海岸寺
「あれ?今のところ右じゃなかったっけ?」
「まあいいよ、急ぐ旅じゃなし、このままいってみよう」
そういいながらたどった道は、沢沿いを抜け大きな集落に出て、その先は曲がりくねった山道になりました。
心細くなった頃に、不意に大きな山門がみえました。
「海岸寺表参道」
それは山奥の急な山腹にある、大きなお寺でした。
こんな山の中で「海岸」とはこれいかに~ひと問答つかまつりたい~
なんて雲水の僧がいいそうな名前のお寺は、1200年以上の歴史がある、由緒正しいお寺でした。
降り積もった落ち葉がかさこそと音を立てているだけの静かな境内は、たくさんの観音様の石像が整然と並び、思わず気が引き締まります。
「最高の予言者は『歴史』である」
来し方を振り返り、行く先を見つめよということなのだろうか。
どう、とばかり風がやってきて、散りかけの樹々を揺らしました。何度の何度もやってきた風の音は、まるで潮騒のようでした。
参道の脇にあった、どことなくユーモラスな石像。お寺に来る人々を出迎えているようでした。
