水神様
あまり知られてないのですが、八ヶ岳南麓はよい水が出ます。
「大泉」「小泉」という地名が示すように、山腹のあちこちに湧水があります。
八ヶ岳に降った雪は地面に浸透し、薄い火山灰の表土の下にある岩盤を、数千年かけて地下水脈まで落ちていくそうです。岩の中を通った水は磨かれ、たっぷりとミネラルを含んだ美味しい水になります。
我が家の井戸はその地下水脈から組み上げている深井戸で、水質検査の結果では、軟水が多い日本の水の中ではかなり高い硬度を示しました。
ではなぜ有名ではないのか。
おそらく、付近の地形とその水量の少なさだと思います。
まず地形。
このあたりは、七里岩から八ヶ岳にむかって緩やかな傾斜が続き、標高900メートルを過ぎたあたりから傾斜を増します。
傾斜が強くなると、棚田にでもしない限り田んぼは難しくなります。実際、レインボーライン付近から上は、稲作はしていないみたいです。(もちろん冷涼な気候のこともありますが)
次に水量。
あちこちに泉や湖、湧水はありますが、そこを源流とする川は小規模で、それなりの水量しかありません。おまけに、七里岩の断崖でその水もおしまい。
つまり、いい水はあるけれども、それを利用してできる稲の作付面積は、武川や白州のような南アルプス側に比べて、かなり少ないのです。
稲作文化のこの国において、水だけが評価されることはありません。
それでも、よい水の需要はそれだけではありません。我が家の井戸は以前、勝沼のワイン醸造業者が水を買いに来たことがあるとか。
ちなみに、大泉には「谷桜」という、めちゃくちゃ美味しい地酒もあります。
余談ですが、この谷桜酒造は、新潟の杜氏を呼んでいないのだそうです。したがって、いわゆる「端麗辛口」ではなく、昔ながらのちゃ~んと甘い日本酒なのです。
私に言わせれば、新潟スタイルの「キレのよい」「辛口」の酒は、ただの「薄い酒」なのです。
重厚で、まったりと甘い酒こそが日本酒だと思うのです。まあ、最近の脂ぎった肴に合わせるなら、シャバシャバの酒のほうが似合いますがね。
話が脱線しました。
酒のことになるとすぐ熱くなるのは悪いクセ・・・(反省)
近所の水神様をお参りしました。ほんの直径1メートルほどの湧水に、石の小さな祠があり、大きな松があります。
この松は樹齢数百年でしょう。この地にすむ人々の、水神様に対する畏敬の念がしのばれます。
この湧水から出た川は、八ヶ岳南麓を流れ下り、須玉川に合流し、釜無川、富士川に流れ込んでと太平洋まで繋がっています。
滔々と流れる大河も、その源流は山の中の静かな湧水だと思うと、思わず祠に手を合わせてしまうのでした。
水神様の松。空にむかってぐんと伸びる、力強い「樹」でした。
