涙にかすんだクリスマスツリー
クリスマスが近づき街は明るい装飾や笑い声で賑わっています。
このシーズンになるとつらい思い出がよみがえります。
私が小学校5年生の時突然父が亡くなり、亡骸をお守りし火葬場へと行ったのが12月24日。
いつも本を買いにつれて行ってもらっていた荻窪駅のクリスマスツリーはその年も華やかな装飾で飾られていました。
霊柩車が荻窪駅を通った時涙があふれてその年のツリーはかすんだ中にぼんやりと人々を祝福しているように見えました。
その日の夜、親戚も皆帰って、母と姉と三人きりでガランとした家の中で無言で時を過ごしていました。
その時玄関のベルがなりました。
出てみると小学校のPTAの方が大きな箱をもって立っていました。
「こんな時にどうかなと思ったんだけど、クリスマスケーキを焼いたの。いけなかったかも知れないけど真っ白のケーキにしたから・・・」
と私の手に渡してくれました。
父の真新しいお骨にお供えし、残された3人でいただきました。何も今夜は食べる事ができないと思っていたのですが、1口口に含むとほんのり膨らむ甘さに思わず2口目に手が運び、3人でたくさんいただいてしまいました。
その時の甘いふくらみは何年たっても心に残っています。
今年もそのシーズンがやってきました。あれからどれだけのすばらしい出会いがあったことでしょう。
今年もあのクリスマスケーキの味ような美しい出会いが私たちを包んでくれます。
人々の暖かさのおかげで年ごとにクリスマスツリーも喜びの象徴に代わり、今年はぬくもりのある木でできたツリーをかざりました。
出会いの喜びをかみしめる暖かいクリスマスイヴを過ごしています。
メリークリスマス