三十年以上前、広島でデザイン事務所を経営している時である。

まだ諦め切れていなかった音楽の世界で、

具体的に憧れた最後のバンドが「ブリズム」だった。

ビートルズから始まった音楽嗜好は当時盛んだった「フュージョン」に行き着き、

覚えたてのスラップベースを操って友人たちと作ったバンドで最後の頃に盛んに演った曲の一つが「モーニングライト」だった。

「ザ・プレイヤーズ」は少し大人すぎていたのでその当時の我々の世代は

「カシオペア」か「プリズム」を目指していた。

ブルース志向から来たバンドの多くはポップなカシオペアよりプリズムを好み、

和田アキラや森園勝敏は憧れのギタリストであった。

私はベースだったので渡辺健が目標であったが

我がギタリストにとっては和田アキラが信仰の対象だった。

 

世界的な傾向であるが、テクニカルなプレイヤーに脚光が当たらない現代の音楽業界では「見かけ」や「ダンス」に興じる若者は多くても「プレイヤー」に憧れる体質が無い。かつてのジャズがそうであったように、過去のプレイヤーが上手すぎて誰もテクニカルでは敵わない時期が続きそうだ。

絵画もそうだが芸術全般沈没気味、人の感性は退化気味である。

 

その割に己を「アーチスト」や「ミュージシャン」と平気で呼び、そこそこの技術の持ち主はすぐに「神」の称号がつく。

 

今の若者の世界では石を投げれば「神」に当たりそうである。