(旧楽天ブログより抜粋)

ライター'sプロダクションのつぶやき…スタジオポケット雑記-初星

 


久しぶりに、近所の三つ星バー(私的ミシュラン)に寄りました。

クレオパトラとカエサルの、息子の名前をもつこのお店、「グレードがどう」とか「スタンダードカクテルが絶品」とか「お高すぎて酔えない」とか、腕ききの(?)酒ミシュラーが褒めちぎったり、肩肘はったりしていますが、わたしは、音楽がかかっていないのが気に入っています。

たまには自分の脳内音楽を聴きながら呑むぜ、って時によい。

そんなわけで、今宵はBRITTENのSimpleSymphonyさ。と気取ってみたいですが、脳内メロディは戸川純さんです。
マスカットココナツバナナメロン♪

でも、こんな真冬に柑橘系など頼もうものなら、あっさりマスターに却下され…てしまいましたね、やっぱり。

こだわりのお店で、無粋な注文をしてはいけないのです。

では、風邪っぽいので、なにか温まるものプリーズ……。

もっと無粋に訴えたら、 洋風たまご酒と、ホット・バター・ド・ラムを供してくださいました。
うう、おなかに染みる。

これだけで、諭吉さま御一人分が去っていかれます。 別の意味でも染みいります。

ちょいと寝酒のはずが、シガー代さえもとんでしまって、
たいへいのけむりを覚ますじょうりゅう酒、たった二はいで夜も眠れズ。

…ホットラムは大好きです。だから、冬太りも気にしないんだ。

手造りバターなどを、そっと浮かべてくれる店もありますが、こちらのお店のは、自分の舌とバターとの境目がなくなるような心地です。 私の知るバー(極私的)では、キングオブミシュランです。

音もなければつまみもない、あぶったいかもないけれど、マスターのトークカクテルがまた妙味。

そんな密星バーのカウンターに、新しいお弟子さんが鎮座しています。

やや、キミはもしや??

それは、春にご近所でナンパ呑みし、朝まで連れ回した挙句、 家まで連れこんだ、大学を出たての子犬…ではない、男の子でした。

「あんたは、就職もしないで~、これから一体どうする気ら~」。連れ込まれて説教された彼も、起こされた家人も、大変迷惑そうでした。

「…どうされているのかと、私こそ気にしていました」。

優秀な大学を出たばかりの彼、自分のお店をもつ修行がしたいそうで就職活動もせず、さりとて本格バーテンダーの口があるはずもなく、ホテルのバーで、アルバイト修行されていたそうです。

年に似合わない落ち着いた物腰、ひょうひょうとした口ぶりで、ここ半年の歩みを話してくれました。我慢強そうな細い目に、半年前より自信の光が宿った気がします。

「こちらに週1で入らせていただくようになり、今ではフル勤務です」

「良かったね、あなたこの店で勉強したいって うるさかったもんね」

「別に、そんなうるさく言ってなかったです」。睨んで言う彼。

いいじゃないですか。自分の望み、やりたいことは、はしたないほど口に出してもいいと思いますよー。


「はあ…。それで、実は、今日は僕の誕生日なんです。そういう日にまたお会いできて、勝手にご縁を感じます」

ええ!? では1杯ごちそうしましょう。
マスターもなにか、彼をお祝いしましょう。

すると、マスターがおごそかに彼に何かを手渡しました。

今日から、一人前としてデビューを認めますと、初名刺。

「!」

みるみる、目が潤む彼。

大切そうに両手を添えて、私にくださいました。 お客第一号です。

未来の東京のカウンターを背負う男の、初陣に立ち会ってしまいました。(大げさ)


いつまでも名刺を眺めている彼。 きっと、きら星バーテンダーになれると思います。

よい夜です。

だから、冬太りは、気にしないんだ…。