音楽を聴くだけで映画のシーンが鮮やかに蘇って来る。
映画と音楽と自分との独特の距離感は、その時代に映画を鑑賞する事が出来た我々の特権である。
光と影を効果的に用いた映像、オーソン・ウェルズの怪演、四分割統治下のウィーン、戦争の影を背負った人々の姿を巧みに描いたプロット
そして忘れられないのがアントン・カラスのツィターによるテーマ音楽。
グレアム・グリーンの原作をキャロル・リードが監督したこの映画の評価は高く
英国アカデミー賞 作品賞 カンヌ国際映画祭 グランプリ を獲得した。
個人的に好きなシーンは観覧車でのジョセフ・コットンとオーソン・ウェルズのシーン。上から見ると人は豆粒にしか見えない、あの豆粒が一つ止まる毎に二万ポンド儲かるとしたら・・・と誘惑するハリーに毅然として反対するマーティン。
決裂した話し合いが終わり観覧車から降りたふたりが別れる時に例のセリフがある。善と悪の対比のセリフ。
「ボルジア家が支配したイタリアの30年間は戦争、テロ、殺人、流血に満ちていたが、ミケランジェロ、ダヴィンチ、ルネサンスを生んだ。スイスの同胞愛、500年の平和と民主主義はいったい何をもたらした? 鳩時計だよ」
ラストシーンの人気においては今だにNo.1であるがこれには私も同感である。
原作のラストと違う事をことさらに引き合いに出す批評家が多いが、彼らは気づいていないのだ、小説では絶対に表現できない映画ならではの表現である事を。
男と女の違ったやせ我慢をセリフ無しでみごとに描いている。
タバコは嫌いなどと野暮は言わずにぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=1R7HxsZqrD0&feature=youtu.be