古代インド
古代のインドでは, アーリヤ人が侵入して先住民を支配し、 紀元前10世紀頃、ガンジス川流域に定住して、バラモン教とカースト制度に基づく社会を形成した。
バラモン教はヴェーダを聖典とし、天・地・太陽・風・火などの自然神を崇拝し、司祭階級のバラモンが行う祭式を中心とする宗教である。
そこでは人間がこの世で行った行為 (業・カルマ)が原因となって、つぎの世の生まれ変わりの運命(輪廻)が決まると信じられていた。
人びとは悲惨な状態に生まれ変わることに不安をいだき、無限に続く輪廻の運命から抜け出す解脱の道を求めた。
紀元前7世紀から紀元前4世紀頃には、バラモン教の教えを理論的に深めたウパニシャッド哲学が形成された。
それによれば、宇宙のあらゆるものの根源にはブラフマン(梵)と呼ばれる絶対的な原理があり、すべての生あるものはアートマン(我)と呼ばれる不変の自己をもっている。
この二つは、それ自体で永遠に存在する実体と考えられる。
個人の本質であるアートマンは、さまざまな動植物に宿ってこの世で輪廻を繰り返す。
ウパニシャッド哲学は、みずからのうちにあるアートマンが、宇宙の原理ブラフマンから生まれ、ブラフマンと一体であることを悟ることによって、大きな宇宙の根源と一体となり(梵我一如)、輪廻の苦しみから解脱して永遠を得ることができると説いた。
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