映画「かぐや姫の物語」制作時に、auスマートパス会員向け
スタジオジブリ公式読み物サイト「ジブリの森」において連載された
「かぐや制作日誌 “悲惨な日々” 西村義明」(2013年4月15日~9月1日)を再録

 はじめまして。西村です。高畑勲監督と一緒に映画「かぐや姫の物語」を作っています。公式サイト「ジブリの森」に制作日誌を書くことになりました。よろしくお願いします。


 高畑さんの映画ですが、これまでだいぶ時間がかかってしまって、7年くらいたってしまいました。長くやっていると、色々と大変なこともあります。企画は転々としましたし、脚本や絵コンテは難航しました。スタジオを新設し、現場が動き出しても、順調には行かない時期が続きました。結果、公開延期を決断せざるをえず、映画を楽しみにしてくれている方々にも、関係者の方々にも、ご迷惑をおかけしてしまいました。

 新しく始まった日誌の中で、ぼくの日誌にだけ「悲惨な日々」と副題が付いています。「あの高畑さんの映画を作ってきた西村のことだ。悲惨な経験をしてきたに違いない」と、そういうことでしょう。しかし、この4月から公開までは、映画制作にとって非常に大事な期間です。高畑さんやメインスタッフだけでなく、制作、作画から撮影にいたる全スタッフが、夜を日に継いで頑張っています。みんな必死です。そんなときに、悲惨だとかは、やっぱり書いていられません。

かぐや姫の物語 脚本 

だから、ひとまずは、この映画がどういう経緯を辿ってきたのか、書けるところから、少しずつ書いていこうと思います。映画「かぐや姫の物語」制作の裏で、どのような人間たちが、何をしてきて、何をしているのか。ぼくが見てきたことしか書けませんが、もしかしたら、スタジオジブリの映画制作の違った一面が見えてくるかもしれません。それが悲惨かどうかは、ともかく。 

 今後、できるだけ毎日、書いていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 最後に、高畑さん以下、スタッフ一同、映画の完成を目指して毎日頑張っています。映画「かぐや姫の物語」は秋公開です。楽しみにお待ちください。