出会い
出会いから始まる事
今年は大きな出会いが訪れています。又これからも訪れそうです。
最初にこの春ザルツブルグで出会った女性指揮者:エリザベート・フックスさん
彼女はザルツブルク・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、子供音楽祭の芸術監督で「オーストリアで最も優れたオーケストラ指揮者」と言われています。
彼女は指揮者ですが数学の学位も持っているという珍しい経歴です。
アルプスの峰に広がる芝生の上でランチを共にしながら音楽の世界情勢、現代社会に必要な音楽をどう広めて行くか。等々お話が尽きませんでした。
自らのオーケストラを率いて新しいスタイルの演奏を求めています。そして現代に即した教育にも熱意を燃やしています。
私も常に新しい演奏スタイルを求め、伝統的なライプツィヒのバッハフェスティバルでも出演ごとに演奏スタイルは変わってきていると思います。特に毎回最終日前日夜にバッハが働いていたニコライ教会で演奏するシャコンヌにそれは大きく反映していると思います。世界中から集まった2000名のバッハ好きのお客様はそれを受け入れて新しくなったシャコンヌにブラボーの拍手を下さいます。
伝統とは昔から伝えられたものを守るだけのものではない。それまで伝わってきたものに現代の解釈、新しい感覚が加わってこそ真の伝統で、伝えられたそのままを守るのは伝承である、と私も常日頃思って自らの演奏法にも反映していますので、当然エリザベートとの会話も弾みました。
最近伝統的スタイルに新しい何かを加えて行く演奏が減っている気がしますね。演奏が創作だという意識が減っているのではないでしょうか。と話が弾むとそれは子供のころからの意識の持たせ方から教育するべきだ。と彼女は素晴らしい教育プログラムを話して下さいました。
彼女の考えを現実化するためにその対話の中にも色々なアイディアが浮かんできました。
エリザベートの振るモーツアルトは数学者らしい理論から成る構成の中に人間そのものの生きている命があり、これこそ伝統の上での新しいモーツァルトが感銘を与えます。
私のこれから行っていくであろう活動には感銘を受ける!私も力になれたら、と学者さんと思えない愛らしい笑顔で賛同の意を表してくれました。
もう一人素晴らしい音楽家との出会いがあります。
ルドルフ・マイスターさんというドイツのピアニストです。
26歳の若さでマンハイム国立音楽芸術大学の教授に任命され、34歳でドイツ音楽大学始まって以来の最若年の学長に就任したというすごい経歴の人です。
指導法には論理的且つ、音楽的なアプローチが見事に合わさっている、と世界中で大人気です。
彼の演奏の中に広がる深い和声感は人の心のあらゆる悩みに対応してくれるように緻密で優しく広がります。且つ力強い提案を感じることもあります。カウンセリングのような力をも発揮するのです。
マイスターさんが勤めているマンハイムという街は18世紀頃からマンハイム楽派といわれている最高級の宮廷楽団、作曲家、演奏家が活躍していたところで、オーケストラの新しい形や技巧を次々と生み出していたと言います。かのモーツアルトもこの街に就活にやってきたことがあるのです。残念ながら就活は失敗に終わっているのですが。
それでもこの街でこの楽派の影響を大きく受けました。交響曲第31番「パリ」は、マンハイムのオーケストラの管楽器の編成に影響を受けて作曲した交響曲です。
このマンハイムでは次々と交響曲の新しい形を作り、管楽器のオーケストラへの参入、楽章を一つ増やし、人の心に大きな幅を持たせる技法を考えました。ソナタ形式というこれまたのちの音楽に大きく影響する形式を編み出し表現の強弱というそれまで使われていなかった奏法まで作り上げています。
実に音楽において創造豊かな国と言えるでしょう。
音楽分野ではないのですが、この街、最近でも世界に名だたる発見の街なのです。
「ファイザー」といえば記憶に新しい言葉ですね。コロナワクチンの発明はこの街で行われたのです!!
厳密にいうとこの街にあるビオンテックという研究所とアメリカの製薬会社ファイザー社が共同開発してできたワクチンなのです。
ビオンテックという研究所はトルコから移民で父親に連れられて来た息子がドイツで勉強する機会を得、博士となり研究所を立ち上げたのだそうです。
トルコとドイツ、そしてアメリカとのご縁ですばらしいワクチンができたのですね。
出会いがあり、このマンハイムというライン川に沿った美しいワイン畑の中の街で創造力が生まれて行くのでしょう。
今もなおルドルフ・マイスターという音楽の巨匠が伝統と新しい発見の絶妙なバランスのベートーヴェンを、ブラームスを、モーツァルトを、ショパンを演奏し、弟子たちに教え、世の中に貢献しています。
私も彼と出会い、おそらく来年か再来年ピアノとヴァイオリンのデュオで新しい音楽を創造し、コンサートをする予定です。日本の皆様、そしてドイツの皆様、21世紀に相応しい伝統的クラシック音楽をぜひ聞きにいらして下さい。
この音楽こそ私が今研究しようとしている「脳への影響」に活かされるものと確信しております。
更なる出会いが広がりますよう願っております。
コンサート開催はこのページで詳しくお知らせいたしますのでお見逃しなく。
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