言っていた姫の正面カットについて、田辺さんに高畑さんの問題意識を伝えつつ、コンテを見ながら意見交換。上手くいかなかったら、姫に微笑みながら立たせて1秒くらいでフレームアウトさせる、大人びた感じと幼さを同居させるんじゃなくて、一瞬だけ垣間見える幼さに置き換えても行けるのでは、と提案。田辺さん「それ、いいかもしれませんね」と。とはいえ、高畑さんの考えている表情を、田辺さんが描ければ、それで済む。

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5日(土)

・高畑さん出社するなり、机の前で立ち止まる。高畑さん「あの邸ね、爺さんが新築したとしたら、中古じゃなくて、新築だったら、木の良い匂いがするんでしょうね、白木の。いやぁ、今さらね、緑を無くしたのが裏目に出ているんですよ。(姫が)牛車から降りるところからね、どんな音楽が付けられるだろうって、考えていたんですけどね。新築の白木だったら、なんか木の香りが感じられるような音楽があるかなぁって。」 西村「木の香りがする音楽(笑)」 高畑さん「ハハハ(笑) でも、その前に、姫が牛車の中で起きた時の音の設計がさ。普通だったらスズメでもチュンチュン鳴いていても良いシーンでしょ。でも、緑がないんですよね。そういえば、男鹿さんの例の、テストカットの邸って、白木になってました?」 西村「白木になってましたね。」 高畑さん「うん。でも、そこまでじゃなかったですよね。白木って、いや、白木にすべきっていうんじゃないけど、どうするんでしょうね。難しいですよ。色が大変。肌色とかね、白木とかね、色が難しいんですよ。」

・高畑さん「こういうのって、なんかあるんでしょうね。田舎の子がベルサイユ宮殿とかに来た時に、そういう時にかかる音楽ってあるでしょ?」 西村「あぁ、ありますね。お決まりの。」 高畑さん「そうそう、お決まりの(笑)。いや、真似しようってんじゃないですよ、全っ然。でも、リュリとか、バロックの荘重な音楽ってのが相応しいって思われるわけでしょ。」 西村「そうですね。」 高畑さん「日本だったらね、ないですよ。あれだけです。笙の音が、シャーーって(笑)。もう、こればっかりでね。何か他にあるんでしょうかね。ないですね。」 西村「中国とか、韓国とかだと、どうなんでしょうね。中国だと、ドラがゴーン!ってイメージですか?」 高畑さん「いや、中国は、トゥワン、ティン、トン、テン!って(笑)。京劇の。」 西村「ありますね(笑)」 高畑さん「なんか無いですか?日本に。そういう時。お宅拝見とか、テレビで使われているのあるんでしょうね?」 西村「似たようなので、ビフォー&アフターってのがありましてね。それまでボロボロの家に住んでいた家族が、一級建築士の手によって、家をリフォームするんですよ。でも、出来上がるまで家族に内緒。それで、完成して、初めて家族が、リフォームされた家を訪れるんですけどね。感動ですね。生まれ変わった我が家。そこで、いつも決まった音楽が流れる。さぁ、これから幸せな生活が待ってますよ!っていう感じの音楽。まぁ、これは違いますけどね。」 高畑さん「違うけど、わかりますね。効果的でしょうね。僕ね、誰も気付いてくれないけど、色々やってるんですよ(笑) 『狸』のときなんかに、マイホームを歌う『あなた』(小坂明子)をね、下に。でも、この唄、内容が違うんです。でも、マイホームをうたっているって思われてたんですね。それを使っちゃったり。」

・高畑さん「こういうの、どう思うんでしょうね。作曲家の人は。あんたの考えはどうなんだ!って、問われるわけでしょ、こちらは。琴にしたって、あんたの考えがわかれば作るよ!って。それで、どんなふうにしてほしいの?ってさ(笑)」 西村「でも、あの琴のところなんかは、作曲家の人にも一緒に考えて欲しいですけどね。姫が琴を奏でたら、ほぅ!美しい!ってなるわけですけど、観客にもそう思ってもらいたい。そんな音楽ってのを。」 高畑さん「そうなんですよね。そいうの考えるが好きな人いないですかね(笑)」

・高畑さん「日本の音楽って、わずかな例外をのぞけば、リズムが無いんですよ。中南米の音楽なんか、リズムがある。これね、日本の音楽にとって、凄い弱みですよね。」 西村「リズムのある音楽って、いつ頃、日本に入ってきたんですか?明治ですか?」 高畑さん「いや、わかりません。でも、羽仁協子さんなんかが研究されてたところの、子守唄とか寝かせ唄とかね、あるわけでしょ。それと、踊り歌ね。チャンカ、チャンカって。それと特殊だけど、八木節みたいなやつね。」

・高畑さん「前に法隆寺に行ったときにね、ふと思ったんですよ。この場所で、チェンバロみたいなのが鳴っていても、ぜんぜん違和感無いなぁって。」 西村「うん、想像できます。合いそうですね。」 高畑さん「そうなんですよ。バッハとかね」 (西村、YouTubeで「コルトベルク変奏曲」を再生) 高畑さん「合いますよね(笑) あっ、ちょっと"la folia savall"って検索してもらえます?」 西村「これ、ずいぶん前に高畑さんの家で聞きましたね。」 高畑さん「そうそう、ロドリゴ・マルティネスのやつね。これ、どこか悲しいげ、でも明るさもある。好きなんですよ。ずっと聞いていられる。」 西村「このリフレインが良いんですよね。」 高畑さん「姫が○○で○○な場面とかね。これそのものを使うってんじゃないけど、そういう考え方もありうるんじゃないかって」 西村「いいですね。」 高畑さん、自分のPCに戻る。

・戻って来て、高畑さん「ちゃんと、リフレインが良い音楽を教えて下さい、って、インターネットで書いてる人いるんですね(笑)。」 西村「あぁ、教えてgooみたいなものですね。」 高畑さん「そうそう、でも、みんな激しいものばかりでした。」 西村「繰り返しだと、ケルトとか、あっちのほうも、良いのありますね。」 高畑さん「そうですね。でも、やっぱり音階をどうするかですね。日本音階ですかね。うーん。」

・濱田くんの第一子誕生を祝って、夕方に皆でケーキを食べる。高畑さんのご馳走。

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