久しぶりに涌井さんから郵便が届いた。
ミュージアム用の歴史的に価値のある名車を売られる様だ。
文化に関わる商売は日本では大変である。

 



かつてこんな事を言われた事があった。

我々の時代の自動車博物館で有名だったのは「松田ミュージアム」。
富士五湖周辺に四ヶ所くらいあって一度は訪れた方も多かろう。
5年くらい前に東大裏の涌井さん宅にお邪魔した時、「松田さんが高齢を理由にミュージアムを畳まれるそうです」「他人事でなく私も歳を考えると自分のミュージアムをどうやって終わらせるか本気で悩んでいます」と言われた事があった。
情熱で始めた会社は次代に繋げる事が難しいのだ。
自分と同じ情熱を持つ経営者に出会う事は稀で、引退は会社の存続に直結する。
松田氏の閉鎖はそのまま涌井ミュージアムの将来の姿へと重なったのであろう。
今ではTSUTAYAと業務提携を成功させ将来は安泰であるが、くるま好きのTSUTAYA会長とミュージアムの片隅で長い時間話し込む姿を何度も見かけた事がある。
ミュージアムの文化的価値について説得を繰り返していたのだろう、
提携話が決まった時に抱きつかれて喜びを表した涌井さんの姿は今でも忘れられない。 



その涌井さんも今では半分引退されておられる様子、歳をとった経営者に訪れる共通の悩みは私の所にも既に訪れていて、私なりに解決している。

ビンテージを撮っている時に話した内容で、今でも覚えている事がある。
「矍鑠とした老人も実は色々痛いところやまずい問題を抱えている」「それを隠して背筋を伸ばして颯爽と歩いておられる」「古い車と同じです」と言われ、思わず「私もそうです」と答えてしまった。「私もです」と涌井さんも言われ、二人して笑っ た。 

 



アナログの文化を愛でる者達は、やせ我慢の美徳を理解してほしい。
効率的贅沢者をセレブと呼ぶ風潮では次代の文化は生み出せまい。
解って貰えない歯痒さを笑い飛ばしながら流れのままに・・・
我慢、我慢、やせ我慢。 

背筋を伸ばし、矍鑠として、颯爽と生きて行きたいものである。

                      by がんこGG

堅物の彼が好きだったまさかのクルマのCM、
おそらく車ではなくバックの曲、
「ろくでもない情報のせいで、意味のない想像をしてしまった」と歌われる曲。
涌井さんだからではないだろうが、イントロから続くバッドチューニングが何故か心をワクワクさせる。