広島流川の「ジュゲム」が店を閉める。

半世紀にわたって音楽ファンに愛されてきた広島市内のロックバーである。

高校時代に初めてここでライブを聴いたのが西岡恭蔵の「プカプカ」だった。

 

十年以上前、まだ広島のテレビ局の役員をやっている時に他の役員の行きつけのバーがあった。

サックスを吹く美人ママ目当てに大勢の音楽好きが集まる店で

当時は月に一回役員会議で帰広していた頃で役員会食の後に必ず寄っていた。

ある時珍しく他の客が早めに帰りママと二人きりになった事があった。

広島フォーク村や西城秀樹の話で盛り上がった後、かつて通っていた「ジュゲム」の話となり「まだやっているのかな」とつぶやくと、ママが笑いながら「このビルにあるよ」と言う。

懐かしがる私の手を引いて「今から行こう」と店を閉めて階段で二階下のフロアーまで降りる。

怪しげな入り口を入ると確かに「ジュゲム」である。

かつては違う場所だったと記憶を辿りながらもほろ酔い気分でよく喋る美人ママの話に引き込まれ中年おじさんの懐かし話に花が咲いている時、ドアーズの話をすれば「ライトマイファイヤー」

ボブディランの話をすれば「コーヒーもう一杯」と私が自慢げに話す得意話に合わせるようにバックで曲がかかる。最初は偶然だと思っていたが振り向くと店のオーナー「ルーシー」が親指を立ててニコニコしている。散々飲んで帰りがけにルーシーが「お客さん詳しいねえ」

「説明の加勢をしました」と言う。

フォーク村の残党と飲んだ時以来の爽やかで心地よい一夜であった。

 

テレビ局を辞めてからは広島に帰る機会が減り、またいつか流川に飲みに行くことがあれば

その時にこの話をルーシーにしようと思っていたが叶わなくなってしまった。

 

サックス吹きの美人ママもどうやら店を誰かに譲ったらしい。