プライバシー公開レベル7 | A Drummer without the sense of rhythm

プライバシー公開レベル7

weblio辞書から引用
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プライバシー:
元来「私生活」「私事」を意味する言葉であるが,社会生活の複雑化・情報化に伴い,他人から隔離されてひとりで放っておいてもらうこと(let him/her alone)が重要な利益と考えられるようになり,この利益が人格権のひとつとして「プライヴァシーの権利」または「プライヴァシー権」と呼ばれるようになった。具体的には,私生活が他人によってのぞき見されないこと,私事が他人の表現行為によって公開されないこと,私事を他人に営利的に利用されないこと,などを主な内容とし,さらにこの権利をより積極的に捉えて,自己に関する情報を自らコントロールすることもプライヴァシー権に含まれると考えられている。わが国においては,プライヴァシー権は,憲法13条にいわゆる生命・自由・幸福追求の権利に基礎づけられた権利として,また私法上も不法行為に対する被侵害利益として判例(東京地判昭39・9・28下民集15巻9号2317頁「宴のあと」事件,最判平6・2・8民集48巻2号149頁「逆転」事件,大阪地判平6・4・27判時1515号116頁など)によって認められている。
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…だそう。

僕に埋め込まれている固有パーソナルチップは、僕の大凡の概要が記録されている。
大凡と書いたのは、「僕の全て」を記録するには現在の半導体技術では無理である。
将来的には月に埋蔵されたシリコンを人類DBとして利用する計画が持ち上がっているが
まあ、今のところは現実的ではないし、詳細は各個人の脳による記憶にまかせたほうが人類の長い目で見た進化にも良いらしい。DNAへ少しずつ蓄積される方が理にかなっている事は、何となく理解できる。
現在の地球では「公開レベル7」がデフォルトなので、7以上のより詳細な情報以外は15m以内に接近した他人のチップに公開される。もちろんリクエストがあれば、こちらが了解すれば「レベル10」=全公開まで可能だ。
ただしその場合、リクエストする側も僕に対して「レベル10」までの公開となってしまう。
「レベル7」以上に公開し合う事を「腹を割った」と言うらしい。

ちなみに「レベル7」で分かる僕の概要は…
・小さな会社を経営している
・妻子持ち
・逮捕歴無し
・北九州に18歳まで住んでいた
・平均寿命から計算するとあと28年くらいのライフである
等である。

飲み屋で隣に座った30代と思われる男性とひとしきり会話した後、
「レベル10」のリクエストを出して見た。
(もちろん、こちらもレベル10公開であるが)
「レベル10」公開は情報が多すぎて、こちらがある程度ブラウズしなければならないが…
彼のチップからは
・システムエンジニアであるが、今はフリーランスで派遣社員である
・去年の年収は950万円である
・貯蓄の残高は2400万円
・付き合っている彼がいる、つまりゲイである。
・21才のときに男の幼児にイタズラをして性犯罪歴がある
・音楽の好みは90年代後半のいわゆるクラブミュージックで、よく渋谷のクラブに行く
・車は所有していないし興味もないが、イタリア製の1000ccのバイクを持っている
・感情の起伏が激しく、ときにコントロールできないほど落ち込む
・僕の事を興味の対象と最初は思ったが、思ったより接点が無いと感じている…
等の情報を得られた。
僕の彼に対する興味がさらに脹らんで行くことを察知して、彼は「レベル10」公開を遮断した。
むこうが僕に対してブラウズした結果、あまり面白い奴だとは思われなかったようだ。
彼は軽く会釈して、僕から15m以上離れて行った。

…なんて世界を空想してみた。また、無駄な時間をついやした。